7 / 39
突然の来訪者
しおりを挟む
*彩矢*
家族総出で佐野さんのお見送りをしていたら、思わぬ来訪者があらわれた。
「パパーー 、おかえりっ!」
悠李が走って潤一のそばに駆け寄った。
「悠李、おまえドローンを忘れて帰っただろう」
潤一は手に下げた紙袋を悠李に渡した。
「パパ、おうちに帰ってきたんじゃないの?」
悲しげな顔をして悠李は潤一を見上げた。
「だから、ママとは離婚したって言っただろ。あ、お久しぶりです。皆さん、お揃いでお出迎え? なわけないよな。なんだ、そういうことか、タイミングがよくなかったみたいだな」
呆然として立っていた佐野さんの存在を知り、潤一は少しバツの悪い顔をした。
「お土産を渡すの忘れてたから。これは雪花のだ」
私に抱っこされて眠い目をこすっている雪花に、袋から出したテディベアのぬいぐるみを渡した。
潤一にはいつも警戒心をあらわにする雪花だったけれど、この度は素直に礼を言った。
「パパ、ありがとう」
「ふっ、おまえは可愛いな」
このどんよりとした重い空気も、この人には少しも気にならないようだ。
「今度はいつ会えるかな? なぁ、雪花」
一刻も早く帰って欲しいのに、雪花の頭をなでながら、愛おしげに見つめている。
「ねぇ、ママ、パパと仲直りして。お願い 、ねぇ、ママ~」
また悠李が余計なことを口走って、私の身体を揺さぶった。
悠李の切実な懇願に、優越の笑みを浮かべている潤一が忌々しかった。
「あ、じゃあ、今日はこれで。どうもお邪魔しました」
佐野さんのほうが気まずさに耐えかねたのか一礼して、その場から立ち去ろうとした。
「 じゃあ、俺も帰ろうかな。佐野、ちょっと話があるんだ、つきあえよ」
潤一の唐突な誘いに佐野さんが歩みを止め、無表情に振り向いた。
佐野さんに一体、なんの話があるというのか。
突然現れて、あまりに傍若無人な振る舞いに黙っていられなかった。
「いいから、もう帰ってください! 話なんてないわ。あまりにも失礼じゃない。早く帰って!」
「なんだよ、おまえに話があるとは言ってないだろ」
佐野さんをうまく丸め込んで、自分が有利になる提案でも出そうとしているに違いない。
「私たちにはこれ以上、関わらないでもらいたいわ」
ジェニファーと生まれたばかりの子と、幸せに暮らしたらいいではないか。
「関わらないわけにはいかないだろう。悠李も雪花も俺の子なんだぞ。おまえ一人に任せていたら、子供には一生会えなくなるからな」
「ちゃんと会わせたじゃないの。約束を守らなかったのはあなたのほうだわ。電話をしても通じなくて、どれだけ心配したかしれないわ!」
感情が高ぶり、思わず涙ぐむ。
「だから、悠李と遊ぶのに忙しかったって言っただろう。なぁ、悠李、そうだよな?」
手なずけられた悠李は、すっかり潤一の言いなりだ。
「うん、ママ、パパとケンカしないで」
悠李も目に涙をためて訴えた。
「彩矢ちゃん、俺も松田先生とは前から話したいと思ってたんだ。だから心配しないで」
佐野さんがそう言ってなだめてくれた。
「そうだ、心配のしすぎは子供にもよくないぞ。悠李、またな! 雪花も元気でいろよ。それじゃあ、皆さん、お元気で」
潤一はそんな挨拶をして出て行った。
「あ、じゃあ、今日はありがとうございました。おやすみなさい」
佐野さんもそれだけ言うと、潤一のあとについていった。
なによ、、
私をのけ者にして、佐野さんとなにを話そうというのよ。
子供たちは絶対に渡さないんだから。
「ママ、パパはどこへ行っちゃったの? いつ帰ってくるの?」
「悠李、おうちの中で話そうね。外は寒いから風邪をひくよ」
なんて言ってあげたらいいんだろう。
もう、嘘はダメだ。
傷つけずに済ませることなど出来ないけれど。
「最後の最後にとんでもない人が現れたものね。なにがお土産よ。愛人に子供なんて産ませておいて図々しい。あの人の厚かましいことには慣れていたけど、よく顔を出せるものだわ」
恐ろしいほどに憤慨しながら、母は家に入っていった。
父はなにも言わずに家へ入ったが、不愉快な気分であることは十分に見てとれた。
母の言ったことが悠李に理解できたかどうかは知らないけれど、自分の父親の悪口を言われたことは理解できたのだと思う。
しょんぼりとうなだれて家に入っていく、悠李のうしろ姿が哀しかった。
悠李、ごめんね。
もう少しの辛抱よ。
私たち、これからきっと幸せになれるから。
