勇者召喚に巻き込まれた(?)私、魔族の元で華咲かす

斑鳩 鳰

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4 ...詰んだ

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滝のように流れた涙も止まり、ただいま羞恥に陥っております、はい。
いやだってさ、アラサーにもなってギャン泣きって…しかも、イケメンの前で!
うがぁぁぁっ。いっそ誰か私を殺してっ。

ついさっきまで生きていることに感謝していたはずが、恥ずかしさのあまり死を望むしまつ。
私は恥ずかしい顔を見られないようにもらったタオルで顔をぐるぐる巻きにした。

「ふっ、お前それじゃあ何も見えないだろ。」

あーれぇー。顔のタオルがシュルルルと解かれて、目の前にイケメン様。うわっ、眩し。
私は咄嗟に手で目を覆った。

はっ。そうだ、私まだお礼言ってない。
私は姿勢を正し、イケメン様に深々と頭を下げた。

『この度は、危ないところをお助けいただきありがとうございました。
このご恩は決して忘れません。』

顔を上げると、イケメン様はキョトンとした顔で私を見下ろしていた。
あれ?変な事言ったかなぁ。
あ。私今見た目ちびっ子じゃん。
そりゃあ、年端もいかない子供がこんな言葉使ったら怪しむはなぁ!
どう弁明しようかと考えていると、イケメン様が口を開いた。

「お前、喋れないのか?」

『はい?』

思わず素で聞き返してしまった。
喋れないも何もさっき多大なる感謝の気持ちをお伝えしたばかりなのですが。

「そんなことが…いやでも、まさか…。」

どうやらイケメン様は自分の世界にトリップしてしまったらしい。
私はイケメン様の気が済むまで、隣で丸まっているリス君を撫でて待っていることにした。というか、まだいたのね、君。

私とリス君との間にほのぼのとした空気が流れる。すると、突然我に返ったイケメン様が屈んで、私に目線を合わせた。

「もう一度喋ってくれないか?」

『?布団が吹っ飛んだー』

「…」

『…』

「もう喋ったのか?」

私はコクリと頷いた。誰かつっこんでよ。私ただの可哀想な人じゃん…。

「確認なんだが、俺の言葉は理解出来ているな?」

コクリと頷く。

「そして、お前は先程きちんと喋ったと?」

コクリ。

「……。」

イケメン様がまじかーって顔してるよ。
でもね、その顔したいの私の方なんだ。
だってまさかの

言  葉  が  通  じ  な  い

そりゃあ、召喚に飛び入り参加した私が悪いけどさぁ、自動翻訳ぐらい欲しかった。
多分、聞き取りの方はさっきのおでこコツんでイケメン様がどうにかしてくれたんだと思う。喋る方は通じない以前に相手に聞こえない、と言うね!
これからどうしよぉぉぉおおおお

「"あー"と言ってみてくれ」

『あー』

「"あー"」

イケメン様の見様見真似でどうにか発音してみる。

「aaa…あー」

「!そうだ。
声が出ないわけではなさそうだな。」

良かった。声が奪われたとかではないのね。
そうと決まれば、特訓あるのみ。
グローバル社会に生きる社畜なめんなよ!異世界語ぐらいマスターしてやらぁ!!
私が決意新たに、拳を握っていると、イケメン様の方も考えがまとまったらしく、再度私の方を向いた。


「これから、イエスかノーで答えられる質問をいくつかする。」

コクリ。

「まず、俺はアレシュ・ハインズ。
お前は俺のことを知っているか?」

私は首を横に振った。
アレシュさんほどのイケメンなんて生きてきた中で初めて会いましたよ。

「…そうか。」

アレシュさんは少し複雑そうな表情をしていた。もしかしてこの世界の有名人だったりするのかな?もしそうなら、申し訳ないな。
私はごめんなさいの意味を込めて深く頭を下げた。

「いや、気にするな。
次に、自分の名前は覚えているか?」

これも首を振る。

「名前があった記憶は?」

地球に住んでいた時にきちんと両親から名付けられた名前があったのは覚えているけれど、この世界では記憶にないから、とりあえず首を振った。

「…そうか。
それじゃあ、親は?」

またまた首を振る。

それからいくつか質問されたけど、殆ど首を振るだけだった。これ私やばない?この世界の常識も知らずに言葉も通じないで生きていくとか…。
頭からサーッと血の気が引いていく。もう枯れたと思っていた涙がじわじわと目元に集まり始めた。
私は泣くもんかと歯を食いしばった。
その時、頭にぽんぽんと軽い衝撃。見上げれば、アレシュさんの手が頭に乗っていた。

「大丈夫、お前が自分で生きられるようになるまでは面倒見てやるから。」

ほ、惚れてまうやろーっ!
何そのイケメン宣言!いや、元からイケメンか!
そう言って星の数ほどの女を落としてきたんですね、わかります。
私は騙されな…いや、この際騙された方が良いのか。
すみません、お世話になりまーす。
私は息をするように手の平を返し、アレシュさんの手を握った。
くっ、私の両手でもアレシュさんの片手に収まってしまう。

「これから宜しくな。」

私はひとつ頷いて、言葉が無理でも感謝が伝わるように、とびっきりの笑顔でアレシュさんに抱きついた。
そして、そのままアレシュさんの胸の中で眠りについた。
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