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子供たちとの面会
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結婚となると、なんとなく二の足を踏んでしまう美穂だったけれど、同居生活は想像以上に快適だった。
整理整頓はもちろんのこと、料理の腕が抜群によかった。
俺が仕事から帰って来ると、熱々の料理を用意してくれる。
風呂上がりに着るパジャマだの、ビールのつまみだのと、まるで殿様にでもなったような気分だ。
これ以上、なにを望むことがあるのだろうという気がして来る。
「美穂、酒のつまみはもういいよ。こっちに来いよ、一緒に飲もう」
「ちょっと待ってください。もう、出来ましたから」
晩飯が美味かったので沢山食べたし、寝る前に食べ過ぎて太りたくもない。
なので、つまみは本当に簡単なものでいい。
「はい、出来ましたよ~」
棒状の餃子のようなものを皿にのせて持って来た。
食べてみると中は餃子の餡ではなく魚だ。
「美味いな、これは何が入ってるんだ?」
「これは鯖と大葉を餃子の皮で巻いて焼いたものですよ。鯖缶は安いのでレシピはたくさん知ってますけど、先生のお口には合わないかと」
「美穂の作ったものはなんでも美味いよ。今までずっとひどいものばかり食べさせられてたからな」
まぁ、彩矢の料理のお陰で中年太りもせずに済んだともいえる。
「小さな子がいたら、お料理なんて出来ませんよ。それは仕方がないです」
「とにかく彩矢はヘンテコなものばかり作ってたな。美穂にも食わせてやりたいよ。ハハハッ」
今じゃ笑い話にしかならないけれど、実際に食わされていたときは、イライラして消化不良を起こしそうだった。
「ちょっと食べてみたくなりました。フフフッ。……あ、良かったら、肩でも揉みましょうか? お疲れでしょう」
そう言ってソファの後ろへまわり、俺の肩を揉み始めた。
「肩を揉むのも上手いな。美穂は器用なんだな」
あのクソ親父もこんないい待遇を受けていたのかと思うと、忌々しい不快な気分がよみがえった。
「美穂、もういいよ。おまえも疲れただろう。少し休め」
「家事しかしてないですから別に疲れてません。肩、すごく凝ってますよ。もう少し揉んであげます」
美穂の手は肩から首、頭へと移る。
ヘッドスパも上手いものだな。
目を閉じて、マッサージの心地よさを堪能する。
指の力加減も押さえどころも的確で、日頃の疲れが癒されていく。
今どき、こんなことまでしてくれる嫁など、どこを探してもいないだろうな。
「美穂と結婚する男は幸せだな」
「……… 」
マッサージしていた美穂の指が止まった。
気持ちよすぎて、つい余計なことを言ってしまった。
嫁は美穂で十分じゃないかと思うのに、どうしてこうも踏ん切りがつかないのだろう。
土曜日の午後、ICUの患者を診たあと、約束どおり彩矢に電話をした。
「あ、俺だけど。子供と面会って言ってただろ? 悠李と雪花はどうなんだ? 俺に会う気があるのか?」
『え、ええ、もちろんよ。ありがとう。悠李は朝から楽しみに待ってたわ。雪花もなんとか説得できたの』
「そうか、わかった。今からそっちに向かう。あと十五分もしたら着くよ。じゃあな」
マンションにいる美穂を見たら、悠李と雪花はなんと思うだろう。
悠李は少し知恵もついているから、不審に思うかもしれない。
まぁ、なんとかなるだろ。
「パパー!! 」
平川家に着いて玄関横のブザーを押すと、中から悠李の声が聞こえて、すぐにドアが開けられた。
「悠李、元気にしてたか? 久しぶりだな」
「ママがね、パパがもうすぐ来るって言ったから、悠李ずっと玄関で待ってたの」
目を輝かせて俺を見つめた悠李が、本当の息子のように可愛く思えた。
「そうか、おまえは可愛い奴だな。またサッカー教えてやるよ。今日の仕事は終わったからな」