きっとよ、きっと。
ううん、絶対に………。
「ねぇ、ママ、パパはいつ帰ってくるの? ねぇ、いつ?」
正直に答えたところで悠李はどこまで理解できるだろう。
「悠李、あのね、、パパはアメリカの女の人と仲良くなってね、その人と暮らすことになったの。悠李と雪花のことを嫌いになった訳じゃないのよ。でも、ママとはもう暮らせなくなったから。悠李はママのそばにいてくれるでしょ?」
「……ずっと帰ってこない?」
「うん、でもね、ときどき会えるよ。今日みたいに、また遊んでくれるよ」
悠李はもう涙を浮かべていた。
潤一だけを悪者にした説明に、少し罪悪感を覚えた。
「今度はパパ、いつ遊んでくれるの?」
「パパはお仕事があるから、すぐには無理だけど、お休みの日に連絡をくれると思うよ。だから、楽しみに待っていようね」
「……… 」
私の説明など信じてないのかもしれない。
悠李は少しも納得していないようだった。
無言で袋からドローン取り出し、悲しげに見つめていた。
「そういえば、保育園の美穂先生はどうして悠李と一緒にお弁当を食べていたの? なぜ、公園に来ていたの?」
悠李の疑問になんとか答えてホッとしたのもつかの間、母の尋問が始まった。
「それは私にもわからないわ。潤一さんに聞いてみたらどう?」
適当な嘘は思い浮かばなかったし、うまく誤魔化そうとしても、逆に追い込まれるような気がした。
悠李の前ではあまり潤一のことを悪く言って欲しくないけれど。
「あー、嫌だ! まったくなんて人なのかしら。美穂先生も、美穂先生だわ。なにを考えているんだか最近の若い人は。自分の娘を棚にあげて言えることではないですけどねっ ‼︎」
怒りの矛先は私にも向けられた。
母の身勝手な憶測だけれど、誰が考えたって、怪しいと思うに違いない。
その後はどうなったのだろう。美穂先生は潤一の誘いに応じたのだろうか。
半分寝かかっていた雪花を起こして歯を磨き、 パジャマに着替えさせてお布団を敷いた。
「眠かったでしょう、雪花ちゃん。今日はいい子にしてくれてありがとう。佐野さんもとっても喜んでいたね」
布団に寝かせた雪花と一緒に横になった。
「パパ、これくれた」
雪花は枕元に置いていたテディベアをつかんで胸に抱いた。
「……そうね、可愛いクマちゃんがもらえて良かったね」
「パパは? パパどこにいる?」
潤一のことは嫌いなのだとばかり思っていた。
それは勝手な思い込みであり、私の願望だったかも知れない。
悠李のように傷ついて欲しくないから。雪花が佐野さんに懐いて幸せになってくれたら、良心の呵責に責められずに済むから。
「………パパはね、、パパはお仕事だよ。いつもお仕事で忙しいの。でも、そのうち会えるからね」
私が言いよどんでいるうちに、雪花は眠ってしまっていた。
今日は潤一に似ている部分がやけに目につく。
「雪花ちゃん、ごめんね。本当のパパと会えなくしてしまって……」
静かに寝息を立てている雪花の、あどけない寝顔を見つめ、思わず涙が込み上げた。
佐野さんは分け隔てなく、自分の子として雪花を可愛がってくれるとは思う。
だけど、、
実の父親ほどに愛せるものではないように思う。
私自身、もし佐野さんに連れ子がいたら、自分の子と同じように愛せるだろうか。
それは甚だ疑問だ。
佐野さんは人として、とても立派な人だと思う。私なんかとは比べ物にならないほど。
そんな人だからこそ、子育てに自信のない私は頼ってしまうのだ。
佐野さんのような人がお父さんになってくれたなら、どんなに安心で心強いことかと。
悠李と雪花だって、いつかきっとわかってくれるはず。
雪花を寝かしつけてリビングへ戻ると、悠李は食卓テーブルで熱心になにかを書いていた。
「悠李、もう寝るよ。明日は早いでしょ。歯磨きはしたの?」
「悠李、パパにお手紙かいてるの」
クーピーでコピー用紙に、書き慣れていない下手なひらがなを綴っていた。
パパへ
はやくかえてきてね。またあそぼうね。
さつかしようね。
ゆうりより
“ 早く帰ってきてね。また遊ぼうね。サッカーしようね ”
少し間違えていたけれど、文字の書き方など教えたわけではない。
悠李が自分でマネて覚えたものだ。
「ママ、はい、お手紙。これパパにあげたいの」
悠李は書きあげた手紙を4つに折って、私にくれた。
これを一体どうしたら良いものか……。
