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第5話「ネコモドキ」
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「シュンちゃん見て見て、凄くかわいい子が出たよ!」
純恋は俺に気が付くとパタパタと近寄ってきて、大切に抱きかかえているネコモドキを見せてきた。
羽さえなければ、見た目は完全なネコなため確かにかわいい。
垂れた耳やまんまるの瞳を見るにモデルはスコティッシュフォールドなのだろう。
真っ白な毛が全身を覆っており、とこどころに虎を思わせる黒色の波模様が入っている。
かわいくもあり、かっこよくもあるといったところか。
ただ、やはりどう見ても戦えるようには見えない。
純恋の腕の中にすっぽり体が入るほど小さいし、なんだが赤ちゃんが甘えるように純恋の豊満な胸へ――いや、なんでもない。
今考えたのはなしだ。
それよりも、このネコモドキは純恋の事をお母さんだと思っているのではないだろうか?
なんせ純恋にも猫耳と尻尾がついているし、このネコモドキの様子からはママ猫に甘えているようにしか見えないからな。
「あ、あの、シュンちゃん。そんなに見たらやだよ……」
俺の視線が自身の猫耳に向いてる事に気が付いた純恋は、ネコモドキで口元を隠しながら恥ずかしそうに見つめてくる。
ここはゲームの中だとわかっていても、美少女の上目遣いは破壊力が凄い事を俺は知った。
「どうしたの? 頬が赤くなってるけど、もしかして熱でもある……?」
あまりのかわいさに見とれていると、目の前にいる純恋がキョトンっとした表情で首を傾げた。
「あっ、えっと、熱はないよ。そ、それよりも、そろそろ狩りに行こうか」
「…………?」
俺の言葉を聞いて純恋はまた首を傾げる。
これは俺が誤魔化した事によってなのか、それとも狩りという言葉がわからなかったのか――多分、後者だろうな。
俺が今使った《狩り》という言葉はゲーム用語だが、言葉自体は一般的にも知られているはずだ。
しかし猟師でもなく、ましてや男物の漫画すら読まない純恋には馴染みがないのだろう。
「狩りっていうのはモンスターを倒しに行ってレベル上げをしたりする事だよ」
「そ、そうなんだ……。本当にモンスターと戦っちゃうんだね……」
やはり恐怖があるのだろう。
モンスターを倒しに行くと聞いただけで純恋は体を縮こませた。
俺を見つめる瞳は動揺を露にするかのように揺れ動いている。
「大丈夫、さっきも言ったけど何かあれば俺が助けるからさ。どんなモンスターからでも俺が純恋を守るよ」
とりあえず彼女の強張りが和らぐように笑顔を向けてみた。
実際は守る事しか出来ず攻撃の役には立てないのだが、まぁ物は言いようだ。
それに攻撃の役に立てないとはいってもそれは後々の事を言ってるだけで、さすがに最初ら辺くらいなら問題はないはずだ。
最初ら辺に出てくるモンスターはレベルが低く設定されており、スキルなしで倒す事が出来るはずだからな。
スキルが必要ないなら当然攻撃スキルを持っていなくても戦う事は出来る。
最初しか攻撃では役に立てない分、ここで役立っておべきだろう。
――おっと、狩りに行く前に一つしないといけない事があったな。
「純恋、先にアビリティポイントを振っておこう」
「アビリティ、ポイント……?」
「あぁ、能力値みたいなものだよ。体力、攻撃力、防御力、素早さ、後は技術力だな。レベルアップでもらえるアビリティポイントをこれらに自分が好きなように振り分けるんだ」
