97 / 100
六章 黒衣の守護者
97話
しおりを挟む
太陽が昇り切った時刻に里を出て、山林で日暮れを待つ。
そして太陽が山脈に隠れる頃合いを見計らって、俺達は荒野へと飛び出した。
エルグランドから魔族が支配する地域にかけては、荒涼とした荒野が広がっていた。
元々は農耕が盛んな土地だったらしいが、魔族の進行によって荒らされ、こうなってしまったのだという。
見れば所々に争いの跡が見て取れる。中には打ち捨てられた死体も転がっていた。
そんな、緑すら残らない荒れ果てた大地を駆け抜け、目的の場所へとたどり着く。
遠目からは、地形の起伏に隠れてその全貌を見て取れない。
しかし近づいてみれば、それが明らかに自然の地形ではないことが見て取れた。
無理やり大地を掘り返して作られた、魔族の前線基地。
その証拠に、周辺には何人もの魔族が見回っていた。
ただ、俺の能力はこう言った奇襲に関して言えば、他の追随を許さない。
「共鳴転移!」
風切羽が視線の先の魔族を貫き、一瞬の間に命を奪いさる。
そして倒れる音をかき消すため、遺体ごと別の場所へと転移させる。
そこに魔族がいた痕跡すら残さずに次々と見張りを排除していく
そんな一連の流れを背後で見守っていたベルセリオが感嘆の声を上げた。
「こんなに凶悪な魔法だったのですね、転移魔法とは」
「普通の転移魔導士ではこうはいかぬがな」
振り返れば、一瞬だけビャクヤと視線が交わる。
しかしすぐに彼女は視線をそらし、前線基地の方へと向けてしまう。
見ればアリアからも非難の視線を向けられていた。
あの一件以来、ビャクヤとはうまく会話できていない。
互いに謝罪をしたのだが、俺達の間には明確な溝が生まれていた。
それに、アーシェなら俺を説得できたのだろうか。
そんなビャクヤの一言が、深く心の奥底に刺さったままだった。
アーシェは現在、大勢を救う為に勇者と行動を共にしている。
であれば今回も大勢を救う為に、ビャクヤ達と同じ判断を下したかもしれない。
里の危険を知りながらも、あえてベルセリオには伝えないということも考えられた。
もしも、そうなったら。
アーシェと意見が割れたならば、どうなっていたか。
俺はそのことに反対しただろうか。
自問自答をしても、答えは出ない。
だが、この場所にいない人物の事を考えても仕方がない。
今は目の前の問題に注力すべきだと、思考を無理やりにも切り替える。
それが卑怯な逃げだと知りながら。
「それじゃあ、事前の作戦通り動いてくれ。 俺もなるべく見つからずに行動するが、中で派手に暴れ始めたら三人もそれぞれ手はず通り仕掛けてくれ」
「できるだけ静かに行動しなさいよ」
「目的の物が見つかるまでは、善処する」
事前に打ち合わせた作戦は、至ってシンプルな物だった。
最初に隠密行動に長ける俺が内部へ侵入して、魔素があるかを捜索する。
そして捜索が終わった後に魔族への攻撃を始める。
それと同時にアリアの人形で攻撃を仕掛け混乱を招いたあと、ビャクヤとベルセリオが飛び込む。
目的は殲滅、と言う訳ではない。
そのためにも奇襲を仕掛けて、できるだけの損害を出させる必要がある。
欲を言えば魔族側の指揮官を打ち取りたいが、高望みはしない。
今回はこの前線基地から魔族を撤退させれば俺達の勝利なのだから。
◆
「これが、魔族の前線基地か。 想像以上だな」
何度も転移を繰り返して、基地の内部を捜索する。
俺達が攻め込んだタイミングで魔素をばら撒かれてしまえば、元も子もない。
その為、魔素があるかどうかの捜索は絶対に外せなかった。
ただ一つ問題があるとすれば、想像以上に基地が広いということだ。
大勢の魔族がせわしなく行き来する内部では、安易に地面へ降りての捜索ができない。
そこで一気に基地の最奥へと向かい、巨大な建物の屋根へと転移する。
「まだ、魔素は運び込まれていないのか?」
高所から見回しても、それらしい物は見当たらない。
倉庫などもなく物資は外で煩雑に積み上げられているだけだ。
物資の山を遠めに見ても魔結晶などは確認できない。
しかし、一か所だけ焚き木などがない区域が存在した。
それも殆どの魔族がその場所に近づこうとさえしない。
「まさか、あの場所か?」
不審に思い、転移してその場所へと近づく。
細心の注意を施し、足音も消して周辺の探索に移る。