家族総出で佐野さんのお見送りをしていたら、思わぬ来訪者があらわれた。
「パパーー 、おかえりっ!」
悠李が走って潤一のそばに駆け寄った。
「悠李、おまえドローンを忘れて帰っただろう」
潤一は手に下げた紙袋を悠李に渡した。
「パパ、おうちに帰ってきたんじゃないの?」
悲しげな顔をして悠李は潤一を見上げた。
「だから、ママとは離婚したって言っただろ。あ、お久しぶりです。皆さん、お揃いでお出迎え? なわけないよな。なんだ、そういうことか、タイミングがよくなかったみたいだな」
呆然として立っていた佐野さんの存在を知り、潤一は少しバツの悪い顔をした。
「お土産を渡すの忘れてたから。これは雪花のだ」
私に抱っこされて眠い目をこすっている雪花に、袋から出したテディベアのぬいぐるみを渡した。
潤一にはいつも警戒心をあらわにする雪花だったけれど、この度は素直に礼を言った。
「パパ、ありがとう」
「ふっ、おまえは可愛いな」
このどんよりとした重い空気も、この人には少しも気にならないようだ。
「今度はいつ会えるかな? なぁ、雪花」
一刻も早く帰って欲しいのに、雪花の頭をなでながら、愛おしげに見つめている。
「ねぇ、ママ、パパと仲直りして。お願い 、ねぇ、ママ~」
また悠李が余計なことを口走って、私の身体を揺さぶった。
悠李の切実な懇願に、優越の笑みを浮かべている潤一が忌々しかった。
「あ、じゃあ、今日はこれで。どうもお邪魔しました」
佐野さんのほうが気まずさに耐えかねたのか一礼して、その場から立ち去ろうとした。
「 じゃあ、俺も帰ろうかな。佐野、ちょっと話があるんだ、つきあえよ」
潤一の唐突な誘いに佐野さんが歩みを止め、無表情に振り向いた。
佐野さんに一体、なんの話があるというのか。
突然現れて、あまりに傍若無人な振る舞いに黙っていられなかった。
「いいから、もう帰ってください! 話なんてないわ。あまりにも失礼じゃない。早く帰って!」
「なんだよ、おまえに話があるとは言ってないだろ」
佐野さんをうまく丸め込んで、自分が有利になる提案でも出そうとしているに違いない。
「私たちにはこれ以上、関わらないでもらいたいわ」
ジェニファーと生まれたばかりの子と、幸せに暮らしたらいいではないか。
「関わらないわけにはいかないだろう。悠李も雪花も俺の子なんだぞ。おまえ一人に任せていたら、子供には一生会えなくなるからな」
「ちゃんと会わせたじゃないの。約束を守らなかったのはあなたのほうだわ。電話をしても通じなくて、どれだけ心配したかしれないわ!」
感情が高ぶり、思わず涙ぐむ。
「だから、悠李と遊ぶのに忙しかったって言っただろう。なぁ、悠李、そうだよな?」
手なずけられた悠李は、すっかり潤一の言いなりだ。
「うん、ママ、パパとケンカしないで」
悠李も目に涙をためて訴えた。
「彩矢ちゃん、俺も松田先生とは前から話したいと思ってたんだ。だから心配しないで」
佐野さんがそう言ってなだめてくれた。
「そうだ、心配のしすぎは子供にもよくないぞ。悠李、またな! 雪花も元気でいろよ。それじゃあ、皆さん、お元気で」
潤一はそんな挨拶をして出て行った。
「あ、じゃあ、今日はありがとうございました。おやすみなさい」
佐野さんもそれだけ言うと、潤一のあとについていった。
なによ、、
私をのけ者にして、佐野さんとなにを話そうというのよ。
子供たちは絶対に渡さないんだから。
「ママ、パパはどこへ行っちゃったの? いつ帰ってくるの?」
「悠李、おうちの中で話そうね。外は寒いから風邪をひくよ」
なんて言ってあげたらいいんだろう。
もう、嘘はダメだ。
傷つけずに済ませることなど出来ないけれど。
「最後の最後にとんでもない人が現れたものね。なにがお土産よ。愛人に子供なんて産ませておいて図々しい。あの人の厚かましいことには慣れていたけど、よく顔を出せるものだわ」
恐ろしいほどに憤慨しながら、母は家に入っていった。
父はなにも言わずに家へ入ったが、不愉快な気分であることは十分に見てとれた。
母の言ったことが悠李に理解できたかどうかは知らないけれど、自分の父親の悪口を言われたことは理解できたのだと思う。
しょんぼりとうなだれて家に入っていく、悠李のうしろ姿が哀しかった。
悠李、ごめんね。
もう少しの辛抱よ。
私たち、これからきっと幸せになれるから。
きっとよ、きっと。
ううん、絶対に………。