この振り分けは人によって全然変わってくる。
職業によっても重視しないといけない能力は変わるし、バランスにも気を付けないといけない。
極たまに極振りなんていうある一点の能力に全てのポイントを振り続ける奴がいるが、俺としては少々理解しがたいやり方だ。
例えば攻撃力に全てのポイントを振ったとしよう。
一撃一撃はかなり強力なものになるだろうが、素早さがなければ攻撃が遅すぎて躱されてしまうんだ。
それに防御力がないから相手の攻撃だって大ダメージになるのに、素早さがなければ躱す事も出来やしない。
本当、極振りはリスクがデカすぎてメリットなんてないと思う。
……まぁそんな事を言うとめちゃくちゃ怒る奴がいるから口に出す事なんて出来やしないが。
ちなみに俺は素早さに重きを置いている。
素早ささえあれば威力が低い攻撃も数打ってダメージを重ねられるし、防御力が低くても相手の攻撃を躱せば関係がない。
今回も大盾使いにしたが、防御力だけでなく素早さにも振るつもりだ。
振り分けは防御七割、素早さ三割といったところか。
攻撃スキルがない以上攻撃力はいらないし、技術力も大盾使いには必要ない。
体力は少し悩んだが、重きを置かなければいけないのは防御力なため今はいいだろう。
別にアビリティポイントを振らなかったとしても、最低限はレベルと共に能力値が上がる。
経験から言うと、ある程度レベルが上がれば体力は無振りでも問題ないくらいには上がるようになっていた。
これも職業によって違いはあるが、耐久が重視される大盾使いなら俺のメインよりも体力が多い事は確実だろう。
それならば体力に振るポイントは後々無駄になるため、ここではその分も防御力に回したほうがいいという判断だ。
「技術力ってどういう影響があるの?」
どうやら純恋は技術力の事がよくわからないようで、かわいらしく小首を傾げながらジッと俺の顔を見つめてきた。
攻撃力や防御力とは違い、技術力がキャラにどういう影響を与えるのか想像がつきづらかったのだろう。
まぁ元々はなかった要素だし、追加された当初は俺もよくわからなかったからな。
「それは色々なアイテムを作ったりするのに必要なものなんだ。例えば回復ポーションや強化ポーション、それに罠とかな」
「そうなんだ……だったら私も上げておいたほうがいいのかな?」
「いや、必要ないだろう。確かに技術力をあげれば俺たちでも作れるが、そっち系の専門がいる限り買うほうがアビリティポイントの温存にもなるし、性能も段違いにいい。こういうのを専門にしている職業はさっき教えたよな?」
「あっ、錬金術師!」
「そう、錬金術師だ。アイテム作りは彼らに任せて、俺たちはほしいアイテムを彼らから買ったほうがいいんだ。だから技術力には振らなくていいよ」
錬金術師はアイテム作りを生業としている職業。
彼らは自分で作ったアイテムを売ってお金を稼いだり、精密に作った罠でモンスターを仕留めたりしている。
他にもロボットで戦ったりもするんだったかな?
少々変わった職業ではあるが、極めればアイテムで仲間のフォローをしつつ自分も戦えるため中々の万能職だ。
ギルドに一人はほしいと言われている職業だな。
「う~ん……だったら何に振ればいいんだろ……?」
純恋は首を傾げながら自分の腕の中にいるネコモドキへと視線を向ける。
――が、ネコモドキはいつの間にかスヤスヤと寝ていた。
本当にこのモンスターは大丈夫なのだろうか……?
