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幼女と邪神
幼女と邪神と買い物②
しおりを挟む俺たちは特に目的もなくメインストリートを歩いていた。
紅蓮さんことルナが俺の頭に熱視線を送ってくる。何だ? 何かついてるのか?
……シロが引っ付いてたな。
今の体勢はシロを肩車してミドリを左手で抱っこしているいつもの状態だ。
「なあ、ルナ」
「なっ、なんだい!?」
「さっきから見てるけど何かあるのか?」
こういうのは本人に聞いてしまうのが1番だ。
クレバスが返答に対してワクワクしている。ちょろちょろ動き回るな。
「いっいやぁ、私にも肩車させてほしいなぁ……なんて……」
尻すぼみに声が小さくなっていく。
なるほど。それでシロを見てたのか。
「シロ。赤い人が肩車したいって言ってるけどどうする?」
「いーよー!」
「本当か!?」
あからさまに喜びを露わにするルナ。
これはもしかして危ない人種だったか…?
ルナにシロを渡して頭に装着する。
今まで見てきたキリッとしたルナではなく、どうしようもなく顔をニヤけさせている。
憲兵が見たら職務質問をされそうなニヤけっぷりだった。
「のう、シュウや。こやつ大丈夫か?」
「俺も心配になってきた」
大きく息を吸ったきり吐いていない。
シロは俺とクレバス以外に肩車をされるのが新鮮なのかキョロキョロしていた。
「私はもう死んでもいいかもしれない…」
「だめ! あるいて!」
立ち止まって何かを言っているルナの頭をペチペチと叩くシロ。
問題なさそうなのでちゃんと見ながら放置しよう。はぐれたら困る。
「クレバス、街に行きたいって言ったのはお前なんだからどこに行きたいとかないのか?」
「街を見渡せる高いところとかがあれば行きたいのじゃ」
……街の入り口にある砦に入れてもらうか?
どうするか……あ、いい案を思いついたぞ。
「ちょっと来てくれ」
「なんじゃ? 何かあるのか?」
ミドリを肩車に移行し、クレバスを両手で持ち上げる。
「何をするんじゃ……嫌な予感しかしないんじゃが……」
「喋ってると舌噛むぞ。そぉい!」
「のじゃあああああぁぁぁぁあぁあぁ…………………」
割と力を込めた高い高いだ。
上に投げる際に風圧軽減や防御魔法やらをかけておいたからクレバスなら大丈夫だ。
「たのしそう……」
ミドリが反応した。
さすがにアレをシロやミドリにやるのは気が引けるので、投げても1mにしよう。
……なかなか落ちてこないな。
力を込めすぎたか?
5分ぐらいすると落ちてくるクレバスを視認できた。やっとか。
キャッチするか……。
空から邪神が振ってきたぞ!
衝撃吸収と風魔法を展開して柔らかくクレバスを受け止める。
お姫様抱っこってやつだな。
「街は見れたか?」
「満天の星空が見れたのじゃ。中々無い体験じゃったの」
そうかそうか。
そんな貴重な体験ができたなら高めに投げて正解だったな。
クレバスを姫抱きしていると後ろからぐぅぅー……と腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。
「にーに! へった!」
「俺は減らないぞ」
「ちがう! しろ、へった!」
街に入るのに結構待たされたからな。そろそろ飯にするか。
この前来た時のところでいいだろう。
「よし、飯にするぞ」
「やたー!」
シロが両手放しで喜ぶ。危ないからルナの頭を抱えててくれ。
ミドリは俺の髪の毛の本数を数えるのに必死なようで反応がない。
集中してるんだな。
「しゅっ、シュウや……シュウさんや……」
姫抱きしたままのクレバスがもじもじと恥ずかしそうに俺を呼んだ。
なんだ? トイレか?
「降ろしてくれんかのぅ……これは少々恥ずかしいというか何というか……」
「……却下だ。飯屋に着くまではこのままだな」
反応が面白いのでこのまま行こう。
確か前回飯を食べたところはここから歩いて5分ぐらいだったな。
10分かけて歩くか。
「ふへへ……子供あったかい……」
「おい、ルナ」
「ひゃい!? ……なんだい?」
「この街のオススメの場所ってあるか?」
前回は必要なものしか買い歩かなかったからな。
今回は目的がないので現地人に聞くのが最適だ。
「オススメか……豊富な種類のある武器屋と魔道具屋かな?」
「飯食い終わったらそこに行くから道案内頼む」
「わかった」
前回飯を食べたところが見えてきた。
クレバスの顔が真っ赤っかになっていたので、そろそろ降ろしてやろう。
「あっ……もう終いかの……」
降ろすと名残惜しそうな表情をした。
恥ずかしいんじゃなかったのか……?
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