六華 snow crystal 4

なごみ

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最悪な出来事

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そんな、そんなのあんまりだ……。


全身から力が抜けて、絶望的な気持ちになる。こんなことってあり?


悲しすぎて涙もでなかった。


フレアースカートの下にはいているタイツがおろされそうになり、思いっきり修二さんを突き飛ばした。


ひるんだ隙に、二階へ駆けあがった。


誰の部屋か知らないけれど、ドアを開けてウォーキングクローゼットの中へ逃げ込む。


西区で暮らしているお兄様のお部屋なのかも知れない。


ハンガーにぶら下げられたスーツやコートがたくさん掛けられていた。バーバリーのコートの陰にそっと隠れた。


修二さんが階段を上がってくる音が聞こえる。あまりの恐怖に震えが止まらない。


歯がガチガチと音を立てて鳴った。


どんなに怖いホラーだってこれよりはマシだ。こんなリアルな恐怖体験を自分がするなど思ってもみなかった。


なぜ二階へなど逃げてしまったのだろう。裸足でもいいから、外へ逃げ出すべきだったと悔やむ。



二階の部屋のドアを開け閉めする音がして、修二さんの呼ぶ声が聞こえた。


「有紀ちゃーん、どこにいるんだい?」


……嫌だ、助けて、誰か早く帰ってきて!


私のいる部屋のドアが開けられた。


流れる涙を拭うことも出来ずに、息を殺す。


「有紀ちゃん、いるんだろ?  フフッ、かくれんぼも楽しいけどね。見つからないうちに出てきなよ」


クローゼットのドアがガチャリと開けられた。


助けて、だれか、だれか、お願い!


「ぷっ、かわいいあんよが見えてるよ。有紀ちゃん、みーっけ!」


ハンガーに掛けられたバーバリーのコートがサッとよけられ、笑っている修二さんが立っていた。


「キャアーーーー!!」


全身からありったけの声がほとばしり出た。


「まったく、なんて声を出すんだよ!  早く出ろっ」


腕をつかまれ引っ張り出される。シーツが敷かれていないむき出しのベッドへ押し倒された。


「やめて、やめてよー!  あっちへ行ってったら!」


泣きながら激しく抵抗し、振りまわした私の手が修二さんの頰に強く当たった。


「痛っ、」


口もとを手で押さえた修二さんから笑顔が消えた。


おびえてガタガタ震えていた私のほおに、修二さんの強烈なパンチが飛んで来た。


目から火が出て、味わったことのない激痛に心が萎えた。


「ジッとしてろっ!  不二子のようになりたいか?」


抵抗したくても、恐怖で腰が抜けたようになり、もうどこにも力は入らなかった。


こ、殺される。これが、これが本当に修二さん……。









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