あいつは彼氏

町はずれのヨキョウ

文字の大きさ
4 / 4

深朝な男女

しおりを挟む
かくかくしかじか
亮は事細かに伝えた。誤解を招かないように、自らの正当性を誇示するようになど考える余裕は無かった。
「………」
何も返す言葉がない玲子。素直にありがとうございますと言って済む事態ではないと思った。
「あの、その、本当にご迷惑をおかけして申し訳ございません!」
「貴方の身体は大丈夫なんですか?そんな、酔っ払いのみっともない私の為に……」
「………」
亮は答える。
「僕は大丈夫です」
「僕も貴方を助けるのに他の方法があったかもしれません。ただ僕が単純なばかりに見知らぬ女の人を投げ飛ばすなんて……」
「でもそのお陰で私の命は救われました」
「そんな大袈裟な…」
「普段僕人助けとかしないので…寧ろ助けて貰ってる身なんですよ」
こと言葉に引っかかった玲子。
「助けて貰ってるとは…?」
黙り込む亮。その表情は一言で表せない程複雑だった。
「実は僕ホームレスなんです。と言うのも、5年前に起きた大地震で家族親族皆失ってしまって……」
「その後養護施設に入って、何年か経ってそこを出て就職するも上手くいかず退職。それで日雇いを続けているんです」
返す言葉がない玲子。
「今は友人や知り合いの支えを受けてなんとか飯にはありつけてるんですけどね」
余りにも辛すぎる彼の境遇にいてもたってもいられなかった。
「ねえ、うちに来ませんか?」
「えっ?」
「ご飯作りますよ」
「いや、そんな」
「そんな辛い境遇に生きる人に助けて貰ったなんて、口上のお礼で済まされるものではありません。命には命でお返しをさせて下さい!」
「………じゃあ…お言葉に甘えて…」

ふと思う。
「そう言えば、お名前も年齢も聞いていませんでしたね」
「あぁ、いや、はい」
「私は小野玲子、大学二年生です」
「千代田亮、早生まれの19歳です」
「えっ」
「えっ?」
「「同い年!」」

運命って本当に分からないなぁ
出会いを実感した小野玲子20歳、酔いは覚めてとても清々しい気分だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...