だが、月明りさえない暗闇の中から、声が響いた。
「よう、そこの人間。 なに急いでるんだ?」
「っ!?」
とっさに転移魔法で、声から距離を取る。
だが、見えるのは暗闇だけ。
声の主の姿は全くと言っていいほど、見て取れない。
それでも声は徐々に大きくなる。
「知ってるぜ? この魔結晶を狙いに来たんだろ?」
「お前、使徒か」
「使徒? いいや、そりゃ誰のことだ? 俺はここを狙いに来る人間を殺せって命令されてるだけだ」
その瞬間。
一気に暗闇が引き裂かれた。
暗闇の中にあった巨大な松明が炎を灯したのだ。
壁際には荷車に乗せられた大量の魔結晶。
そしてその荷馬車を背中にした声の主の姿がさらされる。
相手は、間違いなく魔族だ。
だが外を歩いている魔族とは決定的に違う部分があった。
見上げるほどの巨体でもなければ、悪魔の様な風貌でもない。
どちらかと言えば、見た目は人間に近かった。
魔族特有の威圧感もなければ、恐怖心を煽られるわけでもない。
それでも侮れない相手と言うのは、一目で見て取れた。
少なくない俺の戦いの経験から、本能が激しく警鐘を鳴らしている。
両の手に握った剣を打ち合わせた魔族は、口元に獰猛な笑みを浮かべて、牙をむく。
「魔族連隊筆頭戦士、ガルドニクスが相手だ。 悪いがお前には、死んでもらうぜ?」
◆
かつて勇者は多くの種族の英雄と共に魔王を討った。
だが考えてみれば、おかしな話だった。
魔族という単一種族の殲滅の為に多くの種族が立ち上がったのであれば、もっと簡単に決着がついてもおかしくはない。
俺も勇者の英雄譚を聞いたときにはそう考えた物だった。
しかしそれが間違いだったと、遅れながらに理解する。
魔族と言うのは、ほかの種族を凌駕するだけの能力を有しているのだ。
それこそ、ほかの種族をすべて敵に回してでも、圧倒できるほどの能力を。
「おらおらどうした! その程度かよ!」
その叫び声は、目前から聞こえていた。
いくら距離を取ろうとも、いくら攻撃をしようとも、一瞬で距離を潰される。
その体の頑強さと、魔族ゆえの身体能力の高さの前に、攻略の糸口を探し出せずにいた。
「共鳴転移!」
風切羽が、ガルドニクスの死角から飛来する。
しかし俺の予備動作を見切っていたのか。
ガルドニクスは視線を向けるまでもなく、風切羽の一撃を回避した。
「ぬるいぜ!? 人間!」
「く、空間転移!」
瞬間的に迫りくるガルドニクスから逃れるために、転移魔法で一気に距離を引き離す。
それでも気付けば、ガルドニクスはすぐ目の前まで迫っていた。
しかし俺を一気に仕留める気はないのか、退屈そうに剣を打ち鳴らす。
「珍妙な技を使うみてぇだが、それまでだ。 動きを見てればわかる。 お前は魔法に頼りっぱなしで剣の腕は下の下だな。 少なくとも、剣士を名乗れる技量じゃねぇ」
「それは俺が良く知ってるさ」
「ほう?」
「俺には俺の戦い方って物があるんでな」
瞬時に理解した。
ガルドニクスは俺では到底及ばない高みにいる戦士だ。
正面から剣で斬りあっても、勝機などありはしない。
であれば戦い方を変える必要がある。
ガルドニクスの言う通り、俺は剣士ではない。
転移魔法を操る、魔導士なのだから。
「なら来いよ! 全力を打ち砕き、その上で乗り越える! このガルドニクスがな!」
「悪いが早々に決着をつけさせてもらうぞ」
視界が暗転、そして視界が開けたと同時に、ガルドニクスの背中へ切りかかる。
しかし、刃は届かず、ガルドニクスの剣に阻まれて火花を散らす。
不意打ちに近い形であっても、ガルドニクスは見事に読み切っていた。
さすがは筆頭戦士。
だが、その次の行動はどうやら読めなかった様子だった。
俺の一撃を受け止めたガルドニクスの剣が、一瞬にして虚空へ消える。
「て、てめぇ!? 俺の剣を!」
「剣士として敵わないなら、剣を奪えばいい。簡単な話だ」
いくら魔族と言えども、切れ味鋭いワイバーンウェポンを素手で防ぐことはできない。
そして剣で防ごうとしても俺の転移魔法によって、剣を別の場所に転移させてしまえばいい。
優れた剣士であるならば、その剣を奪ってしまえばいいのだ。
卑怯と言われようとも確実な勝利を手に入れられるのであれば、手段は択ばない。
初めて狼狽したガルドニクスを前に、剣を構えなおす。
