いつだって見られている

なごみ

文字の大きさ
56 / 58

レストランでの惨事

しおりを挟む
嫌な予感と戦慄が走る!


日菜がエルメスのオレンジ色のフタを
「ジャーン!」と言って持ち上げた。


ピンクと水色を基調とした色合いに、ゴールドの柄があしらわれた素敵なデザイン。なめらかなシルクの光沢が、レストランの照明に照らされて輝いた。


「どう?  素敵でしょ?   お母さん、せっかくのスカーフをお婆ちゃんのために燃やしちゃったから」


日菜は私を見つめて優しく微笑んだ。


「優しいよなぁ、あんなに悪態ばっかりだった婆ちゃんに、そこまでしてあげたんだから」


健太もそう言って感心している。


私が?   


エルメスのスカーフを母に?


な、なぜ?


「普段は玉子が30円高いとか安いとか言ってるお母さんがさぁ、翌日燃やされちゃうおばあちゃんの首に、一度も使ってないエルメスのスカーフなんて巻いてあげてるんだもん。ビックリしちゃった」


母の首に残された赤黒い手の跡が脳裏によみがえる。


そうだ、その手の跡を隠さなければ!!


「帰りは寒いんじゃない?  今巻いてあげようか?  お母さん、大丈夫?  震えてる?」


日菜が心配そうに見つめた。


「やっぱり、寒かったんだな。来るときも寒そうだったから。ちょうどいいプレゼントになったじゃないか。巻いて帰ればいいよ」


健太も心配してそう言った。


日菜が光り輝くスカーフをハラリと持ち上げる。


あの日、驚愕した顔で母は叫んだ。


   人殺しーーー!! 


日菜が私の背後にまわって首にスカーフを巻きつけた。


指に力を込めて、母の首を絞めた自分。


母の歪んだ顔。


口角から流れるよだれ。


「う、うわぁーーっ!!」



「お母さん!  ど、どうしたの?」


日菜の怯えたような声がした。


ーー隠さなくては、、早く隠さなくては!


早く、早く、赤黒い手の跡。


デザートのフォークを左手に持ち、思いっきり自分の首に突き刺した。


「お、お母さん!  なにしてるの、やめてぇー!」


日菜の悲鳴にボーイが飛んで来た。


見つかってしまう!!


隠さなくては、早く、早く!


何度も何度もフォークで首を突き刺す。


「母さん!!」


呆然としていた健太があわてて立ち上がった。


真っ白なテーブルクロスに鮮血が飛び散る。


「キャーッ!!」


まわりの客席からも悲鳴とどよめきが聞こえた。


ーー日菜の泣き叫ぶ声。


気が遠くなっていく……。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

処理中です...