「本当? じゃあ、今日はずっと遊べるの?」
「そうだな。病院から電話が来なかったらな」
「やったー!!」
リビングのほうから彩矢に連れられた雪花もやって来た。
「ママも、ママも一緒に行こう!」
雪花は彩矢の手をつかんで揺さぶった。
「雪花ちゃん、今日はパパと遊ぶってお約束したでしょ? ママ、これから用事があるの。終わったらすぐに迎えに行ってあげるからね」
子供は少し見ないうちに随分と変わっているものだな。
悠李も雪花もまたひとまわり大きくなっていた。
「雪花、琴似のマンションに行くぞ。去年までそこに住んでたんだぞ。もう忘れたのか?」
グズっていた雪花だったけれど、少し興味をそそられたのか、俺の目をジッと見つめた。
伸びた髪の毛をふたつに結んだ雪花は、益々可愛らしい女の子になっていた。
「悠李は覚えてるよ。悠李、琴似のマンションが好きだよ! 雪花は来なくていい」
邪魔者あつかいした悠李の言葉に刺激されたのか、
「ゆきかもいく!」と言った。
「よし、じゃあ、行くぞ!」
彩矢の車から二人分のチャイルドシートを借りて、後部座席へ移した。
「じゃあ、ママ、バイバイ!!」
彩矢が不安げな顔をして、手をふる二人を見ていた。
「白石のお義母さんは来てくれてるんですか? 本当に二人も一緒に面倒みられるんですか?」
「ああ、久しぶりに孫に会えるからって楽しみにしてたよ。何かあったら電話するから心配するな。じゃあな」
「あーっ、美穂先生だ!」
「みほせんしぇーい!!」
マンションの玄関ドアを開けると、美穂がオドオドとした笑顔で二人を迎えた。
「お、、お久しぶりね。元気にしてた? 今日は悠ちゃんと雪花ちゃんが来るから遊びに来ないかって、お父さんに誘われたの」
「……ふーん、美穂先生はパパと仲良しなんだね」
悠李は大人びたことを言って、美穂の顔を引きつらせた。
「みほせんしぇい、どこに行ってたの? いっしょにあそぼ」
さっきまで不機嫌だった雪花は、すっかりご機嫌になって、すぐに靴を脱いで中に入っていった。
やはり美穂は保育士だけあって、子どもの心をつかむのが上手かった。
♪ ♪ 一本と一本で忍者になって、二本と二本でカニになって、…………………五本と五本で おばけになって、お空に飛んでったぁ~♪♪
ヒュウーーー!!
「あははっ、もう一回、もう一回やる!」
手遊び歌で盛り上がっている三人の、微笑ましい情景に心が和む。
やはり美穂がいてくれて良かった。
面会がしたくても、俺とお袋だけで悠李と雪花を喜ばせるのは至難の業だ。
ラクをしながらこんな風にケタケタ笑っている子供たちを眺めていられるとはな。
二時間ほどして彩矢から連絡があったが、まだ子供たちが帰りたがってないと言って、時間を延長してもらった。
もちろん美穂のことは告げなかった。
いずれ子供の口からバレることで、隠し通せるものではないが、俺との面会を楽しいと感じるさせることが何よりも大事だ。
夕食は予約を入れて、駅前ホテルのディナーブュッフェを食べに行った。
子供は日常とは違う経験が楽しいだろう。
悠李は手の込んだ肉料理や新鮮な魚介類には目もくれず、フライドポテトだの、ソーセージだの、ジャンクフードばかりを皿に盛り付けていた。
雪花は十種類もある一口サイズのケーキとアイスを美穂に取らせている。
「雪花、デザートは食事の後だろ。ちゃんと栄養のあるものから先に食べろ」
「あ、すみません。雪花ちゃんがどうしてもって言うものですから」
別に美穂が謝ることではない。
言い出したら聞かない強情な雪花が美穂の手に負えるわけがない。
「いいよ、うまそうなものは俺が運ぶから気にするな」
メインの料理をたくさん盛り付けてテーブルに運んだ。
まぁ、子供の食べる量など知れたものなので気にもせず、俺も自分の好きなものを選んで食べた。
