異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女と邪神

ぼっちと龍王の娘

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「貴様いい加減にしろ! お父様より強い雄がいると聞いて着いてきたが……無駄足だったようですね」

 龍王の娘が、噛みつくような視線で睨み上げてきた。
 目は完全にキレている。俺、なんかしたか?

「カッカッカッ! 若いとは素晴らしいな! 坊主、儂の娘と戦ってくれんか?」
「戦ってもいいが……ここで人化を解かれると困るんだが…」

 視線をサイガに向ける。
 こいつの本来の体長は、ざっくり言って五百メートル近い。そんなのの娘と全力でやり合えば、家ごと森が更地だ。

「何も問題じゃあない。儂らは人型の方が強い」

 サイガが豪快に笑った瞬間、娘の身体から闘気が噴き上がった。
 肌を刺すような圧が一気に濃くなる。矛先は、完全に俺ひとりに絞られている。

 シロとミドリの方へは、一切漏れてこない。
 その一点だけは、評価してやってもいい。

「わかったわかった。負けたからってオトウサマに泣きつくなよ?」
「貴様ッ!」

 娘の殺気が一段階跳ね上がった。
 こっちに向けられた視線だけで、空気がわずかに震える。

 戦うにしても、まずはこっちの準備だ。

「少し待ってろ」

 家へと意識を向ける。
 足元から、薄い魔力の膜が何重にも立ち上がり、建物全体を包み込んでいく。

 百二十八層結界。
 一層あたりの耐久は、俺が全力で殴ってようやく砕ける程度。
 そこに、高速修復を付与する。〇・一秒以内に全層破壊でもされない限り、穴は瞬時に塞がるはずだ。

