勇者召喚に巻き込まれた(?)私、魔族の元で華咲かす

斑鳩 鳰

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15 爽やかな兄様

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「おえぇ…」

お前は学習せんのか、バカ犬がっ!
と叫びたい衝動に駆られたが、リヴちゃんは大人しい心優しき乙女なのでそんな汚い言葉は使わない。代わりに、奴の頭に自分のそれをひたすらグリグリと押し付けた。

「…テオ兄、もう、きやい
はなちて」

「わ、悪い!
俺移動の時、いっつもこのペースだから気づかなくて…
ちゃんと気をつけるから、そんなこと言わないでくれよ」

獣人って本当にずるいと思う。
彼らは自分の気持ちに正直だ。今だって悲しいオーラが全身から出ているし、特にペタンと垂れた耳がそれに拍車をかけている。
はぁ、そんな顔されたら許さない訳には行かないじゃんか。

「おろちて」

「リヴ…」

「…だっこはもういいから、てつなご」

「おうっ!」

うわあ、めっちゃ尻尾振ってる。
そんな全力で嬉しいアピールされたら、悪い気はしない。
よく見るとテオも結構顔整ってるしね。えぇ、どうせ私はミーハーですよ。

「じゃあ、反対の手はコココとですにゃ~」

「いや、ネネネですにゃー」

「じゅんばん!」

この3人と接していると自分が猛獣使いにでもなったような気がしてくる。
私は、片方の手をテオと、もう一方をじゃんけんで勝ったコココを繋いだ。
拗ねて頬を膨らませたネネネは、頭を撫でておいた。

「でもさ、案内って何すればいいんだ?」

いや、知らんがな。
普通それを私に聞くか?
テオは暫し考え込んでいたが、何かを閃いたらしく、はっと顔を上げた。

「そうだ、ラミラスを探そう!
その途中で気になるものがあったら言ってくれ、俺が知っている範囲で説明する!」

テオは満足気に頷くと、再び歩き始めた。
私のことをちゃんと考慮してくれているのか、だいぶゆっくりだ。

「しゅごい…」

城内は見た目に劣らずの壮麗さだった。決して煌びやかという訳では無いけれど、城内を構成している一つ一つ素材が良いのだろう、高級感で満ち満ちていた。双子も頭の上のハクトもキョロキョロと辺りを見渡している。
ふわふわな絨毯に土足で上がるのは躊躇したが、体中泥だらけのテオが普通に踏んでいるので、気にしないことにした。

「ラミラスはこっちだな!」

テオはヒクヒクと鼻を動かすと、ビシッと一方向を指した。

「わかりゅの?」

「いや、確証はない!
ここ広い上に人多いから、匂いで見つけるの大変なんだよなあ」

ならばどこから来たんだ、その自信は。

「ま、歩いてたら見つかるだろ!
近くなったら匂いでわかるしな!」

しゅっぱーつ!と元気に私の手を取って歩き出すテオ。
私は、絨毯に足をとられながらも並んで歩く。クソ、足が短いっ!

城内を歩きながら感じたことは、テオの人望の厚さだった。廊下ですれ違う人たちは一様に「どうも、テオ」「こんにちは、テオ」「よ、馬鹿」「やっほー、馬鹿」と挨拶しながら通り過ぎる。最後の方は悪口じゃないかって?でも7割方こんな感じだったよ?
そして、その人達はみんな私を見ると目を輝かせ、何故か頭を撫でられた。中には、双子の頭を撫でようとする強者もいて、フシャーッと思いっきり威嚇されていた。

「お、テオーッ!」

「あ、デジーッ!」

大きな呼び声と共に近づいて来たのは、クリーム色の耳と尻尾がついた獣人だった。色や耳の形的にラブラドール・レトリーバーと言ったところかな。

「ん?どうしたんだ、その子?
攫ってきたの?」

「違ぇーよ!
俺この子の兄ちゃんになったんだ!」

「まじかよ、良かったな!
俺、お前より子供の扱い慣れてるから、なんかあったら、まず従兄弟の俺に相談に来いよな!」

お前かぁぁぁぁあっ!
テオに変な事教えたバカはお前だったのかぁぁぁぁぁあ!!!
私は冷めた目で目の前のワンコを見上げた。
頭を撫でようとしてきたけれど、すぐに双子の方へ逃げた。お前は危ないと私の体が警鐘を鳴らしているのだよ!

「あれー?」

「お前嫌われてんじゃね?」

「人見知りなのかなぁ。
まあ、これから慣れていけばいいか。
それじゃあ俺はこれで!上司に呼ばれてるもんでね。」

「おぅ、またな!」

「あ、いたいた。テオー」

危ないワンコが消えたのを確認して、双子の壁から出ようとした時、再度テオを呼ぶ声がしたので慌てて戻る。今度は一体なんなんのよ。
双子の隙間から見上げれば、そこに居たのは長身のお兄さんだった。褐色の肌に、短く揃えられたアッシュグレーの髪。タレ目がちな目は穏やかな橙色。サッカーとかテニスが似合いそうな爽やか青年って感じだ。