美穂だけが忙しそうに食べる暇もなく、甲斐甲斐しく子供の世話を焼いていた。
子連れで外食などすると、大体いつも母親というのはこんな目にあう。
「悠ちゃんはお箸の持ち方がとっても上手ね。雪花ちゃん、はい、アーンして。可哀想だから緑のお野菜も食べてあげようね」
そんなことを言っては、雪花の口にブロッコリーなどの野菜を入れていた。
マイペースにバクバク食べている俺に、目くじらを立てることもなく、美穂はディナーを楽しんでいるように見えた。
本当に子供の世話が好きなんだな。
すぐに非難めいた目で、協力しない俺を睨みつけていた彩矢とは大違いだ。
美味しいディナーを楽しんだあと、子供たちを送り届けるために、彩矢の実家へ向かった。
「あ、あの、ついでみたいで申し訳ないのですが、、私、平川家の皆さんにお詫びをしてもいいでしょうか?」
緊張した面持ちで美穂が聞いた。
「あ、ああ、それがいいかも知れないな。そうしろよ」
ケーキかなにか買っていきたいと言うので、途中、洋菓子店に寄る。
平川家に着いたときには、午後八時を過ぎていた。
玄関のブザーを押すと、彩矢がすぐに出て来た。
「ママ、ただいま~!!」
玄関に悠李の元気な声が響いた。
「お帰り。悠李、楽しかった? 随分遅かったのね」
彩矢には外で晩飯を食べてから連れて行くと連絡は入れていたけれど、こんなに遅くなるとは思わなかったのだろう。
雪花は眠いのか、あくびをしながら目をこすっていた。
「雪花ちゃん、疲れたでしょう、大丈夫?」
「ママ、ただいま。みほせんしぇいといっぱいあそんだ」
雪花は嬉しげな顔をして彩矢に伝えた。
「えっ?」
俺の後ろに隠れていた美穂がかしこまった顔をして頭を下げた。
「あ、あの、平川さん、お詫びにも伺わないでいてごめんなさい。ひどいことをしてしまって、本当になんてお詫びをしていいのか、、」
「み、美穂先生!!」
彩矢の顔が一瞬のうちに凍りついたかのように青ざめていった。
整理整頓はもちろんのこと、料理の腕が抜群によかった。
俺が仕事から帰って来ると、熱々の料理を用意してくれる。
風呂上がりに着るパジャマだの、ビールのつまみだのと、まるで殿様にでもなったような気分だ。
これ以上、なにを望むことがあるのだろうという気がして来る。
「美穂、酒のつまみはもういいよ。こっちに来いよ、一緒に飲もう」
「ちょっと待ってください。もう、出来ましたから」
晩飯が美味かったので沢山食べたし、寝る前に食べ過ぎて太りたくもない。
なので、つまみは本当に簡単なものでいい。
「はい、出来ましたよ~」
棒状の餃子のようなものを皿にのせて持って来た。
食べてみると中は餃子の餡ではなく魚だ。
「美味いな、これは何が入ってるんだ?」
「これは鯖と大葉を餃子の皮で巻いて焼いたものですよ。鯖缶は安いのでレシピはたくさん知ってますけど、先生のお口には合わないかと」
「美穂の作ったものはなんでも美味いよ。今までずっとひどいものばかり食べさせられてたからな」
まぁ、彩矢の料理のお陰で中年太りもせずに済んだともいえる。
「小さな子がいたら、お料理なんて出来ませんよ。それは仕方がないです」
「とにかく彩矢はヘンテコなものばかり作ってたな。美穂にも食わせてやりたいよ。ハハハッ」
今じゃ笑い話にしかならないけれど、実際に食わされていたときは、イライラして消化不良を起こしそうだった。
「ちょっと食べてみたくなりました。フフフッ。……あ、良かったら、肩でも揉みましょうか? お疲れでしょう」
そう言ってソファの後ろへまわり、俺の肩を揉み始めた。
「肩を揉むのも上手いな。美穂は器用なんだな」
あのクソ親父もこんないい待遇を受けていたのかと思うと、忌々しい不快な気分がよみがえった。
「美穂、もういいよ。おまえも疲れただろう。少し休め」
「家事しかしてないですから別に疲れてません。肩、すごく凝ってますよ。もう少し揉んであげます」
