勇者召喚に巻き込まれた(?)私、魔族の元で華咲かす

斑鳩 鳰

文字の大きさ
26 / 26

Another side4 佐藤勇人

しおりを挟む


なんと言うか

「死んでんな」

王都に出て、最初に口から出た言葉はそれだった。
クロードの苦笑いが目に入った。

「あ、悪い」

「いいんだ、事実だから。
これでも昔は貿易都市として、とても繁栄していたんだよ」

フードの下で懐かしむように、でもとても悲しそうに目を細めるクロードに罪悪感を抱くが、そうとしか形容できなかった。

王都でありながら、人が見当たらない街並み。通り過ぎる数少ない人々はみんな人生を諦めたような目をしていた。

ああ、そう言えば勇者のお披露目パレードの時もこんな感じだったな。
俺を褒め称えるのはまるまる肥えた貴族ばかりで、市民は呆れたような迷惑そうな目を向けてきたっけな。

「これも魔族のせいなのか?」

客のいないカフェに入り、クロードに尋ねる。

「......違うよ」

返ってきたのは意外な答えだった。
クロードは口付けたカップをゆっくりとソーサーに戻すと、俺に目線を合わせた。
碧色の瞳の奥に彼の無念の情を垣間見た気がした。

「この国が貧しくなったのも全部、魔族を追い出したからなんだ」

人間を苦しませている魔族を倒すために呼ばれたはずの、俺。
しかし、目の前の人間は魔族がいなくなったから苦しくなったという。

「僕の父と母は、魔族との共存を望んだがために反魔族派の貴族たちに殺された。
今の王は僕の父上の弟にあたる人で、魔族の撲滅を望んでいる」

なるほどね。クロードは先代の忘形見ということか。
どうりで王族貴族のクロードに対する態度が冷淡で、彼には護衛すらつかないわけだ。
だが、魔族を追い出したからこそ国が疲弊したとはどういうことだ。
魔族は滅ぼすべき対象だから俺が呼ばれたんじゃないのか。
そんな俺の疑問を感じ取ったのであろう。クロードは言葉を続けた。

「僕らは人間ではない者達のことを総じて魔族と呼び差別してきた。
悪いことが起これば魔族のせいにし、討伐を試みた。
けれど、彼らはとても強かった。個々の能力が人間の何倍も優れているからね。
その能力の高さを思い知ってから、次第に彼らと戦うことをやめ共存することを望む国もでできた。
そして魔族と共存することを決意した国はどんどん発展していった。
魔族はこちらから手を出さない限り侵略してくることはないし、森の奥深くにしか生えていない薬草など非常に価値が高いものを提供してくれたんだ。
そうして交易が栄え、国はどんどん豊かになった。アーヴェスト王国なんかはその代表例だね。
それなのに、この国は王族貴族の地位が下がるのを恐れて魔族を1人残らず追い出した。
お陰さまで大陸で要を担っていた交易も他国にどんどん追い抜かれ、今では貧乏王国まっしぐらというわけさ。
他国に逃げる人も多くなって、納められる税がガクンと減った。
そのことに焦った王族貴族は、民が逃げられないようにしたあげく、彼らを助けることもせずにただ税を搾取した。
こうしてこの国の国民はどんどん疲弊していった。
今の国民はみんな王族を憎んでいるんじゃないかな。
国を支えてくれている民が目の前で苦しんでいるのに、何もしてやれない。
何が王族だよ。過去の栄光に縋って現実を見ようとしない。
ほんと無力な自分が情けなくて仕方が無いよ......」

硬く握りしめられた拳には、赤い液体がつうっと走っていた。

「そうか」

それしか言えなかった。
クロードの苦しみは良く理解できた。
けれど、申し訳ないが俺の一番の優先事項は彼女と再会すること。
見知らぬ世界で王国に身柄を確保されている今、彼女に会うためには奴らに従うしかないのだ。

「悪い。
俺はどうしても彼女に会いたいんだ。
そのためならば魔族を殺すことも厭わない」

「うん。わかっているよ。
ユウトがどれほどその人を愛しているかも。
でも、一度僕の提案を聞いて欲しいんだ」

クロードはそう言って、誰にも聞かれないように俺の耳元に顔を寄せ、提案を口にした。
それを聞いて、ニッと自分の口角があがるのを感じた。


「もちろん、君が彼女と再会するために尽力することを約束する」

「悪くねぇ。
その作戦乗った」

「本当かい⁉︎
ありがとう!」

クロードはこの国で唯一召喚したことを詫びてきた人間だ。
彼女と再会を果たすまで奴のために動いてみるのも悪くない。

俺達はその場でもう一度、硬く握手をした。

しおりを挟む
感想 23

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(23件)

伊予二名
2020.04.04 伊予二名

ノアールさんが悪いやつじゃなかったら多分この世の殆どの知性体が悪いやつじゃない気がする(・ω・)

2020.04.07 斑鳩 鳰

ありがとうございます!

彼にもいろいろあるのです😫
私が遅筆なばかりに.......
是非、彼の内側がわかるまで気長にお待ちください(><)

解除
fuyu
2020.04.03 fuyu

更新ありがとうございます😊
次回も楽しみです!
無理せず頑張ってください!!

2020.04.03 斑鳩 鳰

ありがとうございます!

明日も更新するので、是非暇つぶしに読んでください〜🥰

解除
kanotti
2019.12.12 kanotti

昨夜見つけて読み始めてはまりました。ものすごくおもしろくて一気に読んでしまいました。
リヴちゃんのかわいさはもちろん心の中の声が大爆笑です。ハクトもかわいいし、もう最高!!
これから冬本番ですのでお体お気をつけてくださいね。更新は気長に待っております。
末永く続けていただけると嬉しいです。応援しています。

2020.04.03 斑鳩 鳰

ありがとうございます!

コロナで時間ができたので、少しでも皆さんの暇つぶしになれるよう頑張って書きます!
明日もまた更新いたしますので、よろしくお願いします!

解除

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。