あいつは彼氏

町はずれのヨキョウ

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夜時の男

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コンビニに行く途中には大きな公園がある。少し規模が小さい学校のグラウンドのような感じで、日が暮れると利用者は皆無に等しい。
実はここ、大きな幹線道路を挟んだ向かい側には職安や激安飲食店がある。そのためこの公園を寝床とするホームレスが多数おり、テントを貼るものもいれば寝る時にかける物さえ持ってない者も見受けられる。ここは都心だからホームレス自体そんなに珍しい存在ではないが、こんなに集まる場所はそうそうないと聞く。

玲子がその公園の方に目をやった時、なんとなく見覚えのあるような男がいた。ボサボサの髪の毛に汚れが着いたパーカー、ボーボーのすね毛にサンダルと、自らここの住人である事を訴えるような容姿の彼は、なぜか5年前に初めて出会った彼氏──千代田亮に似ていた。

千代田君…?まさか…。



彼らの初対面は大学2年の秋だった。
20歳になったばかりの玲子は、週二のペースで飲み会に参加していた。周囲の心配する声も聞かずに、バイトや授業に支障が生じても、彼女は飲み会に明け暮れていた。
そんなある時、終電の時間が近づいてることに気付き慌てて店を出ようとした。テーブルに一人分以上の参加費のお札を叩きつけ、上着も着ずに外へ出た。べろんべろんの彼女はすれ違う人や車がはっきりと認識できない状態で駅の方向に走った。

どこかで道を誤ったのか、彼女は見慣れぬ幹線道路の側に来てしまった。しかし、反対側には目的の地下鉄の入口が見える。
ここ渡っちゃお。
交通量はそれほどでもなかったがここは片側2車線で、信号もなければ横断歩道さえない。また上下線がフェンスで仕切られてるため、駅側の道路はよく分からない。そんな所を渡るというのはあまりに危険すぎる。しかし彼女は身の安全より時間をとった。
ライトが見えないのを確認して駆け足で渡り始める。するとそこに黒いワンボックスがやってきた。車は、あろう事か無灯火のスピード違反。視界がはっきりしない彼女はこれに気付かない。

同じ頃、その駅から出てきた青年がいた。仕事帰りの彼の顔はこっぴどく叱られた後の学生のような面持ちだった。
階段を登り切った時、薄暗い道路の反対側からこちらにやってくる女性と、無灯火スピード違反の黒いワンボックスが接近してくるのに気付いた。そしてそれぞれの動きからこの後起こりうる最悪の事態が容易に想像出来た。

やばっ──

考える前に身体が先に動いた。


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