美穂の手は肩から首、頭へと移る。
ヘッドスパも上手いものだな。
目を閉じて、マッサージの心地よさを堪能する。
指の力加減も押さえどころも的確で、日頃の疲れが癒されていく。
今どき、こんなことまでしてくれる嫁など、どこを探してもいないだろうな。
「美穂と結婚する男は幸せだな」
「……… 」
マッサージしていた美穂の指が止まった。
気持ちよすぎて、つい余計なことを言ってしまった。
嫁は美穂で十分じゃないかと思うのに、どうしてこうも踏ん切りがつかないのだろう。
土曜日の午後、ICUの患者を診たあと、約束どおり彩矢に電話をした。
「あ、俺だけど。子供と面会って言ってただろ? 悠李と雪花はどうなんだ? 俺に会う気があるのか?」
『え、ええ、もちろんよ。ありがとう。悠李は朝から楽しみに待ってたわ。雪花もなんとか説得できたの』
「そうか、わかった。今からそっちに向かう。あと十五分もしたら着くよ。じゃあな」
マンションにいる美穂を見たら、悠李と雪花はなんと思うだろう。
悠李は少し知恵もついているから、不審に思うかもしれない。
まぁ、なんとかなるだろ。
「パパー!! 」
平川家に着いて玄関横のブザーを押すと、中から悠李の声が聞こえて、すぐにドアが開けられた。
「悠李、元気にしてたか? 久しぶりだな」
「ママがね、パパがもうすぐ来るって言ったから、悠李ずっと玄関で待ってたの」
目を輝かせて俺を見つめた悠李が、本当の息子のように可愛く思えた。
「そうか、おまえは可愛い奴だな。またサッカー教えてやるよ。今日の仕事は終わったからな」
「本当? じゃあ、今日はずっと遊べるの?」
「そうだな。病院から電話が来なかったらな」
「やったー!!」
リビングのほうから彩矢に連れられた雪花もやって来た。
「ママも、ママも一緒に行こう!」
雪花は彩矢の手をつかんで揺さぶった。
「雪花ちゃん、今日はパパと遊ぶってお約束したでしょ? ママ、これから用事があるの。終わったらすぐに迎えに行ってあげるからね」
子供は少し見ないうちに随分と変わっているものだな。
悠李も雪花もまたひとまわり大きくなっていた。
「雪花、琴似のマンションに行くぞ。去年までそこに住んでたんだぞ。もう忘れたのか?」
グズっていた雪花だったけれど、少し興味をそそられたのか、俺の目をジッと見つめた。
伸びた髪の毛をふたつに結んだ雪花は、益々可愛らしい女の子になっていた。
「悠李は覚えてるよ。悠李、琴似のマンションが好きだよ! 雪花は来なくていい」
邪魔者あつかいした悠李の言葉に刺激されたのか、
「ゆきかもいく!」と言った。
「よし、じゃあ、行くぞ!」
彩矢の車から二人分のチャイルドシートを借りて、後部座席へ移した。
「じゃあ、ママ、バイバイ!!」
彩矢が不安げな顔をして、手をふる二人を見ていた。
「白石のお義母さんは来てくれてるんですか? 本当に二人も一緒に面倒みられるんですか?」
「ああ、久しぶりに孫に会えるからって楽しみにしてたよ。何かあったら電話するから心配するな。じゃあな」
「あーっ、美穂先生だ!」
「みほせんしぇーい!!」
マンションの玄関ドアを開けると、美穂がオドオドとした笑顔で二人を迎えた。
「お、、お久しぶりね。元気にしてた? 今日は悠ちゃんと雪花ちゃんが来るから遊びに来ないかって、お父さんに誘われたの」
「……ふーん、美穂先生はパパと仲良しなんだね」
悠李は大人びたことを言って、美穂の顔を引きつらせた。
「みほせんしぇい、どこに行ってたの? いっしょにあそぼ」
さっきまで不機嫌だった雪花は、すっかりご機嫌になって、すぐに靴を脱いで中に入っていった。
やはり美穂は保育士だけあって、子どもの心をつかむのが上手かった。
♪ ♪ 一本と一本で忍者になって、二本と二本でカニになって、…………………五本と五本で おばけになって、お空に飛んでったぁ~♪♪
ヒュウーーー!!
