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2 死ぬかもしれない(切実)
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正確に言えば、4、5歳ぐらいの頃の私である。
母曰く、私の可愛さの黄金期。
''この頃は可愛かったのにねぇ''とため息をつかれながら、写真を見る度言われた。暗にそれ以降可愛くなくなったと言いたいのだ。
そりゃそうだ、小さい頃は可愛くないと親に見捨てられるかもしれないだろう。
あのチベットスナギツネでさえ子どもの頃はめちゃんこ可愛いように、生き物に共通する生き残る術だ。
ただ、顔の造形は見慣れたものであっても、色彩が違った。確かにこの頃の私は髪が長かったが、それでも日本人が1番多い黒髪だったし、瞳もカラフルなビー玉のような色ではなかった。
それがどうだ。今は、ミルクティー色の髪に若草色の瞳。日本人には不自然極まりない色彩である。ましてや、顔は私自身、尚更違和感しかない。
あくまで私の予想であるが、定員1名の召喚に無理矢理私が入ったことによる不具合だろう。そうなると、勇者君(仮)の方にも影響が出ている可能性がある。虹色アフロとかになっているかもしれない。そうなってたらすまん。悪気はなかったんだ。
さて、勇者君(仮)への懺悔もすんだ。もしかしたら、元の世界へ帰る方法があるかもしれないので、街には行きたいが、力のない子供1人じゃ何も出来ない。
とりあえず、目下の目標は生きてこの森を出ることだな。命大事に!をモットーに頑張ろう。
そうなると、1番必要なのは食料だ。
食べ物のことを考えると、キュゥとお腹が控えめに鳴った。
「お腹空いた」
キョロキョロとあたりを見渡すと、近くの木に実がなっているのを見つけた。
「よし。久しぶりだけど腕は鈍っていないはず」
他の木に絡まっていた蔦のような植物を木から剥がし、肩に担ぐ。それから軽く準備体操して、目当ての木をスルスルと登り、実がなった枝に到着する。
へへん。小学校時代の『野猿』の名は伊達じゃない。地元では男子とて木登りで私の右に出る者はいなかった。
それを自慢げに母に話したところ、母は思い詰めた表情をして、私を『女の子らしく』するために、中高一貫の女子校にいれた。大学も女子大に入学した私は、卒業する頃には母の思惑通りに、男性と目すら合わせられないか弱い女の子になっていた。
はい、今首を傾げたやつ腕立て100回ね。
私は、ユニコーンが嬉しさのあまりアクロバティックに宙返りするほど、理想的なか弱い乙女だ。異論は受け付けん。
話を戻して、社会人になり、会社で仕事をしているうちに男性に慣れ、そろそろ彼氏でもと思った矢先にこの状況である。
『はぁ?お前に彼氏?無理だろ!!
誰がお前みたいな野猿ゴリラ飼い慣らせんだよ!
