うるさい彼女と静かな僕

Kaito

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#19

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#19

文化祭準備も佳境に差し掛かり、いよいよ三日後が本番だ。

「いい感じだね!」

後ろから結花が僕の肩を軽く叩きながら言う

「楽しみだな」

二人きりの会話を楽しみながらの帰り道。

「私のメイド服姿楽しみ?」

「まっ、まぁ..」

「もう!素直に楽しみって言いなよ!!」

結花は頬を少し膨らませながら和希の背中を軽く叩いた。



そして迎えた文化祭当日。二日間に渡って開催され、生徒はもちろんのこと保護者や生徒の違う学校の友達、学校見学を兼ねてきた中学生など、たくさんの人で溢れかえる。

「いらっしゃいませ!ご主人様!」

女子達がメイド服を着て接客や受付をしている。男子達は基本的に裏で注文がきた料理を作っている

楽しくやっていると

「きゃっ!」

声が聞こえて慌てて見に行くと落とした料理と怯えた様子の結花がいた

「結花、大丈夫か?」

結花は何も言わずに首を横に振った

落ち着かせようと肩に触れると

「やめてっ!」

和希の手を振り払った

「ごめん.....大丈夫だから」

我に返ったように謝った。でもその様子は大丈夫そうではなかった

「ほっといて」

それだけ言い残して結花は教室から走り去ってしまった。

あまりにも突然の出来事に頭が追いつかない、周りにいた人達も同じだった。

でも原因はすぐにわかった。今僕の前にいる結花が接客していたお客さん。

「お客様どうかなさいましたか?」

質問をすると

「ちっ」

一人が舌打ちをして帰っていった。

「和希、ちょっと良い?」

人がいない所まで行って話を聞いた

「あの人達、小学生の時に結花を苛めてた人達だよ」

それを聞いて漸くあの状況を理解した。

「結花を探しに行ってくる」

和希も教室から走り出した

結花行きそうなところなんて簡単に想像がつく。


ガシャ!

「やっぱりここか」

思いっきりドアを開けて走って荒れた呼吸を整えながら結花に近づく

「来ないで!」

叫び声に思わず一歩足を引いた

「今は..独りにして」

掠れた声で結花は言う

「わかった」

和希はそれ以上は何も言わず、近づかなかった。


10分くらい経った頃だろうか、座り込んでいた結花が体を起こした

手に持っていた物を見て和希は居ても立っても居られずに結花に向かって走り出した

「やめろ!」

結花の手首を掴んだ。その衝撃で手に持っていたカッターを落とした

「やめて!」

和希の頬を勢い良く叩いた音が響いた。

「もう、無理だよ」

膝から崩れ落ちて地面に両手をついた

「大丈夫だ、安心しろ」

結花を落ち着かせようと声を掛けるも

「何度やっても無理だった!」

却って逆効果になってしまう

「今まで何度も"大丈夫、私は生きてて良いんだ"って自分に言い聞かせてきた。でも結局ダメだった」

和希は何も言えなかった

「ねえ和希、私もう死んで良いかな?生きてても皆んなに迷惑掛けるだけだし死んだ方が良いよね、皆んなそれを望んでるよね」

どんなふうに話せば良いのか分からずにその場に立ちすくむ

「やっぱり和希もそう思ってるよね」

結花は落としたカッターを拾い上げて限界まで刃を出して首に突き立てるように持ち近づけた。

刃の先端がほんの少し首に触れた時

「ダメ!!!」

背後から雪奈の声が聞こえて正気を取り戻した。

雪奈は結花の目の前まで近づいて頬を引っ叩いた

「何やってるの!」

雪奈は怒りを抑えられずにいた。結花は黙り込んだまま叩かれて少し赤くなった頬に触れた

「勝手に死のうなんて思うな!」

「私の勝手でしょ!」

漸く開かれた結花の口から出た言葉に心が痛んだ

「今すぐそのカッターを捨てろ!」

雪奈は結花の手首を掴んでカッターを振り払おうとするも強く握り締めた手が開くことはなく。暴れる結花とそれを抑えようとする雪奈

「痛いっ」

結花から手を離して数歩後ろにさがった。見ると両手で左頬を押さえている

頬と手の隙間から血が流れていた。結花の手にあるカッターには同じ血がついていた

「やめろ!結花!」

和希も止めようとするも結花は何も言わない。

「どうして...どうして..?本当の結花はそんなんじゃないよ.....」

それを聞いた結花は徐に和希に向かって歩き出した。目の前まで来ると、俯いたままカッターを和希に渡して、そっと握らせた。

「私を殺して」

俯いていてよく見えないが、結花は涙を流している

「そんなことできない」

「殺して」

その言葉しか言わない結花

「私は大丈夫だから...」

雪奈がそう言うも結花は何も変わらない。


「ふざけるな..!」

和希は握らされたカッターを地面に叩きつけるように投げ捨てた

「みんな結花のことが大好きで、大切で...だから」

「死なないでって言うつもり?」

遮るように発せられた言葉に和希は動揺した

「小学生の時に苛められた事がトラウマで、高校生になっても不意に思い出して涙が止まらない...おかしいよね、馬鹿らしいよね」

結花は和希にそっと抱きついた。和希の胸に顔を疼くめて話す

「自分のことが大嫌いで..死にたい気持ちが消えたことはなかった。きっとこれからもそう」

「僕が消してやる」

その言葉と同時に和希も結花を抱きしめた。結花の抱きしめる力も少し強くなった。

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