「ふふ、かわいいね」
ネコモドキの寝顔を見て純恋は優しく微笑む。
丁寧にネコモドキの頭を撫でながら愛しげに見つめる姿はまるで母親のようだった。
母性に目覚めるのはいいけど、これから戦いに行くところなんだが……。
目の前で微笑ましい光景を見せられた俺は、冒険に行く気を削がれかけていた。
もうこのネコモドキはペットとして飼う事にして、新しいモンスターを仲間にしたほうがいいと思う。
モンスターというよりもただのペット化しているネコモドキを横目に、俺は苦笑いを浮かべながら純恋と共に街の外を目指す。
とりあえず今日は俺一人で戦うしかないようだ。
――と思っていた俺だったが、すぐに俺はこのネコモドキの事を見誤っていたと思い知らされるのだった。
純恋は俺に気が付くとパタパタと近寄ってきて、大切に抱きかかえているネコモドキを見せてきた。
羽さえなければ、見た目は完全なネコなため確かにかわいい。
垂れた耳やまんまるの瞳を見るにモデルはスコティッシュフォールドなのだろう。
真っ白な毛が全身を覆っており、とこどころに虎を思わせる黒色の波模様が入っている。
かわいくもあり、かっこよくもあるといったところか。
ただ、やはりどう見ても戦えるようには見えない。
純恋の腕の中にすっぽり体が入るほど小さいし、なんだが赤ちゃんが甘えるように純恋の豊満な胸へ――いや、なんでもない。
今考えたのはなしだ。
それよりも、このネコモドキは純恋の事をお母さんだと思っているのではないだろうか?
なんせ純恋にも猫耳と尻尾がついているし、このネコモドキの様子からはママ猫に甘えているようにしか見えないからな。
「あ、あの、シュンちゃん。そんなに見たらやだよ……」
俺の視線が自身の猫耳に向いてる事に気が付いた純恋は、ネコモドキで口元を隠しながら恥ずかしそうに見つめてくる。
ここはゲームの中だとわかっていても、美少女の上目遣いは破壊力が凄い事を俺は知った。
「どうしたの? 頬が赤くなってるけど、もしかして熱でもある……?」
あまりのかわいさに見とれていると、目の前にいる純恋がキョトンっとした表情で首を傾げた。
「あっ、えっと、熱はないよ。そ、それよりも、そろそろ狩りに行こうか」
「…………?」
俺の言葉を聞いて純恋はまた首を傾げる。
これは俺が誤魔化した事によってなのか、それとも狩りという言葉がわからなかったのか――多分、後者だろうな。
俺が今使った《狩り》という言葉はゲーム用語だが、言葉自体は一般的にも知られているはずだ。
しかし猟師でもなく、ましてや男物の漫画すら読まない純恋には馴染みがないのだろう。
「狩りっていうのはモンスターを倒しに行ってレベル上げをしたりする事だよ」
「そ、そうなんだ……。本当にモンスターと戦っちゃうんだね……」
やはり恐怖があるのだろう。
モンスターを倒しに行くと聞いただけで純恋は体を縮こませた。
俺を見つめる瞳は動揺を露にするかのように揺れ動いている。
「大丈夫、さっきも言ったけど何かあれば俺が助けるからさ。どんなモンスターからでも俺が純恋を守るよ」
とりあえず彼女の強張りが和らぐように笑顔を向けてみた。
実際は守る事しか出来ず攻撃の役には立てないのだが、まぁ物は言いようだ。
それに攻撃の役に立てないとはいってもそれは後々の事を言ってるだけで、さすがに最初ら辺くらいなら問題はないはずだ。
最初ら辺に出てくるモンスターはレベルが低く設定されており、スキルなしで倒す事が出来るはずだからな。
スキルが必要ないなら当然攻撃スキルを持っていなくても戦う事は出来る。
最初しか攻撃では役に立てない分、ここで役立っておべきだろう。
――おっと、狩りに行く前に一つしないといけない事があったな。
「純恋、先にアビリティポイントを振っておこう」
「アビリティ、ポイント……?」
「あぁ、能力値みたいなものだよ。体力、攻撃力、防御力、素早さ、後は技術力だな。レベルアップでもらえるアビリティポイントをこれらに自分が好きなように振り分けるんだ」
この振り分けは人によって全然変わってくる。
職業によっても重視しないといけない能力は変わるし、バランスにも気を付けないといけない。