「ねぇ、ママ、パパはいつ帰ってくるの? ねぇ、いつ?」
正直に答えたところで悠李はどこまで理解できるだろう。
「悠李、あのね、、パパはアメリカの女の人と仲良くなってね、その人と暮らすことになったの。悠李と雪花のことを嫌いになった訳じゃないのよ。でも、ママとはもう暮らせなくなったから。悠李はママのそばにいてくれるでしょ?」
「……ずっと帰ってこない?」
「うん、でもね、ときどき会えるよ。今日みたいに、また遊んでくれるよ」
悠李はもう涙を浮かべていた。
潤一だけを悪者にした説明に、少し罪悪感を覚えた。
「今度はパパ、いつ遊んでくれるの?」
「パパはお仕事があるから、すぐには無理だけど、お休みの日に連絡をくれると思うよ。だから、楽しみに待っていようね」
「……… 」
私の説明など信じてないのかもしれない。
悠李は少しも納得していないようだった。
無言で袋からドローン取り出し、悲しげに見つめていた。
「そういえば、保育園の美穂先生はどうして悠李と一緒にお弁当を食べていたの? なぜ、公園に来ていたの?」
悠李の疑問になんとか答えてホッとしたのもつかの間、母の尋問が始まった。
「それは私にもわからないわ。潤一さんに聞いてみたらどう?」
適当な嘘は思い浮かばなかったし、うまく誤魔化そうとしても、逆に追い込まれるような気がした。
悠李の前ではあまり潤一のことを悪く言って欲しくないけれど。
「あー、嫌だ! まったくなんて人なのかしら。美穂先生も、美穂先生だわ。なにを考えているんだか最近の若い人は。自分の娘を棚にあげて言えることではないですけどねっ ‼︎」
怒りの矛先は私にも向けられた。
母の身勝手な憶測だけれど、誰が考えたって、怪しいと思うに違いない。
その後はどうなったのだろう。美穂先生は潤一の誘いに応じたのだろうか。
半分寝かかっていた雪花を起こして歯を磨き、 パジャマに着替えさせてお布団を敷いた。
「眠かったでしょう、雪花ちゃん。今日はいい子にしてくれてありがとう。佐野さんもとっても喜んでいたね」
布団に寝かせた雪花と一緒に横になった。
「パパ、これくれた」
雪花は枕元に置いていたテディベアをつかんで胸に抱いた。
「……そうね、可愛いクマちゃんがもらえて良かったね」
「パパは? パパどこにいる?」
潤一のことは嫌いなのだとばかり思っていた。
それは勝手な思い込みであり、私の願望だったかも知れない。
悠李のように傷ついて欲しくないから。雪花が佐野さんに懐いて幸せになってくれたら、良心の呵責に責められずに済むから。
「………パパはね、、パパはお仕事だよ。いつもお仕事で忙しいの。でも、そのうち会えるからね」
私が言いよどんでいるうちに、雪花は眠ってしまっていた。
今日は潤一に似ている部分がやけに目につく。
「雪花ちゃん、ごめんね。本当のパパと会えなくしてしまって……」
静かに寝息を立てている雪花の、あどけない寝顔を見つめ、思わず涙が込み上げた。
佐野さんは分け隔てなく、自分の子として雪花を可愛がってくれるとは思う。
だけど、、
実の父親ほどに愛せるものではないように思う。
私自身、もし佐野さんに連れ子がいたら、自分の子と同じように愛せるだろうか。
それは甚だ疑問だ。
佐野さんは人として、とても立派な人だと思う。私なんかとは比べ物にならないほど。
そんな人だからこそ、子育てに自信のない私は頼ってしまうのだ。
佐野さんのような人がお父さんになってくれたなら、どんなに安心で心強いことかと。
悠李と雪花だって、いつかきっとわかってくれるはず。
雪花を寝かしつけてリビングへ戻ると、悠李は食卓テーブルで熱心になにかを書いていた。
「悠李、もう寝るよ。明日は早いでしょ。歯磨きはしたの?」
「悠李、パパにお手紙かいてるの」
クーピーでコピー用紙に、書き慣れていない下手なひらがなを綴っていた。
パパへ
はやくかえてきてね。またあそぼうね。
さつかしようね。
ゆうりより
“ 早く帰ってきてね。また遊ぼうね。サッカーしようね ”
少し間違えていたけれど、文字の書き方など教えたわけではない。
悠李が自分でマネて覚えたものだ。
「ママ、はい、お手紙。これパパにあげたいの」
悠李は書きあげた手紙を4つに折って、私にくれた。
これを一体どうしたら良いものか……。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる