不要とされた私が、拾われた先で人生を立て直すまで

藤原遊

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第23話 初雪

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初雪は、気づいたときにはもう降っていた。

朝、窓を開けると、屋敷の庭の端がうっすら白くなっている。積もるほどではないが、空気ははっきりと冬のものに変わっていた。畑はすでに休みに入り、水路も凍る前に手を入れてある。冬支度は、ほぼ終わっている。

外套を羽織って外に出ると、ラグナが門の近くに立っていた。

「来ましたね」

「ええ」

短いやり取りを交わしながら、二人で庭先を見る。土の色が隠れ始め、音が吸われるように静かだ。

少し間を置いてから、ラグナが口を開いた。

「……社交の方は」

言葉を選ぶような間があった。

「よろしいのですか」

セシリアは一度、視線を雪から外した。

「私は、貴族としては不要な類らしいので。行かなくて、問題ありません」

淡々とした口調だった。事実を、そのまま口にしただけだ。

ラグナは何か言いかけて口を閉じ、しばらく黙ったまま雪を見ていたが、やがて小さく息を吐いた。

「……私たちは、頼りにしています」

思ったよりも、まっすぐな言葉だった。

セシリアは一瞬、言葉を失い、思わず瞬きをする。

「……ありがとうございます」

それだけ言うと、ラグナはそれ以上何も続けず、屋敷の方へ視線を向けた。

中に入ると、すでに人が集まり始めていた。今年も冬の手仕事を、この屋敷で一緒にやる。机が並べられ、布と糸が広げられ、行商人から買った品が自然と真ん中に集まっている。

「今年は、色があるな」

「この布、去年よりいい」

「糸も細かい」

そんな声が交わされ、手が動き始める。セシリアも腰を下ろし、編み方を教えながら糸を整える。結び目を直し、少し笑い、また手を動かす。外では雪が降り続いているが、屋敷の中は人の気配で満ちていた。

「なんだか、今年は華やかですね」

誰かの言葉に、周囲が頷く。

布が違うだけで、色が増えるだけで、冬の時間は少し軽くなる。セシリアは糸を引きながら、ここに来てから冬の意味が変わったことを、はっきりと感じていた。

閉じこもる季節ではなく、集まり、作り、支え合う時間。

窓の向こうで雪が舞う。

今年の冬も、ここで越す。それは決意というほどのものではなく、ただ自然にそうなっただけだった。
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