転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風

文字の大きさ
6 / 55
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

第6話「三食昼寝付きは最高だけど暇すぎる」

しおりを挟む
あぁぁぁぁーーーー暇だぁぁぁぁああ!!

夢の三食昼寝付き!お金の心配もゼロ!!最高のはずの生活!!
……と思っていたけれど、十日間も続けたらさすがに暇すぎる。

前世では、休みの日といえばジャンクフード片手にラノベを読み耽り、配信動画をエンドレス再生。
スマホをポチポチしながら気付けば寝落ち……それが定番だった。
なのに今は、それすら叶わない。

あぁぁ……読みかけのアイドルと作曲家の女子高生もの……!
二人の幸せを最後まで見届けられなかったのは、マジで一生の不覚。
……いや、死んでたわ私。

でも……待てよ。
ひょっとしてこの世界にも、普通に本ってあるんじゃ?

思い立ったが吉日。さっそく部屋付きの侍女に声をかける。

「ねぇ、本を読みたいんだけど、買いに行けたりしない?」
「屋敷内の図書館に無いものでしたら、お取り寄せの手配をいたしますが……」
「え!?図書館なんてあるの!?」

なんだよーーーー!!もっと早く教えてよーーーー!!

「どこ!?教えて!!」
「え!?お嬢様、そのお召し物では……」
「えーーー、家の中でしょ?大丈夫だって!」

図書館の存在を知った瞬間、いてもたってもいられない。
ベッドから飛び降り、ミュールを突っかけて部屋を飛び出す。

「お嬢様!お待ちください……!」
「せめて羽織物を……!」
「えぇ~~、めんどくさい~~。早く行きたいんだって!」

勢いよくドアを開け放つと、背後から侍女たちの悲痛な声が追いかけてくる。

「お嬢様、お身体が冷えてしまいます……!」
「そのままでは……どなたかにお目に留まれば……!」

あ……これ、もしかして私がちゃんとしないと、彼女たちが怒られるやつ……?
年の頃は20歳前後だろうか。
わがまま放題の私に付き従ってくれているのに、そのせいで叱られるなんて心苦しすぎる。

でも……ドレスは嫌だ!絶対に着替えたくない!!
風呂キャン勢と呼ばれようと、ネグリジェで過ごしたいんだ!!

「お嬢様……どうかケープだけでも……!」

ケープ……ケープかぁぁぁぁ……

「……まぁ、ケープくらいなら、いいけど?」

大きな両開きの扉が、重厚な音を響かせてゆっくりと開いた。
ふわりと漂ってきたのは、インクと革、そして紙が長い年月をかけて混じり合った独特の匂い。

「……うわぁ」

思わず息が漏れる。
目の前に広がるのは、まさに知の宮殿。
高い天井まで届く本棚がいくつも並び、金の縁取りが施された梯子が規則正しく掛けられている。
天窓から差し込む陽光はステンドグラスを透け、赤や青の粒子となって背表紙を照らし出す。
光に染まった本の列が、幻想的に輝いていた。

「ちょ、待って。これ……図書館ってレベルじゃなくない?いや、下手したら国立図書館よりすごい……」

圧倒的な光景に足がすくむ。
革装丁の分厚い学術書、魔導に関する古びた羊皮紙、歴史を記した年代記や緻密な地図。
さらには詩集や物語まで……まさに知の洪水だった。

なにこれ……一生籠もってても飽きないじゃん……!

震える指先で一冊を抜き取る。
ざらりとした紙の感触と共に、鼻をくすぐるインクの匂い。
ページを繰ると、見慣れぬ異世界の文字が不思議と脳に直接染み込むように理解できる。

歴史書……戦記……魔導書……
うん、確かに立派。立派なんだけど……私が求めてるのはさぁ!

両手を広げて棚から棚へと小走りで移動する。
慌てて侍女が後を追う。

「お嬢様、走ってはなりません!」
「いやいや!絶対あるでしょ!?
異世界ラノベ的な冒険譚とか!王子様との恋物語とか!絶対どっかにっ!」

目についた本を片っ端から取り出しては、ぱらぱらとめくる。
けれど出てくるのは、難解な数式や魔法陣の設計図ばかり。

「ちがーう!そういうアカデミックなのじゃなくて!」

もっと私をワクワクさせて!きゅんきゅんさせてみせろよぉぉぉ!!