この魔族を倒せば魔素を別の場所に移動させられる
そうすれば、少なくとも戦場に魔素をばら撒くという使徒の思惑を潰すことができるのだ。
だが、大きすぎる火の手が夜の空を照らし出した。
続けざまに気勢が反響する。
魔族の声ではない。もちろん、ベルセリオやビャクヤでもない。
「まさか、エルグランドの軍勢か!?」
最悪のタイミングだった。
よりにもよって、俺達と襲撃が重なるとは。
しかし目の前のガルドニクスは、たまらずといった様子で笑い声を上げた。
「はは、はははははは! こりゃ良いぜ! いっそう、戦争染みてきやがった!」
「馬鹿な! このままだと全員死ぬぞ! その魔結晶の中身が何か、知ってるのか!?」
「戦士の俺が知るわけねえだろそんなこと!」
ガルドニクスは、あっさりと切り捨てる。
そこでガルドニクスの性格の一端を垣間見る。
俺が襲ってきた意味や、なぜ自分が魔結晶を守っているのか。
そういった理由など、ガルドニクスには些細な問題なのだろう。
戦士である以上、戦うことが役目であり、本懐である。
その純粋な思考こそが、ガルドニクスを高位の戦士たらしめているに違いない。
ガルドニクスは火の手が上がる様子を見て、血濡れの姿で高らかに笑った。
「だが戦争は殺し合いが正当化される唯一の場所だ! そこで全員死ぬなら、それも一興だろうよ!」
そして太陽が山脈に隠れる頃合いを見計らって、俺達は荒野へと飛び出した。
エルグランドから魔族が支配する地域にかけては、荒涼とした荒野が広がっていた。
元々は農耕が盛んな土地だったらしいが、魔族の進行によって荒らされ、こうなってしまったのだという。
見れば所々に争いの跡が見て取れる。中には打ち捨てられた死体も転がっていた。
そんな、緑すら残らない荒れ果てた大地を駆け抜け、目的の場所へとたどり着く。
遠目からは、地形の起伏に隠れてその全貌を見て取れない。
しかし近づいてみれば、それが明らかに自然の地形ではないことが見て取れた。
無理やり大地を掘り返して作られた、魔族の前線基地。
その証拠に、周辺には何人もの魔族が見回っていた。
ただ、俺の能力はこう言った奇襲に関して言えば、他の追随を許さない。
「共鳴転移!」
風切羽が視線の先の魔族を貫き、一瞬の間に命を奪いさる。
そして倒れる音をかき消すため、遺体ごと別の場所へと転移させる。
そこに魔族がいた痕跡すら残さずに次々と見張りを排除していく
そんな一連の流れを背後で見守っていたベルセリオが感嘆の声を上げた。
「こんなに凶悪な魔法だったのですね、転移魔法とは」
「普通の転移魔導士ではこうはいかぬがな」
振り返れば、一瞬だけビャクヤと視線が交わる。
しかしすぐに彼女は視線をそらし、前線基地の方へと向けてしまう。
見ればアリアからも非難の視線を向けられていた。
あの一件以来、ビャクヤとはうまく会話できていない。
互いに謝罪をしたのだが、俺達の間には明確な溝が生まれていた。
それに、アーシェなら俺を説得できたのだろうか。
そんなビャクヤの一言が、深く心の奥底に刺さったままだった。
アーシェは現在、大勢を救う為に勇者と行動を共にしている。
であれば今回も大勢を救う為に、ビャクヤ達と同じ判断を下したかもしれない。
里の危険を知りながらも、あえてベルセリオには伝えないということも考えられた。
もしも、そうなったら。
アーシェと意見が割れたならば、どうなっていたか。
俺はそのことに反対しただろうか。
自問自答をしても、答えは出ない。
だが、この場所にいない人物の事を考えても仕方がない。
今は目の前の問題に注力すべきだと、思考を無理やりにも切り替える。
それが卑怯な逃げだと知りながら。
「それじゃあ、事前の作戦通り動いてくれ。 俺もなるべく見つからずに行動するが、中で派手に暴れ始めたら三人もそれぞれ手はず通り仕掛けてくれ」
「できるだけ静かに行動しなさいよ」
「目的の物が見つかるまでは、善処する」
事前に打ち合わせた作戦は、至ってシンプルな物だった。
最初に隠密行動に長ける俺が内部へ侵入して、魔素があるかを捜索する。
そして捜索が終わった後に魔族への攻撃を始める。
それと同時にアリアの人形で攻撃を仕掛け混乱を招いたあと、ビャクヤとベルセリオが飛び込む。
目的は殲滅、と言う訳ではない。