まぁ、どうしてもって言うなら俺が…』
不意に浮かんだのは先日偶然街中で再会した小学校時代の同級生。散々笑い飛ばされて頭にきたので、話の途中拳ひとつで沈めて放置した。結局何が言いたかったんだあの阿呆は。
むかつく爆笑男を頭から追い出し、木と自分の身体を蔦でしっかりと固定する。
ズリズリと座ったまま枝の上を這うように実がある位置まで移動する。ヘタの部分を捻って、実を枝から切り離す。
「思ったより大きいし重い。
そもそも食べれるのかな、これ」
コンコンと叩いてみる。見た目はヤシの実のようで、硬い。どうやって皮を剥こうか。
ーグワォォ
その時、動物の唸り声が聞こえた。危うく抱えていた実を落とすところだった。
息を殺して、下を見る。
そこには、歩く度にここまで振動がくるほどの巨体で、額には角が生えたイノシシのような動物と、白の毛皮にところどころ桃色の縦縞模様が混じったリスのような動物が向かい合っていた。
これで異世界説が濃厚になってきた。あんな緑色の巨大イノシシなんて私は知らない。寝ている間に新種が発見された可能性もありえるが、あんなファンタジー染みた動物が地球に生息しているとは思わない。いたら世の中のゲーマーが狩りまくっているところだ。
イノシシが一歩進むとリスが五歩後退する。
ついに、リスの逃げ場がなくなった。後ろには湖、前にはイノシシ。絶体絶命である。
イノシシは、ニヒルな笑を浮かべているように見えた。リスがあわあわとしているのを見て楽しんでいるのである。
「性格悪っ」
私は、手元の実と下の動物を見比べる。
そして、丁度イノシシが私の真下に来た瞬間を狙って、実を落とした。
ーキャインッ
脳天に当たったようで、イノシシはフラフラと足元がおぼつかなくなっている。リスが驚いたようにこっちを見上げたので、私はさっさと逃げな、という意を込めてシッシッと手を払う仕草をした。
リスはじっと私を見た後、急いで逃げていった。
リスがいなくなったことに気がついたイノシシは八つ当たりをするかのように、近くの木に突進すると、そのままどこかに行った。
どうやら私のことは気づいていなかったらしい。
「.......惜しいことをしたかな」
最悪あのリスは非常食になったかもしれないのに。
くぅとお腹がなる。
「うぅ。また食べ物探さなきゃ」
しばらく待ってイノシシが戻ってこないのを確認して、木から降りる。
落とした実は木っ端微塵になっていた。イノシシが怒りの矛先を実にも向けたらしい。
ため息をひとつついて、私はまた歩き始めた。
日が暮れる前に食べられるものとどこか隠れられる場所を見つけないといけない。
てこてこてこてこ
立ち止まる度に一番最初に拾った木の枝を倒し、道筋を決定する。それを何度か繰り返しながら歩く。
足の感覚は既になかった。気合いと次歩みを止めたら動けなくなるという確信だけでひたすら歩いた。
あ、もう限界だと思ったその瞬間、目の前に黒を纏った''誰か''が見えた。
私は必死の思いでその黒を掴み、意識を手放した。
母曰く、私の可愛さの黄金期。
''この頃は可愛かったのにねぇ''とため息をつかれながら、写真を見る度言われた。暗にそれ以降可愛くなくなったと言いたいのだ。
そりゃそうだ、小さい頃は可愛くないと親に見捨てられるかもしれないだろう。
あのチベットスナギツネでさえ子どもの頃はめちゃんこ可愛いように、生き物に共通する生き残る術だ。
ただ、顔の造形は見慣れたものであっても、色彩が違った。確かにこの頃の私は髪が長かったが、それでも日本人が1番多い黒髪だったし、瞳もカラフルなビー玉のような色ではなかった。
それがどうだ。今は、ミルクティー色の髪に若草色の瞳。日本人には不自然極まりない色彩である。ましてや、顔は私自身、尚更違和感しかない。
あくまで私の予想であるが、定員1名の召喚に無理矢理私が入ったことによる不具合だろう。そうなると、勇者君(仮)の方にも影響が出ている可能性がある。虹色アフロとかになっているかもしれない。そうなってたらすまん。悪気はなかったんだ。
さて、勇者君(仮)への懺悔もすんだ。もしかしたら、元の世界へ帰る方法があるかもしれないので、街には行きたいが、力のない子供1人じゃ何も出来ない。
とりあえず、目下の目標は生きてこの森を出ることだな。命大事に!をモットーに頑張ろう。
そうなると、1番必要なのは食料だ。
食べ物のことを考えると、キュゥとお腹が控えめに鳴った。
「お腹空いた」
キョロキョロとあたりを見渡すと、近くの木に実がなっているのを見つけた。
「よし。久しぶりだけど腕は鈍っていないはず」
他の木に絡まっていた蔦のような植物を木から剥がし、肩に担ぐ。それから軽く準備体操して、目当ての木をスルスルと登り、実がなった枝に到着する。
へへん。小学校時代の『野猿』の名は伊達じゃない。地元では男子とて木登りで私の右に出る者はいなかった。
それを自慢げに母に話したところ、母は思い詰めた表情をして、私を『女の子らしく』するために、中高一貫の女子校にいれた。大学も女子大に入学した私は、卒業する頃には母の思惑通りに、男性と目すら合わせられないか弱い女の子になっていた。
はい、今首を傾げたやつ腕立て100回ね。
私は、ユニコーンが嬉しさのあまりアクロバティックに宙返りするほど、理想的なか弱い乙女だ。異論は受け付けん。
話を戻して、社会人になり、会社で仕事をしているうちに男性に慣れ、そろそろ彼氏でもと思った矢先にこの状況である。
『はぁ?お前に彼氏?無理だろ!!
