俺は彼女に逆らえない

柊 さくら

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俺が目にしたもの

初めて彼女を見た瞬間

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俺は今、寝ている。
いや、正確に言えば寝ていた、だ。

「ねぇ、聞いてる?」

「うるさいなぁ」

そうして僕はベッドから出る。
そういや、この女、輝夜と出会ったのはいつだっけか。ふと、昔のことを思い出してみる

それは、忘れもしない8月の暑い暑い日のこと。俺は10歳で彼女の年齢その時は分からなかったが俺は彼女を見た瞬間、逃げ出したのはよく覚えている

「はっはっはっはっ…!」

全力疾走。
だが、そのせいで枝を折る音、葉を踏む音。それによって彼女、狐の耳と尻尾を生やした、おそらく、お狐様であろう人?に見つかってしまった

相手は自分よりも数倍も速いスピードでおそらく、全力で追いかけてくる。でも、俺は俺で捕まったら殺される、そんな思いがあるからこそ逃げ回っている

しかし、限界がきてしまったのだ
どれだけ死の危機に直面しようと所詮は10歳。足は遅く、体力もない

ーそうして俺は捕まったー

「なんで逃げるのよ…」

「い、いやだ…!こ、殺さないで…!」

死を覚悟した。なぜなら俺の住む村ではこんな言い伝えがあるからだ

『午後8時より外出するとお狐様に殺されて、明雲時大社みょううんじたいしゃにお供えされる』

現在時刻は8時5分と言ったところだろうか
俺はもうダメだ。やっぱりこんな時間まで遊ぶんじゃなかった…!
そう後悔をしていると彼女は

「殺す?何を言ってるの?」

「…え?」

思考が追いつかない

殺さないってことにも驚いたが口調にも驚いた。もっと偉い人?みたいな
「殺す?妾がそんなことするわけがないだろう」みたいなの想像してたんだけど

それに、よく見ると、可愛らしい俺と同世代くらいの女の子のような…
でも、やっぱり狐の耳と尻尾はついてる!?ど、どいうこと…?

「ねぇ君…」

腰まで伸びる茶色の髪。
その髪は風になびかれ美しさを増し
そうして彼女はそっと言葉を放った。
俺に手を差し出して

「私と、け、けけけ、結婚!して、く、くだ、さ…い…」

しどろもどろだったし、顔は真っ赤だしでうまく言うことはできなかったかもしれない、でも、そんな彼女に俺はその瞬間から惚れてしまった

「は…はい…」

無意識とは言え、そう言葉を零してしまった。その答えが間違いだと思ったのはこの数秒後。

「輝夜~。」

「やば、お母さんの声!隠れて」

小声で指示される。
にしても可愛すぎませんかね?

すーはー、すーはーと深呼吸を輝夜と呼ばれた少女はしている。そうして俺の手を取り両手を恋人繋ぎのように指が交じり合うように繋いで俺は、今日初めて会った、お互いの名前も明確ではない人?と

ーこの日、俺たちはキスをしたー

「!?な、なにするんだ…!」

あくまでも小声で告げる

「結婚の儀式。ちょっと待ってね」

そう言った直後、ほんの一瞬だけ目の前が真っ白になり先程まであった狐の耳と尻尾はなくなっていた。
だが、その光のせいで母と思われる人に見つかってしまった

「見ーつーけーたー!!!」

鬼の形相とはまさにこの事を言うんだろう。彼女の母と思われる女性は顔を真っ赤にし俺に一礼したのちに耳を引っ張って連れ去ってしまった
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