「クレバス」
「ふぎゃっ!?」

 脇でぶら下げていたクレバスを、その場に下ろす。
 思い切り尻もちをついた。受け身ぐらい取れ。

「シロとミドリを頼んだ。あとトカ……じゃないか。サイガ、クレバスと一緒に二人を守ってくれ」
「儂に任せておけ!」
「任されたのじゃ!」

 サイガが胸を叩き、クレバスも気合だけは十分な顔で頷く。
 これで、後ろを気にする必要はなくなった。

 俺は、改めて娘の前に立つ。

「さあ来い」
「知らない構え……死んでも恨まないでくださいね?」
「寝言は寝て言え。先手は譲ってやるよ」

 軽く腕を下ろし、わざと隙を作ってみせる。
 その瞬間――

「ここだッ!」

 娘の姿が一気に間合いの中へ滑り込んできた。
 躊躇は一切ない。悪くない踏み込みだ。

 狙いはボディブロー。
 脇腹にめり込む軌道に入った拳の前へ、前腕を差し込む。

 鈍い音が骨を通して響いた。
 同時に、身体が地面から浮き上がる。

「ッッッ! いっってぇ!」

 腕がしびれる感覚。
 まともに衝撃を受け止めた右手が、じんと熱い。

 空中で体勢を立て直しながら、地面に着地する。
 素の耐久を抜いて、殴られた感覚を覚えたのは久々だ。

「儂らの人化は人に化けるのではなく、人の形に存在を圧縮するからな。人型でも龍の状態でも体の重さは変わらんぞ」

 サイガの説明に、ようやく納得がいった。
 巨大な質量を、そのまま小さい器に押し込めているわけだ。

 木の棍棒と鉛の棍棒を同じ速度で振り下ろされたら、痛いのは後者。
 今の一撃は、まさにそれだ。

「この程度ですか?」

 娘が、わずかに肩を揺らして嘲るように言う。
 余裕ぶっている顔を見ると、ついイラついてしまう。

「喋ってる余裕あんのか?」

 指先に魔力を集中させ、極限まで圧縮した魔力球を捻り出す。
 黒に沈みきったそれは、擬似的な重力井戸――簡易ブラックホールだ。

 娘めがけて射出する。
 着弾する直前、球体がぼろぼろと崩れ、霧のように霧散した。

「……あれ?」

「カッカッカッ!! 儂の娘と言ったじゃろう!? 同じ分解の特性を持っているに決まっとるぞ!!」

 サイガが愉快そうに笑う。
 そういえば、こいつの特性は魔力分解。自身に害を及ぼす魔力を自動的に分解する性質だ。

 つまり、娘にもそれが受け継がれている、と。

「私に魔法は効きませんよ? どっちが弱者か理解しました?」

 口元だけで笑う娘に、距離を詰める。
 返事代わりに、拳を叩き込んでやる。

「黙ってないと舌噛むぞ」

 四割ほどの力で腹部へ右ストレート。
 拳が飲み込まれる寸前、娘が後ろに滑るように下がり、衝撃を流した。

 そのまま空中で姿勢を変える。
 不自然な角度で体勢を切り替え、再びこちらへ突っ込んできた。

 足元に軽く魔力が集まり、地面がわずかに削れる。
 移動には魔法を併用しているらしい。攻撃魔法は分解できても、自分の補助には使えるわけだ。ずるい。

「力はお父様より上のようだな……!!」

 サイガの声が背中に聞こえる。
 まだ全力には程遠いんだがな。

 正面から飛び込んでくる娘に、回し蹴りを合わせ――途中で足がぴたりと止められた。

「空間固定かッ! オラァ!」

 足首を絡め取るような魔力の抵抗を、力任せに踏み砕く。
 空間を縫い止める程度の魔法なら、魔力量で押し切れる。

 八割ほどの出力で魔法を破砕し、そのまま距離を詰める。
 そこからは、ひたすら殴り合いになった。

 拳と拳、拳と肘、膝と膝がぶつかり合うたびに、空気がはじける。
 娘の拳は重く、打ち込まれるたびに肉体がわずかに軋む。

 けれど、俺の身体の中では魔力が絶えず巡っている。
 ひび割れた骨も切れた筋肉も、魔力を流し込むたびに自動的に修復されていく。

 対して、娘の息は徐々に荒くなり、動きにも疲労の色が混ざり始めていた。

「ハァ……ッ、ハッ……!」

 肩が上下し、額に汗が滲む。
 このまま続ければ、いずれ向こうの方が先に限界を迎えるだろう。

 そろそろ終わらせるかと、意識を刈り取るつもりで顔面へ拳を振り上げた――その瞬間。

 周囲の空気が、一気に変わった。

「……ん?」

 娘の身体から立ち上る何かが、魔力の流れを押し流す。
 握り込んだ俺の右拳が、娘の頬に触れた途端、じゅっと焼けるように霧散した。

「あ?」

「坊主!! 逃げろ!!」

 サイガの怒鳴り声が飛んでくる。
 視線を娘に向けると、その周囲から、音もなく魔力が消えていっていた。

「サイガ、なんだ? アレは」
「龍王の覚醒じゃ……。本来ならちゃんとした成長を経て発現するものなんだが……坊主に負けたくない一心で感情が高ぶり、覚醒した感じだな」
「どんだけ負けず嫌いなんだよ……」

 娘の口元に、淡い光が集まり始める。
 空間そのものがきしむような圧が、一直線に俺へ向けられた。

「【――――――――】」

 聞き取れない言語で、短い詠唱が紡がれる。
 直後、光が収束し、龍のブレスとしか呼びようのない光線が吐き出された。

「アブねぇ!?」

 全補助系の魔法を瞬時に自分に重ねがけする。
 筋力・反応速度・耐久力――動けるところまで全部底上げした状態で、目の前の空間に右手を突き立てた。

 指先に力を込める。
 空間の“膜”みたいなものを掴み取り、そのまま裂いた。

 裂け目の向こうは、色も形もない闇。
 この世界とは別の「どこでもない場所」だ。そこへ、迫り来るブレスが呑み込まれて消える。

 裂いた空間は、そのままにしておいても特に影響はなく、勝手に閉じる。
 この世界とは、そもそも概念が違う領域らしい。

「え? 嘘じゃろ? 素手で空間を引き裂くとか全盛期の妾でもできんぞ……?」
「儂も無理だな……。アイツ、本当に生物か……?」

 外野が好き勝手なことを言っているが、今は聞いている余裕はない。

「おい、サイガ! お前の娘だろ!? 何とかしろ!!」
「儂じゃ力不足だ。気絶させれば収まると思うぞ~」
「……加減誤って殺しても文句言うなよ?」
「問題ない……だろう? 坊主には蘇生の魔法も教えてるはずだ」

 舐めたことをさらっと言いやがる。
 確かに、独学で魔法を極めるのに限界を感じた頃、サイガと死闘を繰り返して仲良くなり、色々教えてもらった。

 その中に、死者蘇生の魔法もあったのは事実だ。

 ――が、本来なら試合程度で使いたい代物じゃない。

 娘の眼光は、もう完全に理性の灯りを手放しかけている。
 なら、こっちも遠慮している場合じゃない。

 試合のつもりだったが、どうやら本気を少しだけ見せる時が来たようだ。
 ……サイガ父親の許可も出たことだしな。
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