いつだって見られている

なごみ

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惨めな闘病生活

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やっど流動食を卒業でき、ペーストの食事を口から摂取できるまでに回復した。


数ヶ月ぶりに食べ物を口にした時の感動は忘れられない。


ただのお粥の美味しいこと。


今まで食べたどんなものよりも美味しく感じられた。


以前どこかで食べた豪華なお寿司よりも……。


あのお寿司は一体誰とどこで食べたのだったかな?


今は身体の痛みもなく、テレビだって見て楽しむことができるようになった。


以前に比べたら天国にいるような気さえする。


ここへ入院してからどのくらい経ったのかはまるでわからない。


もう安定期に入ったので、転院か退院の方向でと、医師から話があったらしい。


家で見てくれる人などいないのだから、当然転院だとばかり思っていた。


その方が家族にも負担をかけなくて済むし、気も楽だ。


そう思っていたのに……。


「なんで家なの?  転院先がないわけでもないのに、連れて帰ってどうすんのよ!」


病室で娘の日菜が、夫の貴之に食ってかかった。


「バカ、病院はタダで入れてくれるわけじゃないんだぞ!  おまえは大学に行きたいっていうし、どこからそんなお金を捻出するんだよ」


「えっ?  私って大学に行っていいの?」


日菜が信じられないといった顔で目を丸くしている。


「行きたくないなら無理して行かなくたっていい」


「行きたいに決まってるじゃない!  でも、お母さんがこんなことになっちゃったからダメだと思ってたもん」


「授業料だけだぞ。生活費はバイトでもして自分でなんとかしろよ」


「うん、大丈夫。家から解放されるなら、なんだってやるよ!」



ふたりの会話を聞いていて、背筋が寒くなって来た。


私の面倒は一体誰が見てくれるのか?


言葉は話せなくても、目を見てうなずいたりは出来るのだから、意思の疎通ははかれるのだ。


医師からだってそういう説明がちゃんとされているはずなのに、夫も日菜も私には全く話しかけてもくれない。


私の意向など、まったく聞こうともせずに決めようとしている。


ここの乱暴な看護師たちの方が、よほど親切に思える。




ーー誰か助けて、家には帰りたくない!





私の意向などまったく無視されたまま、退院の日を迎えた。


下半身が麻痺したままなので、車椅子に座らされて、介護タクシーを使って家まで帰った。


入院中は季節のことなど気にする余裕もなかったが、タクシーの窓から見える景色は、雪解けの春だった。


雪が融けた道路はグチャグチャで汚らしく見えたが、暖かく射し込む陽光はかすかな希望さえ感じさせた。




 ーー我が家に着くまでは……。







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