異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女

未知の襲撃

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 眠りについていると、膝の上と太ももの上で、もぞもぞと小さな動きが伝わってきた。

「おねーちゃ……たいへん……!」

 か細い声が、胸のあたりまで届いてくる。

 お姉ちゃん?
 ミドリのほうが落ち着いているから、てっきり姉だと思っていたんだが、どうやらシロが姉のようだ。

 面白そうな感じがするから、もう少しだけこのまま寝たフリをしていよう。

「んー? どうしたー?」

「おにーさ……おにーちゃ……いしになった……」

 …だと!?

 耳が勝手に覚醒した。

 しかも今、「おにーさん」って言いかけて、途中で「おにーちゃん」に言い直したよな!?
 ミドリが……デレた……?

 拾った時は、どこか他人行儀な距離感があったから、それが溶けて、本来の呼び方に戻ったのかもしれない。
 つまり、今の状態のミドリが本心、ということだな。

 面白くなってきた。
 寝たフリを解除しないで、このまま聞いていよう。

「えー? ひとはいしにならないんだよー?」

「ほんと……! ぜんぜん……うごかない」

 そういえば、寝る姿勢を固定するために空間を固定したんだったな。
 いつも力づくで破って起きているから、普通に忘れていた。

「でもやわらかいよ?」

「やわらかい……いし……?」

「あっ、そーだ!」

 おい、シロ。
 今の「あっ、そーだ!」のテンションは、絶対ロクでもないことを思いついた時の声だろ。

 足を踏み台にして、シロがよじ登っている感覚が伝わってくる。
 小さな手が、服と筋肉を掴んでは離し、もたもたと胸から肩へと移動していく。

 何がしたいのかよくわからないが、ひとつだけ確かなのは――かわいいという事だけだ。

「んしょ……!」

「おねーちゃん……あぶないよ……?」

「ふっふーん、ほんとうにいしになったみたいですなー!」

 調子に乗り始めたな。
 声の高さからして、完全にスイッチが入っている。

 魔力を薄い膜状にして放出する。
 半径数メートル、その膜がふわりと広がって跳ね返ってくる情報を拾い上げる。

 これはソナーとほとんど同じ要領だ。
 違うところといえば、魔力を放出した者の練度によって感知できる感覚が大きく変わるところだろう。

 初めてやった時は、ボンヤリとした輪郭しか掴めなかったが、今では、そこにどんな表情をしているかまで分かるレベルだ。

 シロが何をしてるのか気になって、久しぶりに意識して使ってみた。

 感覚に浮かび上がったのは、俺の頭の上にちょこんと立ち、胸を張って腕組みをしているシロの姿。

 だから急に偉そうに上から目線になったのか。

「うごかないねー?」

 器用に俺の頭の上でジャンプをしている。
 踏み込まれるたびに、頭蓋に軽い衝撃が伝わるが、まあこの程度なら問題ない。

 寝起きなのに元気なもんだ。

 そろそろ起きるか。

「に゛ゃっ!?」

 どこから出したんだ、その声。
 尻尾を踏んだ猫みたいな、妙に潰れた悲鳴だった。

 空間固定を解除して上半身を動かしたら、案の定、シロがバランスを崩して前のめりに落ちてきた。
 地面に叩きつけられる直前で、風魔法を使ってふわりと浮かせる。

「うごいた……!?」

「そりゃ石になってないから動くぞ?」

 ミドリのほうを見ると、鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして固まっていたが、
 少しすると視線を落とし、小さな声で言った。

「どこから……おきてたの……?」

「ミドリがシロをお姉ちゃんって呼んだとこら辺からだな」

 正直に答えると、ミドリの顔が一瞬で真っ赤に染まる。

 ゆでダコもビックリなくらい真っ赤っかだ。
 耳まで真っ赤で、今にも湯気が出そうな勢いだ。

「あうぅぅ……」

 恥ずかしいのか、両手で顔を隠している。指の隙間から、こっそりこっちを見ているのも、またかわいい。

「これから……おにーちゃんって……よんでもいい……?」

「いいぞ。呼びやすいように呼んでくれ」

 ミドリが、俺の腰布をそっと掴みながら、軽く俯いた状態でそう言ってくる。
 照れ隠しで腰布を強く引っ張るのはやめてほしい。取れる。ほんとに取れる。

「にーに!」

 何故か、足元からシロの声が聞こえてきた。

 下を見てみると、さっき落ちかけたシロが、仰向けのままふわふわと宙に浮いていた。

「そうだ、魔法で浮かせてたんだった」

 操作して、シロの体をゆっくりと回転させ、地面に立たせる。

 すると、きゅるるるる、と小気味よい音が聞こえてきた。

 音のした方向を見ると、シロがお腹を抑えて蹲《うずくま》っていた。

「どうした!? シロ!」

 慌ててシロの近くに駆け寄る。

 俺に気配を読ませず、誰かがシロに攻撃をしたのか……?

 周囲を見回すと、ミドリが怯えた目をしているのが分かった。
 視線はあちこち彷徨っているが、敵の気配は――ない。

 だが、俺の中で怒りに似たものが立ち上がる。

 誰だ……? タダでは済まさんぞ……。

 俺から殺気と魔力が漏れ出す。

 圧力に耐えきれなくなった空気がびりっと震え、一斉に周りの木々から鳥が飛び立ち、
 近くにいた魔物は、ばたばたとその場で気絶した気配が読み取れた。

 二人には当たらないように、殺気と魔力の流れを器用に避けさせているので問題はない。
 ただ、それでも空気の張り詰め方は、普通の子供には十分怖いだろう。

「にーに……?」

「シロ! 大丈夫か?」

 シロも、丸い目を大きく見開き、怯えたように俺を見上げている。

 漏れ出ている殺気と魔力が、さらに膨れ上がろうとした、その時――。

「いってもおこらない…? ぶたない…?」

 震えた声で、シロが俺の服の裾をつまむ。

「そんな事は絶対にしない。誓おう」

 即答し、できるだけ穏やかな声音で告げる。
 怒りの矛先は、二人に危害を加える存在だけだ。二人自身に向けるつもりは、これっぽっちもない。

 震えながら、シロが俺の方を見た。

 ゴクリ……と唾を飲み込む音が聞こえ、意を決したように口を開く。

「あのね…おなかへったの」

 ……は?

 肩に力が入りかけていた全身から、一気に力が抜ける。

 殺気と魔力が、しゅうっと音を立てるように収まっていく。

 え? 空腹? 蹲ってたのは?

 さっきの音を思い返してみる。
 うん、どう聞いても腹の虫だな。

 つまり、腹の虫の音を隠すために蹲ってたのか?
 そうじゃないと辻褄が合わない。

「なんだ……そんなことか……」

「そんなこと……?」

 ミドリがぽつりと呟く。

 俺は立ち上がり、家の方へと歩き出す。

 足音は一つだけ。
 ついてくる気配が、二つともその場で固まっている。

「何してんだ? 飯食うから家戻るぞ」

 振り返りながらそう言うと、二人はそろってキョトンとした顔になり、
 お互いに顔を見合わせてから、ぱっと表情を明るくして、こっちに向かって駆け足で走ってきた。

 近づいてくるその顔は、太陽すらも霞みそうな、眩しい満面の笑みだった。
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