「あははっ、もう一回、もう一回やる!」
手遊び歌で盛り上がっている三人の、微笑ましい情景に心が和む。
やはり美穂がいてくれて良かった。
面会がしたくても、俺とお袋だけで悠李と雪花を喜ばせるのは至難の業だ。
ラクをしながらこんな風にケタケタ笑っている子供たちを眺めていられるとはな。
二時間ほどして彩矢から連絡があったが、まだ子供たちが帰りたがってないと言って、時間を延長してもらった。
もちろん美穂のことは告げなかった。
いずれ子供の口からバレることで、隠し通せるものではないが、俺との面会を楽しいと感じるさせることが何よりも大事だ。
夕食は予約を入れて、駅前ホテルのディナーブュッフェを食べに行った。
子供は日常とは違う経験が楽しいだろう。
悠李は手の込んだ肉料理や新鮮な魚介類には目もくれず、フライドポテトだの、ソーセージだの、ジャンクフードばかりを皿に盛り付けていた。
雪花は十種類もある一口サイズのケーキとアイスを美穂に取らせている。
「雪花、デザートは食事の後だろ。ちゃんと栄養のあるものから先に食べろ」
「あ、すみません。雪花ちゃんがどうしてもって言うものですから」
別に美穂が謝ることではない。
言い出したら聞かない強情な雪花が美穂の手に負えるわけがない。
「いいよ、うまそうなものは俺が運ぶから気にするな」
メインの料理をたくさん盛り付けてテーブルに運んだ。
まぁ、子供の食べる量など知れたものなので気にもせず、俺も自分の好きなものを選んで食べた。
美穂だけが忙しそうに食べる暇もなく、甲斐甲斐しく子供の世話を焼いていた。
子連れで外食などすると、大体いつも母親というのはこんな目にあう。
「悠ちゃんはお箸の持ち方がとっても上手ね。雪花ちゃん、はい、アーンして。可哀想だから緑のお野菜も食べてあげようね」
そんなことを言っては、雪花の口にブロッコリーなどの野菜を入れていた。
マイペースにバクバク食べている俺に、目くじらを立てることもなく、美穂はディナーを楽しんでいるように見えた。
本当に子供の世話が好きなんだな。
すぐに非難めいた目で、協力しない俺を睨みつけていた彩矢とは大違いだ。
美味しいディナーを楽しんだあと、子供たちを送り届けるために、彩矢の実家へ向かった。
「あ、あの、ついでみたいで申し訳ないのですが、、私、平川家の皆さんにお詫びをしてもいいでしょうか?」
緊張した面持ちで美穂が聞いた。
「あ、ああ、それがいいかも知れないな。そうしろよ」
ケーキかなにか買っていきたいと言うので、途中、洋菓子店に寄る。
平川家に着いたときには、午後八時を過ぎていた。
玄関のブザーを押すと、彩矢がすぐに出て来た。
「ママ、ただいま~!!」
玄関に悠李の元気な声が響いた。
「お帰り。悠李、楽しかった? 随分遅かったのね」
彩矢には外で晩飯を食べてから連れて行くと連絡は入れていたけれど、こんなに遅くなるとは思わなかったのだろう。
雪花は眠いのか、あくびをしながら目をこすっていた。
「雪花ちゃん、疲れたでしょう、大丈夫?」
「ママ、ただいま。みほせんしぇいといっぱいあそんだ」
雪花は嬉しげな顔をして彩矢に伝えた。
「えっ?」
俺の後ろに隠れていた美穂がかしこまった顔をして頭を下げた。
「あ、あの、平川さん、お詫びにも伺わないでいてごめんなさい。ひどいことをしてしまって、本当になんてお詫びをしていいのか、、」
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