そのためにも奇襲を仕掛けて、できるだけの損害を出させる必要がある。
欲を言えば魔族側の指揮官を打ち取りたいが、高望みはしない。
今回はこの前線基地から魔族を撤退させれば俺達の勝利なのだから。
◆
「これが、魔族の前線基地か。 想像以上だな」
何度も転移を繰り返して、基地の内部を捜索する。
俺達が攻め込んだタイミングで魔素をばら撒かれてしまえば、元も子もない。
その為、魔素があるかどうかの捜索は絶対に外せなかった。
ただ一つ問題があるとすれば、想像以上に基地が広いということだ。
大勢の魔族がせわしなく行き来する内部では、安易に地面へ降りての捜索ができない。
そこで一気に基地の最奥へと向かい、巨大な建物の屋根へと転移する。
「まだ、魔素は運び込まれていないのか?」
高所から見回しても、それらしい物は見当たらない。
倉庫などもなく物資は外で煩雑に積み上げられているだけだ。
物資の山を遠めに見ても魔結晶などは確認できない。
しかし、一か所だけ焚き木などがない区域が存在した。
それも殆どの魔族がその場所に近づこうとさえしない。
「まさか、あの場所か?」
不審に思い、転移してその場所へと近づく。
細心の注意を施し、足音も消して周辺の探索に移る。
だが、月明りさえない暗闇の中から、声が響いた。
「よう、そこの人間。 なに急いでるんだ?」
「っ!?」
とっさに転移魔法で、声から距離を取る。
だが、見えるのは暗闇だけ。
声の主の姿は全くと言っていいほど、見て取れない。
それでも声は徐々に大きくなる。
「知ってるぜ? この魔結晶を狙いに来たんだろ?」
「お前、使徒か」
「使徒? いいや、そりゃ誰のことだ? 俺はここを狙いに来る人間を殺せって命令されてるだけだ」
その瞬間。
一気に暗闇が引き裂かれた。
暗闇の中にあった巨大な松明が炎を灯したのだ。
壁際には荷車に乗せられた大量の魔結晶。
そしてその荷馬車を背中にした声の主の姿がさらされる。
相手は、間違いなく魔族だ。
だが外を歩いている魔族とは決定的に違う部分があった。
見上げるほどの巨体でもなければ、悪魔の様な風貌でもない。
どちらかと言えば、見た目は人間に近かった。
魔族特有の威圧感もなければ、恐怖心を煽られるわけでもない。
それでも侮れない相手と言うのは、一目で見て取れた。
少なくない俺の戦いの経験から、本能が激しく警鐘を鳴らしている。
両の手に握った剣を打ち合わせた魔族は、口元に獰猛な笑みを浮かべて、牙をむく。
「魔族連隊筆頭戦士、ガルドニクスが相手だ。 悪いがお前には、死んでもらうぜ?」
◆
かつて勇者は多くの種族の英雄と共に魔王を討った。
だが考えてみれば、おかしな話だった。
魔族という単一種族の殲滅の為に多くの種族が立ち上がったのであれば、もっと簡単に決着がついてもおかしくはない。
俺も勇者の英雄譚を聞いたときにはそう考えた物だった。
しかしそれが間違いだったと、遅れながらに理解する。
魔族と言うのは、ほかの種族を凌駕するだけの能力を有しているのだ。
それこそ、ほかの種族をすべて敵に回してでも、圧倒できるほどの能力を。
「おらおらどうした! その程度かよ!」
その叫び声は、目前から聞こえていた。
いくら距離を取ろうとも、いくら攻撃をしようとも、一瞬で距離を潰される。
その体の頑強さと、魔族ゆえの身体能力の高さの前に、攻略の糸口を探し出せずにいた。
「共鳴転移!」
風切羽が、ガルドニクスの死角から飛来する。
しかし俺の予備動作を見切っていたのか。
ガルドニクスは視線を向けるまでもなく、風切羽の一撃を回避した。
「ぬるいぜ!? 人間!」
「く、空間転移!」
瞬間的に迫りくるガルドニクスから逃れるために、転移魔法で一気に距離を引き離す。
それでも気付けば、ガルドニクスはすぐ目の前まで迫っていた。
しかし俺を一気に仕留める気はないのか、退屈そうに剣を打ち鳴らす。
「珍妙な技を使うみてぇだが、それまでだ。 動きを見てればわかる。 お前は魔法に頼りっぱなしで剣の腕は下の下だな。 少なくとも、剣士を名乗れる技量じゃねぇ」
「それは俺が良く知ってるさ」
「ほう?」
「俺には俺の戦い方って物があるんでな」
瞬時に理解した。
ガルドニクスは俺では到底及ばない高みにいる戦士だ。
正面から剣で斬りあっても、勝機などありはしない。
