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こんなことになるなんて、
しおりを挟む颯爽と駆けつけた先生が、まるで白馬に乗った王子様か、雲に乗って現れた救世主のように思えた。
「大丈夫か?」
腰を抜かしてひっくり返っていた私を引っ張り上げてくれた。
「アナタハ誰デスカ?」
陰険な目つきでゲオルクは私たちのそばに来た。
「俺は茉理の主治医だ。病気がまたぶり返したようだから、このまま病院へ連れて行く」
そんな嘘を言って先生は私の腕をつかんだけれど。
ゲオルクがそんな言葉に納得して、私を解放してくれるはずもなかった。
「ワタシハ茉理ノフィアンセデス。モット優秀ナ医師ニ診テモライマス」
ゲオルクはそう言って、私のもう一方の腕をつかんだ。
「ギャアーー!!」
そばにいるだけで戦慄する人に腕をつかまれ、発狂しそうになる。
「茉理、落チ着イテクダサイ」
のけぞって硬直している私をゲオルクは抱きしめようとした。
「やめろ! この変態野郎、茉理にさわるな!!」
ーーボカッ!!
先生の拳がゲオルクの顔面を直撃した。
「ゲオルクさんっ!!」
後方からママの叫けぶ声が聞こえた。
ゲオルクはそのまま地面に倒れて、起き上がらなかった。
「茉理、行くぞ!」
「先生………」
まるで悪漢から救い出す映画のヒーローみたいにカッコ良かった。
二人で立ち去ろうとした瞬間、ドスッと鈍い音がしたと思ったら、今度は先生が膝からその場に崩れた。
えっ?
先生の後ろにレオンが能面みたいな顔で立っていた。
「レオン! 何したのっ!! 先生? 先生!!」
コンクリートの上で横たわっている先生は、呼んでも目を開けず、意識がなかった。
「なんて事してくれたのよ! 死んじゃったじゃないの!!」
まさか、こんなことになるなんて。
「大丈夫。急所ヲ外シテマス。アト五分モシタラ目ヲ覚マスデショウ」
落ち着いた様子でそう言ったレオンは、空手三段の黒帯だった。
「ゲオルクさん、大丈夫ですか? ゲオルクさん!!」
ママが倒れているゲオルクに話しかけていた。
ゲオルクは仰向けに目を開けたまま、宙をジッと睨みつけていた。
「ムコウノ方ガズット問題デス」
レオンが倒れているゲオルクを見て、ため息をつきながらそう言った。
「ゲオルクは意識があるじゃない。先生の方がずっと重症よ!」
「ゲオルクヲ怒ラセタノハ茉理、アナタノ責任。今後ドンナ報復ニ出ルカ。コノ医師ハ破滅サセラレル」
ーー破滅って、、どういうこと?
「ゲオルクの怪我は大したことないじゃない。先生は私を守ろうとして殴ったのよ」
「マンシュタイングループニハ、有能ナ顧問弁護士ガ何人モイマス。陪審員タチヲ買収スルコトニモ長ケテイル。コンナ医師一人、闇ニ葬ルコトナド造作ナイコトナノデス」
………………。
無表情に語ったレオンの言葉に嘘はないと思えた。
陰険極まりないゲオルクなら、十分にやりかねない。
ことの重大さを知り、震えがとまらなくなる。
これから、どうすればいいの?
先生は一体どうなっちゃうの?
私はゲオルクの言いなりにならないといけないの?
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