「ラミラス!探したぞ!」

「イリディーネさんから、訓練が終わり次第すぐにテオのところに行けって言われたんだけど、どうしたの?」

「俺の代わりに、リヴに城を案内して欲しいんだよ。」

「誰?」

「俺の妹!」

「テオって妹いたっけ?」

これ以上隠れていたら、彼がいらぬ誤解を抱きそうな雰囲気だったので、双子シェルターから出て、爽やか青年のズボンをちょいちょいと引っ張った。

「え、ちょ。どうしたの、君。迷子?」

すぐに屈んで、私と目線を合わせて話しててくれる青年。私の中の君の好感度がうなぎ登りだ。出会った人みんな背が高いから話していると首が疲れるんだよ。

「きょうから、おしぇわになりましゅ
リヴ・フロルでしゅ」

名乗って、ペコリと頭を下げる。

「えーっと…
テオ、経緯を説明してくれる?」

「アレシュが森で拾った子供で、今日から俺たちと一緒に城で暮らすんだと。
それで、俺はこの子の兄ちゃんになるんだ!」

なんて脈絡のない説明。青年は少し困った顔で、私とテオを見比べた。

「うーん。事情はいまいちわからなかったけど、とりあえず俺はこの子に城を案内してあげたらいいの?」

「そうだな!
俺は後ろの2人の実力測定やらをしないといけねぇんだけど、リヴは危なくてそこには連れてけねぇからさ。」

「なるほど、わかった。
紹介が遅れたね。俺は、ラミラス・シューリア。よろしくね、リヴ。」

笑顔までも爽やか!後ろに緑の葉が舞っている幻想さえ見える。

「あい!
よろちくおねがいしましゅ、りゃみりゃしゅしゃん…ごめんなしゃい」

最初名前聞いた時から思っていたけど、やっぱり言えなかった!名前の大部分がラ行とサ行とかいじめでしかないと思う。言えない私への当てつけか!

「あはは。言い難いよね、俺の名前。
俺も小さい頃自分の名前きちんと言えなかったから、気にしないで。」

もうラミラスさん大好き!
私が気にしないようにフォローしてくれる辺りが、ほんと紳士だと思う。

「好きに呼んでくれていいからね。」

「んー……にいしゃま?」

爽やかさと言い、紳士的な対応と言い、兄様が1番しっくりくる。お兄ちゃんや兄さんでもなくて、兄様。
まあ、名前の文字がほとんど言えないからこう呼ぶしかないんだけどね!

「っ!!」

「うぎゃっ」

兄様は、突然私をガバッと抱きしめた。待て待て待て。何が君をそうさせた!

「ラミラスは子供好きだからな。
何となくこうなる予感はしてた!」

ケラケラと面白そうに笑うテオ。知ってたんなら止めて欲しかった。勢いが強すぎて一瞬息止まったんだからね。抱きついた後は力が緩んだけれど、兄様に離す意思はなさそう。

「テオ。
この役目くれて本当にありがとう。
俺、命に代えてでもきちんと案内するから!」

いや、大袈裟すぎです。
兄様はすっと立ち上がり、テオの手を握った。そして、嬉しそうに私の頭をなでなでし始めた。
彼の私を見下ろすキラキラした視線も気になるけれど、それよりも私の頭の中はさっき抱きしめられた時の筋肉の硬さでいっぱいだった。あの硬さは尋常じゃなかった。その細い体の構造どうなってるの?

「どうかしたのか?」

私が不思議に思いながら、兄様を見上げているとテオがひょいと私を抱えた。

「にいしゃま、かたい」

テオの行動を予想していなかった私は、つい疑問をそのまま口から発してしまった。

「硬い?
あぁ、ラミラスは岩人族だから体が岩みたいに硬いんだよ。ほれ。」

「きゃー」

「いきなり何すんだよ、テオ」

「いいじゃん、減るもんでもねぇし」

テオは、ニコニコと私を見ている兄様に近づくと、そのシャツをペラっとめくった。現れたのは見事なほどまでのシックスパック。女の子らしく棒読みの悲鳴と顔を手で隠してみたけれど、その隙間からガン見した。兄様、ちょっと触らせてもらえませんかね?

「にいしゃま、だっこー」

「ん?あぁ、おいで」

爽やかな笑顔の兄様の腕に飛び込む。そして、どさくさに紛れてその腹筋を触る。すごっ、カッチカチだ!そのまま腕や胸をペタペタと触ってみるがどこもかしこも硬かった。

「何してるの、リヴ?」

「えへへ
にいしゃま、むにむにー」

頬も硬いのかと、両手で挟んでみたら不思議そうな視線を送られたので、ヘラりと笑って誤魔化す。あ、ほっぺは普通に柔らかかったです。

「そう?リヴの方がむにむにだと思うよ」

「う?」

「あはは、餅みたいだ」

やめてー!乙女のほっぺを引っ張らないで!まだそこはむちむちなの!

「やーん」

「リヴも懐いてるみたいだし、俺たちは行くぞ。」

「あぁ。いってらっしゃい」

「リヴ様、もし何かあったら思いっきり叫んでくださいにゃー」

「コココ達がすぐに助けに行きますにゃ~」

「あい
ふたりともがんばっちぇね」

「「はいですにゃ」」

双子の頭をよしよしと撫でて、暫しのお別れをする。

「じゃあな、リヴ!
またあとでな!」

「テオ兄もがんばっちぇ」

「おうよ!」

テオとは拳を突き合わせた。

「行くぞ、双子共!」

「「にゃーん」」

「あ、お前ら武器とか使ってた?」

「基本的にその場で狩った魔物が武器だったにゃー」

「それが一番効率的にゃ~」

「わかるわかる!
わざわざ新調する必要もねぇしなー」

3人は、私に背を向けて何やら不穏な話をしながら歩いていく。もしかして、魔物って魔族の基本装備なの?私の常識がおかしいの!?

「あの3人は何変なこと言ってんだ…」

兄様が呆れたように呟いた。良かった、私の認識ズレてなかったみたい。








「グーパンで沈めるのが1番手っ取り早いのに」



兄様は、爽やかな顔して1番の脳筋でした。


























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