極たまに極振りなんていうある一点の能力に全てのポイントを振り続ける奴がいるが、俺としては少々理解しがたいやり方だ。
例えば攻撃力に全てのポイントを振ったとしよう。
一撃一撃はかなり強力なものになるだろうが、素早さがなければ攻撃が遅すぎて躱されてしまうんだ。
それに防御力がないから相手の攻撃だって大ダメージになるのに、素早さがなければ躱す事も出来やしない。
本当、極振りはリスクがデカすぎてメリットなんてないと思う。
……まぁそんな事を言うとめちゃくちゃ怒る奴がいるから口に出す事なんて出来やしないが。
ちなみに俺は素早さに重きを置いている。
素早ささえあれば威力が低い攻撃も数打ってダメージを重ねられるし、防御力が低くても相手の攻撃を躱せば関係がない。
今回も大盾使いにしたが、防御力だけでなく素早さにも振るつもりだ。
振り分けは防御七割、素早さ三割といったところか。
攻撃スキルがない以上攻撃力はいらないし、技術力も大盾使いには必要ない。
体力は少し悩んだが、重きを置かなければいけないのは防御力なため今はいいだろう。
別にアビリティポイントを振らなかったとしても、最低限はレベルと共に能力値が上がる。
経験から言うと、ある程度レベルが上がれば体力は無振りでも問題ないくらいには上がるようになっていた。
これも職業によって違いはあるが、耐久が重視される大盾使いなら俺のメインよりも体力が多い事は確実だろう。
それならば体力に振るポイントは後々無駄になるため、ここではその分も防御力に回したほうがいいという判断だ。
「技術力ってどういう影響があるの?」
どうやら純恋は技術力の事がよくわからないようで、かわいらしく小首を傾げながらジッと俺の顔を見つめてきた。
攻撃力や防御力とは違い、技術力がキャラにどういう影響を与えるのか想像がつきづらかったのだろう。
まぁ元々はなかった要素だし、追加された当初は俺もよくわからなかったからな。
「それは色々なアイテムを作ったりするのに必要なものなんだ。例えば回復ポーションや強化ポーション、それに罠とかな」
「そうなんだ……だったら私も上げておいたほうがいいのかな?」
「いや、必要ないだろう。確かに技術力をあげれば俺たちでも作れるが、そっち系の専門がいる限り買うほうがアビリティポイントの温存にもなるし、性能も段違いにいい。こういうのを専門にしている職業はさっき教えたよな?」
「あっ、錬金術師!」
「そう、錬金術師だ。アイテム作りは彼らに任せて、俺たちはほしいアイテムを彼らから買ったほうがいいんだ。だから技術力には振らなくていいよ」
錬金術師はアイテム作りを生業としている職業。
彼らは自分で作ったアイテムを売ってお金を稼いだり、精密に作った罠でモンスターを仕留めたりしている。
他にもロボットで戦ったりもするんだったかな?
少々変わった職業ではあるが、極めればアイテムで仲間のフォローをしつつ自分も戦えるため中々の万能職だ。
ギルドに一人はほしいと言われている職業だな。
「う~ん……だったら何に振ればいいんだろ……?」
純恋は首を傾げながら自分の腕の中にいるネコモドキへと視線を向ける。
――が、ネコモドキはいつの間にかスヤスヤと寝ていた。
本当にこのモンスターは大丈夫なのだろうか……?
「ふふ、かわいいね」
ネコモドキの寝顔を見て純恋は優しく微笑む。
丁寧にネコモドキの頭を撫でながら愛しげに見つめる姿はまるで母親のようだった。
母性に目覚めるのはいいけど、これから戦いに行くところなんだが……。
目の前で微笑ましい光景を見せられた俺は、冒険に行く気を削がれかけていた。
もうこのネコモドキはペットとして飼う事にして、新しいモンスターを仲間にしたほうがいいと思う。
モンスターというよりもただのペット化しているネコモドキを横目に、俺は苦笑いを浮かべながら純恋と共に街の外を目指す。
とりあえず今日は俺一人で戦うしかないようだ。
――と思っていた俺だったが、すぐに俺はこのネコモドキの事を見誤っていたと思い知らされるのだった。
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