いつだって見られている

なごみ

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「う、うわぁーーーあぁー!!」


車椅子に座ったままのけぞり、絶叫する。


「清美、大丈夫か?  落ち着け。とにかく、まず弁護士に相談しよう」


そう言って貴之は分厚いタウンページをめくり始めた。



ーー震えがとまらない。


自分が、自分が殺人犯……


な、なぜ?


なぜ、和樹を殺さなければならなかったのか?




頭から血を流して倒れていた和樹。


閑散としたラーメン屋。


暗い顔をした和樹が厨房から顔を出した光景が目に浮かんだ。


「あんた、うちのおふくろを殺しただろ」


和樹は確かそんなことを言った。


なぜ?  なぜ私が和歌子さんを?


「あんた不倫してたんだってな」


いや、違う、そんな理由ではなかった。


もっと、もっと重大な秘密。


それを知られて、和歌子に逆らえなかった。


頭が割れそうに痛い!


怖ろしい、もう考えたくない!!


だけど、健太が、健太が私のせいで。


早く、早く助けないと、、どうすれば、一体どうすればいいの?





なぜ私ではなく、健太が犯人にされてしまったのか?


いくらバイトをしていたからといって、健太に和樹を殺すような動機などないではないか。


忘れ去っていた記憶が時間とともに、よみがえって来た。


あの日、和樹に脅されて百万円をあげると約束をした。


銀行の通帳を取ってくると言って背を向けた和樹を、手近にあったステンレス製の菜箸で突き刺した。


後頸部に突き刺さった菜箸。


痙攣しながら崩れるように倒れた和樹。


証拠を消すために、自分の歩いた靴の後を拭き、和樹のスマホを探して上着のポケットから取り出したはずだ。


そのスマホは一体どこへやってしまったのだろう。あれは物的証拠になるはずだ。


何より、なぜ和樹を殺さなければいけなかったのだろう。


『あんた、うちのおふくろを殺しただろ』


そう、和樹は言った。


義姉の和歌子を殺した?  なんのために?


『ここで姉貴は一酸化炭素中毒で死んだんだぞ。お前の不注意のせいで』


恨みがましい目で見つめた貴之がそう言った。野幌森林公園へ行った帰りに花を手向けたあの場所で。


『……お前の不注意のせいで』


不注意?  ーー不注意ではない。


わざと不注意に見せかけたのだ。なぜだかわからないけれど、和歌子には死んでもらわなければいけなかったのだ。


あの日はすごい雪の日だった。


だから、決行したのだった。


義姉を一酸化炭素中毒で死なせるために。


日産ノートをわざとバックして、雪野原へ落としたのだった。


計画的に殺したのだ。


和歌子が着ていたステキなキャメルのガウンコート。


ピカピカの白いベンツ。


豪華な極上寿司。


人からお金を巻き上げては散財ばかりしている和歌子に我慢できず、和樹のラーメン屋の資金繰りにまで協力してと言われて、もう殺すしかないと思った。


だけど、なぜ、借金を断れなかったのだろう。




貴之がタウンページで調べた弁護士と話をしている。


健太はまだ14歳だというのに一体どうなってしまうのだろう。


電話を終えた貴之が、健太が勾留されている拘置所に面会に行ってくると言って出かけた。


とにかく健太の冤罪を晴らさなければいけない。


私がやりましたというのは簡単だ。だけど動機まで聞かれたらなんと言えばいいのか。


義姉を殺したことまで言わなければいけないのだろうか。


さすがに二人も殺したら罪はかなり重いものになるのだろう。


だけど、どんなに重い罪だろうと、息子の健太に罪を負わせるわけにはいかないのだ。


たとえ、死刑になろうとも……。



































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