誰がお前みたいな野猿ゴリラ飼い慣らせんだよ!
まぁ、どうしてもって言うなら俺が…』
不意に浮かんだのは先日偶然街中で再会した小学校時代の同級生。散々笑い飛ばされて頭にきたので、話の途中拳ひとつで沈めて放置した。結局何が言いたかったんだあの阿呆は。
むかつく爆笑男を頭から追い出し、木と自分の身体を蔦でしっかりと固定する。
ズリズリと座ったまま枝の上を這うように実がある位置まで移動する。ヘタの部分を捻って、実を枝から切り離す。
「思ったより大きいし重い。
そもそも食べれるのかな、これ」
コンコンと叩いてみる。見た目はヤシの実のようで、硬い。どうやって皮を剥こうか。
ーグワォォ
その時、動物の唸り声が聞こえた。危うく抱えていた実を落とすところだった。
息を殺して、下を見る。
そこには、歩く度にここまで振動がくるほどの巨体で、額には角が生えたイノシシのような動物と、白の毛皮にところどころ桃色の縦縞模様が混じったリスのような動物が向かい合っていた。
これで異世界説が濃厚になってきた。あんな緑色の巨大イノシシなんて私は知らない。寝ている間に新種が発見された可能性もありえるが、あんなファンタジー染みた動物が地球に生息しているとは思わない。いたら世の中のゲーマーが狩りまくっているところだ。
イノシシが一歩進むとリスが五歩後退する。
ついに、リスの逃げ場がなくなった。後ろには湖、前にはイノシシ。絶体絶命である。
イノシシは、ニヒルな笑を浮かべているように見えた。リスがあわあわとしているのを見て楽しんでいるのである。
「性格悪っ」
私は、手元の実と下の動物を見比べる。
そして、丁度イノシシが私の真下に来た瞬間を狙って、実を落とした。
ーキャインッ
脳天に当たったようで、イノシシはフラフラと足元がおぼつかなくなっている。リスが驚いたようにこっちを見上げたので、私はさっさと逃げな、という意を込めてシッシッと手を払う仕草をした。
リスはじっと私を見た後、急いで逃げていった。
リスがいなくなったことに気がついたイノシシは八つ当たりをするかのように、近くの木に突進すると、そのままどこかに行った。
どうやら私のことは気づいていなかったらしい。
「.......惜しいことをしたかな」
最悪あのリスは非常食になったかもしれないのに。
くぅとお腹がなる。
「うぅ。また食べ物探さなきゃ」
しばらく待ってイノシシが戻ってこないのを確認して、木から降りる。
落とした実は木っ端微塵になっていた。イノシシが怒りの矛先を実にも向けたらしい。
ため息をひとつついて、私はまた歩き始めた。
日が暮れる前に食べられるものとどこか隠れられる場所を見つけないといけない。
てこてこてこてこ
立ち止まる度に一番最初に拾った木の枝を倒し、道筋を決定する。それを何度か繰り返しながら歩く。
足の感覚は既になかった。気合いと次歩みを止めたら動けなくなるという確信だけでひたすら歩いた。
あ、もう限界だと思ったその瞬間、目の前に黒を纏った''誰か''が見えた。
私は必死の思いでその黒を掴み、意識を手放した。
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