不要とされた私が、拾われた先で人生を立て直すまで

藤原遊

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第24話 冬の中へ

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雪は、ある日を境に本気を出した。

夜のうちに降り積もり、朝、扉を開けると道の形が分からなくなっている。畑も水路も白に沈み、村は音を失った。風が吹いても、雪がそれを吸い込んでしまう。

「……しばらく、外には出られませんね」

ロイがそう言いながら、扉を閉める。

「ええ」

セシリアは頷いた。

それで困ることは、ほとんどなかった。
冬に入る前に、必要なものは揃えてある。食料も、薪も、人の手も。

屋敷には、今日も人が集まっていた。
雪の日は、自然とここに集まる。暖かいからだけではない。誰かの手が動いている音がするからだ。

干し肉を切り分ける者、壺を確かめる者、糸を巻き直す者。
それぞれが、黙々と手を動かしている。

「これ、去年より柔らかいですね」

干し肉を一切れ口にした女が言う。

「下ごしらえ、ちゃんとやったからな」

「塩の加減も、いい」

それだけのやり取りで、また手が動き始める。

鍋に火を入れると、保存食の匂いが立ちのぼる。
肉と香草、麦の粉。どれも、見慣れたものだ。

「……本当に」

ロイが、鍋を見ながら言った。

「他の地域、そんなに不作なんでしょうか」

「分かりません」

セシリアは、そう答える。

「でも、少なくとも、
ここは冬を越せます」

ロイは、小さく息を吐いた。

「それだけで、十分ですね」

外では、雪が降り続いている。
けれど、屋敷の中には、途切れない動きがある。

子どもたちは、隅で糸の切れ端を集め、何かを作っている。
大人はそれを横目で見ながら、手を止めない。

誰も、声を張り上げない。
それでも、静かではなかった。

セシリアは、部屋を見渡す。

ここに来る前、冬は閉じるものだった。
扉を閉め、外を遮り、耐える季節。

今は違う。

雪に閉ざされても、村は止まらない。
作り、食べ、話し、次の日の準備をする。

夜になると、外は完全に白に沈む。
灯りを落とし、火を小さくする。

「……明日も、雪ですかね」

「たぶん」

「じゃあ、またここですね」

そんな会話が、当たり前のように交わされる。

セシリアは、火のそばで手を温めながら思う。

冬の中に入った。
けれど、閉じ込められたわけではない。

この場所には、備えがあり、手があり、声がある。

雪は深く、長い冬になるだろう。
それでも――今年は、越えられる。

そう確信できるだけのものが、
すでに、ここには揃っていた。
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