であれば戦い方を変える必要がある。
ガルドニクスの言う通り、俺は剣士ではない。
転移魔法を操る、魔導士なのだから。
「なら来いよ! 全力を打ち砕き、その上で乗り越える! このガルドニクスがな!」
「悪いが早々に決着をつけさせてもらうぞ」
視界が暗転、そして視界が開けたと同時に、ガルドニクスの背中へ切りかかる。
しかし、刃は届かず、ガルドニクスの剣に阻まれて火花を散らす。
不意打ちに近い形であっても、ガルドニクスは見事に読み切っていた。
さすがは筆頭戦士。
だが、その次の行動はどうやら読めなかった様子だった。
俺の一撃を受け止めたガルドニクスの剣が、一瞬にして虚空へ消える。
「て、てめぇ!? 俺の剣を!」
「剣士として敵わないなら、剣を奪えばいい。簡単な話だ」
いくら魔族と言えども、切れ味鋭いワイバーンウェポンを素手で防ぐことはできない。
そして剣で防ごうとしても俺の転移魔法によって、剣を別の場所に転移させてしまえばいい。
優れた剣士であるならば、その剣を奪ってしまえばいいのだ。
卑怯と言われようとも確実な勝利を手に入れられるのであれば、手段は択ばない。
初めて狼狽したガルドニクスを前に、剣を構えなおす。
この魔族を倒せば魔素を別の場所に移動させられる
そうすれば、少なくとも戦場に魔素をばら撒くという使徒の思惑を潰すことができるのだ。
だが、大きすぎる火の手が夜の空を照らし出した。
続けざまに気勢が反響する。
魔族の声ではない。もちろん、ベルセリオやビャクヤでもない。
「まさか、エルグランドの軍勢か!?」
最悪のタイミングだった。
よりにもよって、俺達と襲撃が重なるとは。
しかし目の前のガルドニクスは、たまらずといった様子で笑い声を上げた。
「はは、はははははは! こりゃ良いぜ! いっそう、戦争染みてきやがった!」
「馬鹿な! このままだと全員死ぬぞ! その魔結晶の中身が何か、知ってるのか!?」
「戦士の俺が知るわけねえだろそんなこと!」
ガルドニクスは、あっさりと切り捨てる。
そこでガルドニクスの性格の一端を垣間見る。
俺が襲ってきた意味や、なぜ自分が魔結晶を守っているのか。
そういった理由など、ガルドニクスには些細な問題なのだろう。
戦士である以上、戦うことが役目であり、本懐である。
その純粋な思考こそが、ガルドニクスを高位の戦士たらしめているに違いない。
ガルドニクスは火の手が上がる様子を見て、血濡れの姿で高らかに笑った。
「だが戦争は殺し合いが正当化される唯一の場所だ! そこで全員死ぬなら、それも一興だろうよ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~
名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」
「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」
「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」
「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」
「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」
「くっ……」
問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。
彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。
さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。
「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」
「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」
拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。
これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる