異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女

養う事を決意する

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 今、俺の脚には幼女が二人、がっちりとしがみ付いている。
 正直な話、理解が追いついていない。

 ついさっきまで、二人に襲いかかった魔物を瞬殺して、血抜きして、今日は熊鍋だな~なんて呑気に考えていた。
 その直後にこれだ。
 細い腕がふるふると震えながら、俺の脚にしがみ付いている。

 純真無垢な四つの眼が、まっすぐ俺に突き刺さる。

 ――助けて。――行かないで。――ここにいて。

 そんな言葉が聞こえてきそうな、必死で縋る瞳だった。

 ……やめろっ! 俺をそんな目で見るな……!

 そんな事されたら――この二人が捨て子なら――養うしかないじゃないか!

「仕方ないな」

 口から漏れた言葉は、観念にも似たため息混じりの一言だった。

 これも運命か……。

 俺は腕をスッと降ろし、幼女二人の頭にそっと手を置いて、ゆっくりと優しく頭を撫でた。
 突然頭に触れられたせいか、二人はびくっと肩を竦めたが、すぐに撫でられていることに気づいたようだ。

 固くこわばっていた肩の力が抜け、表情がふにゃりと溶ける。

 にへぇー、と破顔して笑い、二人とも俺の太ももに頬をこすりつけてきた。

 ……お前らは猫か。

 細い頬が擦れる感触と、くすぐったさと、胸の奥がじんわり温かくなる感覚。
 この子たちが一人で生きていけるまで育てよう――と決意した瞬間でもあった。

「よし! お前ら、今日はご馳走だぁー!」
「「――――!」」

 言葉は通じていないはずだが、俺の声の調子や雰囲気で何かを察したのか、
 二人はぱっと顔を輝かせて、小さく声を上げた。

 熊の死体を魔法で浮かし、拠点に向けてすいっと飛ばす。
 空中を泳ぐように運ばれていく黒い巨体は、知らない奴が見たらホラーだろう。

 二人は雰囲気で俺の言っていることが伝わったのか、器用にしがみ付いたまま、前に突き出した手でポーズを決めている。
 何のポーズなのかは分からないが、テンションが高いのだけは伝わる。

 ……俺の腰に巻いてる布は落とさないでね、教育によろしくないブツが晒されちゃうから。
 お願い、引っ張らないで。

 俺が動き出すと、幼女たちは本能的にそれを察したのか、腰布を引っ張るのをぴたりと止めた。
 とはいえ、この状態で歩くのは色々と危険なので、二人を俵担ぎにして拠点に向かう事にした。

「――!」
「――――!」

 肩にひょいと担ぎ上げると、二人はくすぐったそうに、そして嬉しそうに短く笑った。
 小さな手が俺の肩や頭にちょこんと添えられ、そこから伝わる体温がなんともくすぐったい。

 自然と俺の頬も釣りあがって、笑顔になる。

 この二人が捨て子であろうと、世間から拒絶された存在であろうと、内に膨大な魔力を秘めていようが関係ない。

 今日から俺の娘だ。

 そう決めたならば、やることをやらないとな。

 二人の魔力の波長を感知して、ゆっくりと流動させる。
 魔力を体外に放出しておかないと、この世界に来た時の俺みたいに爆発四散してしまうからな。

 意識を深く沈め、二人の体内にある「魔力の海」に指先で触れるように意識を集中する。
 そこから、余剰分を外へ導くように、優しく、慎重に魔力の流れを整えていく。

 ……波長を感知するときに分かったんだが、二人の魔力、多いな。

 俺がこの世界に来た時のを十とすると、その一億倍ぐらいはくだらないだろう。

 常識的に考えれば、即座に爆発してもおかしくない量だ。

 だから、魔力の排出無しでも生きていられたのか。
 ただ、ここの魔力が濃すぎるから、放っておけば三十分も持たないだろう。

 助けられて良かった……。

 そんなことを考えていると、白髪――いや、銀髪の子の方が、何かを訴えかけるかのように小さな拳で俺の背中をぽすぽすと叩いてきた。

 ……俵担ぎが苦しいのだろうか?

 やや体勢を変えて、銀髪の子を肩に座るような感じに移動させると、気に入ったのか、こつんと俺の頭にもたれかかってきた。
 むにっと頬が頭頂部に当たって、ちょっとくすぐったい。

 俵担ぎのままの翠髪の子の方を見ると、無言で訴えかけてくるような視線が突き刺さった。

 ……ああ、うん。自分もそうしてほしいのだろうな。

 同じように肩に座るような感じにすると、翠髪の子も真似をするように、同じく俺の頭にもたれかかった。

 ――このまま寝たりしないよな……?

 両肩に幼女、頭の両サイドにはふにふにほっぺ。
 バランスを崩されたら、俺の首が先に逝きそうだ。

◇ ◇ ◇

 家に着いたので、二人をそっと下に降ろす。

 降ろした途端、幼女たちは再び俺の足にしがみついて、するすると登ってこようとしたので、
 手で頭を押さえて、膝より上に登れないようにストップをかける。

「そこまで。膝上は有料席だからな」

 もちろん伝わってはいないが、軽口を叩きながら、俺は足に幼女を装備しながら――少しばかり――いや、非常に歩きにくい状態で扉を開ける。

 中は木造建築で、落ち着いた感じの部屋だ。
 木の香りがほんのりと鼻に届き、長年住み慣れた拠点特有の安心感が胸に広がる。

 床には、二百年ぐらい前に狩った異様に強かった犬野郎の毛皮が敷いてある。
 すっごいもふもふで、二百年経った今でも毛並みが落ちず、汚れもしていない。すごい。

 まあまあ強かった記憶がある。
 当時はそれなりに苦戦したはずなのに、今では「まあまあ」で済むあたり、俺の成長もなかなかだ。

「今日からここが二人の家だぞ」

 そう幼女たちに告げると、幼女たちは――足にしがみついたまま――こてんと首を傾げた。

 自分たちが捨てられ、拾われたことを知っているかのような、どこか不思議そうな目だ。

 すると銀髪の方の幼女が、足から離れて犬畜生の毛皮を触りに行った。

 しゃがんで手を置いて、もふもふを確かめているようだ。
 小さな指が毛並みを撫でるたびに、もふっ、と音が聞こえてきそうなほど気持ちよさそうにしている。

「――――――!」

 目からキラキラと効果音が出そうなくらい、そのもふもふ感を実感したのだろう。
 瞳を輝かせながら、毛皮に頬ずりし始めた。

 翠髪の幼女が、向こうに行きたそうにこちらを見ている。
 目だけで「行ってもいい?」と聞いているのが分かる。

「好きに遊んでいいんだぞ」

 そう声をかけると、翠髪の幼女はこくりと頷き、銀髪の幼女の元へと駆けて行った。

 あれ? もしかしなくても俺の言葉伝わってる?
 俺が向こうの言葉を理解できてないだけ??

 なぜ言葉が理解できないのか悩んでいると、さっきまで騒がしかった幼女たちの声が聞こえなくなった。

 何事かと思って前を向いたら、二人とも大の字になって寝ていた。
 毛皮の上で、全身を投げ出して、幸せそうにすーすーと寝息を立てている。

 寝顔マジ天使。

 銀髪の子は口を少し開けて、ほっぺたはほんのり桜色。
 翠髪の子は眉をゆるく下げて、微笑んでいるような表情で眠っている。

 このまま二千年くらい寝顔を拝んでいたいが、そうは問屋が卸さないだろう。

「よーし、美味しいご飯作っちゃうぞー」

 ぽん、と両手を打ち鳴らして、自分に気合を入れる。

 二人には、もうちょっと肉付きが良くなってほしい。
 幼女といったらプニッとした感じが一番だと思う、異論は認める。

 可愛いを通り越してリアル天使な娘たちに、栄養満点の料理を作るべく、
 俺は冷蔵庫――といっても、魔法で冷却状態を保っている箱だが――の中身を見て、今日の献立を考え始めた。

 ふむ……。
 あの熊を狩った時は、熊鍋でいいかと思ったけれども、初めての食事が鍋ってのもなぁ……。

 そうだ、ハンバーグにしよう。

 子供は皆ハンバーグが好きなはずだ。俺も好きだった。

「熊肉をふんだんに使ったゴロゴロハンバーグだな」

 浄化で手を綺麗にして、ハンバーグのタネを作る準備をする。

 外の空間魔法で拡張して、時属性魔法で時間を止めてある倉庫にぶち込んだ熊を、
 魔法で操り、ひき肉と小さなブロック状の肉にする。

 ゴロゴロってのは、肉の塊がゴロゴロしているって感じをイメージしてみた。

 ボウルの中で、ひき肉と具材をこねる。
 指の間からむにむにと肉が逃げる感触が、不思議と心を落ち着かせてくれる。

 順調にハンバーグのタネができてきたので、フライパンに魔力を流す。
 これは俺が錬金術で作った魔導加熱式フライパンだ。

 流した魔力に応じてフライパンが温まる最高傑作である。
 焼き過ぎの心配も、火加減調整もいらない優れものだ。

 そこに油を引いて、形を整えたハンバーグのタネを乗せる。

 じゅわぁ、と肉の焼ける心地の良い音が聞こえてくる。

 肉の焼ける音って犯罪的だよね、わかる。
 耳だけで腹が減ってくる。

 魔法を駆使して、肉汁が外に漏れでないように中で留める。
 表面だけこんがり、中はふっくらジューシーを目指して、火加減――というか魔力加減を微調整する。

 肉の焼ける美味しい匂いが部屋中に拡散される。
 少しだけ甘く、香ばしいその匂いに、俺の胃袋も本気を出し始めた。

 良い感じの焼き加減になってきたので、ひっくり返す。

「あー……腹減るな、これ」
「「――!」」

 いつの間にか起きていた幼女二人が、俺の腰布を掴んでこくこくと頷いている。

 かわいい。

 俺の顔を見るのに上を向かないといけないので、必然的に上目遣いになっているのが、もう最高に堪らん。

「もうすぐできるからテーブルの前で待っててくれ」
「「――――!」」

 満面の笑みで両手を挙げて、わたわたとテーブルの近くに行った。
 幸いにも椅子は四つあるため、人数的な問題はない。

 焼ける音が変わり始めたので、ハンバーグをフライパンから離し、ソース作りに取り掛かった。

 単純にデミグラスソースでいいだろう。シンプルイズベストだ。
 あまり凝ったものを作るより、定番の方が子供には喜ばれる。

 ソースも作り終わったので、皿に移して盛り付けをする。

 別の皿に炊きたての白米をこんもりと乗せて、二人のハンバーグには小さな旗を刺す。

 取り合いにならないように同じ旗にしておいた。
 ちょっとしたお子様ランチみたいな感じになったな。

 テーブルの方を見ると、すでに着席して料理を待っていた。
 足をぶらぶらさせながら、じっと皿の置かれる場所を見つめている。

 二人とも口の端から少し涎が垂れている。かわいい。

 ハンバーグとライスを置き、ナイフとフォークを並べる。

 これは調理中に作ったお子様用のナイフとフォークだ。
 銀や鉄ではなく木材でできており、安全性を考慮した感じになっている。

「さて、食うか」

 自分の分のハンバーグにフォークを刺して押さえ、ナイフで切り込みを入れると、
 中から肉汁がこれでもかというくらい溢れてくる。

 それを食べやすい形に切って、ソースをたっぷり付けて口に入れる。
 そして、すかさずライスを口に放り込む。

 うむ……うまい!

 我ながら会心の出来だ。
 ジューシーさと肉の旨味、熊肉特有のコク、それをソースがうまくまとめてくれている。

 ふと前に座っている二人を見てみると、食べずにこちらをじっと見ていた。

「ん? 食べて良いんだぞ?」
「―――――」

 何かを小さな声で言ったが、やはり意味は分からない。

 なるほど、わからん。

 あれか、残り物しか食べさせてもらえてなかった感じか?

 せっかく目の前に準備して置いてあるのに、食べるのを禁じられて、
 大人たちの食べ残しだけが自分たちの分、みたいな。

 もしそれが本当ならば、この二人にそんな仕打ちをしていた奴をボッコボコにしないと気が済まなくなっちゃうぞ。

「それはお前たちの分だ。誰にも取られないし、誰も取らない。食べたくないって言うんだったら話は別だが、せっかく作ったんだ。食べてくれると嬉しいな」

 ゆっくり、噛み締めるように言葉を紡ぐ。
 意味が伝わるかどうかは分からないが、「これは君たちのものだ」という気持ちだけは込めたつもりだ。

 それを聞くと、二人はぽろぽろと大粒の涙を流し、静かに頷いた。

 ナイフとフォークを手に取り、俺がやっていたことを見様見真似で、ハンバーグを一口サイズにして口に放り込んだ。

 ひと噛み、ふた噛みして、顔を上げた。

 そして満面の笑みで。

「「――――!」」

 何かを言った。

 それは言葉が理解できていない俺でも、どんな事を言ったのか容易に想像できた。

 ――『美味しい』

 だろう。

「そうか、美味いか。しっかり食えよ? お代わりはあるからな」

 そう言うと、二人は笑顔のままこくこくと頷き、顔を見合わせて、せかせかと食べ始めた。

 ちいさなフォークが忙しなく動き、ハンバーグがみるみるうちに減っていく。
 その様子を眺めながら、俺は心の中でそっと思う。

 ――ああ、悪くないな、こういうのも。
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