半ば諦めかけた、その時。
重厚な革張りの背表紙が並ぶ棚の奥。
一角だけ、場違いなほど軽やかな装丁が目に入った。

そこだけ空気が違う。
軽そうな紙装丁の冊子がぎゅうぎゅうに押し込まれ、表紙にはキラキラしたタイトルや、剣と魔法を掲げる派手なイラスト。

『追放されたけど実は神に愛されてました?』
『悪役令嬢ですが田舎でスローライフさせてもらいます』
『異世界料理で世界を救う!』

……瞳がキラッキラに輝くのを自覚した。

「そうそう!これだよこれ!!」
「お嬢様っ!?」

叫びながら飛びつき、鼻息荒くページをめくる。

こういうのでいいんだよ、こういうので!!
えっと……これと、これと……あ、これ続き物!?
外伝まであるじゃーん!

「これ……部屋でゴロゴロしながら読みたい!!ねぇ!部屋に運んで!!」

気が付けば、侍女三人でも抱えきれないほどの冊子を積み上げていた。

「あと、もしこれ系の本、他にもあったら追加してもらえる?」

ベッド脇には、山と積まれた本。
その隣には、美味しそうなお菓子の数々。

クッキーに、パステルカラーのマカロン。
ワンハンドで食べられるサイズのタルトや、瑞々しい果物の盛り合わせ。

あぁぁぁあ!最高!!
もう一生ベッドから出られる気がしない。

欲を言えば……もうちょっと塩味のあるお菓子。
ぶっちゃけ、つまみとお酒が欲しい。
なんなら、キッチンを借りて自分で作っちゃうのもアリだよな~……なんて、にんまり考えていたその時。

「お嬢様、本日のご夕食はご一緒にと旦那様が」
「え!?」

マジか!!!

目を覚ましてからこれまで、体調優先だと自室での食事ばかりだった。
けれど、いつかは来ると思っていた。……アリエルの両親との食事。

アリエルにとっては実の両親。
だけど…私にとっては出会って10日のおじさんとおばさんなんだよな。
簡単に『親だ』と割り切れるわけがない。

「今、この本めちゃくちゃ良いところなんだけどーーーー!!」

そもそも、さんざんお菓子をつまんでしまって、もうお腹はぱんぱん。
ベッドから一歩も動きたくない。
このまま毛布にくるまって、ダラダラ寝落ちしてしまいたいのに。

「お洋服などは、軽装のドレスで……とのことです」

私の返事を待つ間もなく、侍女たちはワンピースを何着も抱えてやって来た。

……これはあれか。断ることが許されないパターンだな。
まぁ、彼女たちの雇い主は私じゃなくて両親だし、命令には逆らえないよね。

持ち込まれたドレスは、色とりどり。
しかもすべて私の体にぴったり合わせて仕立てられている。
模様も刺繍もデザインも、どれひとつとして同じものは無い。
一目で『これは一点物のオーダー品だ』とわかるような出来栄えだった。

「どちらにいたしましょうか?」

……どちらにと言われてもさぁ。
目が覚めてからずーーーーっとネグリジェ生活なんだよ?
今さら他の服に着替えるなんて、正直したくないんだよな……

だってこのネグリジェだって、めちゃくちゃ可愛いんだよ!?
毎日毎日、違うデザインが出てくるのには感心していたくらい。
レースやリボン、色合いも全部可愛くて、これで行ける気しかしない。
……ダメかな?ダメだよね?やっぱり。

「えっと……全部お任せ!で!」

観念してそう告げると、侍女たちはすぐにお風呂の支度を始めた。

この『徹底したお世話』だけは、ダラダラ生活に慣れた今でも全然慣れない。
花びらを浮かべた広い湯船に浸かり、身体の隅々まで磨かれ、香油を丁寧に塗り込まれる。
最初は『エステ気分で最高!』って思ってたけど……もうそろそろ一人で本でも持ち込んで半身浴したいんだが!?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

処理中です...