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第3話:護衛騎士が来たけれど、あんまり信用されてない気がする
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朝、目覚めると、私の部屋に男がいた。
いや、厳密には部屋の外の廊下に立っていたのだけれど、それでもドアが開いた瞬間、銀鎧の反射光がまぶしすぎて、目をつぶった。
「……マリア様、お目覚めですね。ご安心を。今日から、あなたを守る者が付きます」
そう説明したのはクラリスで、例によって目が潤んでいる。
一晩経っても回復してないのか。涙腺に奇跡でも宿ってるのか君は。
「……護衛?」
「はい! 王都の騎士団から、正式に派遣された方です。
マリア様の奇跡があまりに顕著なため、王国も本格的に聖女保護体制を整えると……」
「保護って……私、どこかから狙われてたりするの?」
「はい、聖女の座は信仰の象徴であると同時に、外交資源でもありますので!」
あー、うん。なるほど。
要するに「奇跡が起きる女」が一人存在すると、他国が「そっちの神の方が本物かも」と思い始める。
それで教義が揺らぎ、信者が流れ、権力構造がガタつく。だから聖女は、王国の威信そのものになる。
まあ、わかる。わかるけど――
「私、ただの一般人だよ?」
その声は、ドアの外から聞こえていたらしい。
「自分でそう言う者が、一番危ないんだよ。……大抵、自覚がないだけだからな」
そう言って入ってきたのが、例の男だった。
銀の鎧を身にまとい、剣を帯びた高身長の青年。鋭い目つきと、無駄のない所作。
一目見て「あ、この人、毎日筋トレしてそう」と思った。
「お初にお目にかかります、聖女マリア殿。俺はライオネル=ヴェルダ。第一騎士団所属、聖女直轄護衛任務に就く」
「え、敬語……?」
「立場上だけだ。俺は教会の信徒じゃないし、あんたを本物の“聖女”だと思ってるわけでもない」
あ、この人、正論系で面倒くさいタイプだ。
「じゃあ、なんで護衛なんてしてくれるの?」
「命令だから。奇跡が事実として確認された。であれば“再現性があるか”を確認する必要がある。それが騎士団のスタンスだ」
「……なんか、やけに理系っぽい信仰心ね」
「信じるかどうかは後。事実が先だろう?」
はい、これは完全に「信じてしまうと負けると思ってる」人種です。
こういう人は、自分で納得するまで動かないけど、一度信じたら……まあ、面倒くさいくらい忠実になったりする。
前世の教団にもいた。疑い深いくせに、なぜか最前線に出てきては“奇跡の再現性”を測るとか言って生卵投げてきたやつ。
「とりあえず、俺はあんたの“祈り”を三日間観察する。
奇跡が本物か、ただの偶然か、それとも周囲が勝手に騒いでるだけか、全部チェックさせてもらう」
「観察対象に自覚はある?」
「ないと思ってくれて構わない。俺はただ、事実を知りたいだけだ」
この感じ……たぶん、最初に“本物”だと思われたら、逆にすごくやりづらいやつだったかもしれない。
でも“信じてない”前提の人間が目の前にいると、なんだろう、こう……不思議な居心地の良さがある。
私はふ、と息をついて、彼の目を見て、肩をすくめた。
「じゃあ、せいぜい“失望”してね。私が“ただの人間”だって、その目で確認すればいい」
「……その言葉が本当なら、俺はそれで構わない」
──けれど、この三日後。
ライオネルは、自分の手で“奇跡”を目撃することになる。
信じてなどいなかったのに、誰よりも深く、跪くことになるのだ。
いや、厳密には部屋の外の廊下に立っていたのだけれど、それでもドアが開いた瞬間、銀鎧の反射光がまぶしすぎて、目をつぶった。
「……マリア様、お目覚めですね。ご安心を。今日から、あなたを守る者が付きます」
そう説明したのはクラリスで、例によって目が潤んでいる。
一晩経っても回復してないのか。涙腺に奇跡でも宿ってるのか君は。
「……護衛?」
「はい! 王都の騎士団から、正式に派遣された方です。
マリア様の奇跡があまりに顕著なため、王国も本格的に聖女保護体制を整えると……」
「保護って……私、どこかから狙われてたりするの?」
「はい、聖女の座は信仰の象徴であると同時に、外交資源でもありますので!」
あー、うん。なるほど。
要するに「奇跡が起きる女」が一人存在すると、他国が「そっちの神の方が本物かも」と思い始める。
それで教義が揺らぎ、信者が流れ、権力構造がガタつく。だから聖女は、王国の威信そのものになる。
まあ、わかる。わかるけど――
「私、ただの一般人だよ?」
その声は、ドアの外から聞こえていたらしい。
「自分でそう言う者が、一番危ないんだよ。……大抵、自覚がないだけだからな」
そう言って入ってきたのが、例の男だった。
銀の鎧を身にまとい、剣を帯びた高身長の青年。鋭い目つきと、無駄のない所作。
一目見て「あ、この人、毎日筋トレしてそう」と思った。
「お初にお目にかかります、聖女マリア殿。俺はライオネル=ヴェルダ。第一騎士団所属、聖女直轄護衛任務に就く」
「え、敬語……?」
「立場上だけだ。俺は教会の信徒じゃないし、あんたを本物の“聖女”だと思ってるわけでもない」
あ、この人、正論系で面倒くさいタイプだ。
「じゃあ、なんで護衛なんてしてくれるの?」
「命令だから。奇跡が事実として確認された。であれば“再現性があるか”を確認する必要がある。それが騎士団のスタンスだ」
「……なんか、やけに理系っぽい信仰心ね」
「信じるかどうかは後。事実が先だろう?」
はい、これは完全に「信じてしまうと負けると思ってる」人種です。
こういう人は、自分で納得するまで動かないけど、一度信じたら……まあ、面倒くさいくらい忠実になったりする。
前世の教団にもいた。疑い深いくせに、なぜか最前線に出てきては“奇跡の再現性”を測るとか言って生卵投げてきたやつ。
「とりあえず、俺はあんたの“祈り”を三日間観察する。
奇跡が本物か、ただの偶然か、それとも周囲が勝手に騒いでるだけか、全部チェックさせてもらう」
「観察対象に自覚はある?」
「ないと思ってくれて構わない。俺はただ、事実を知りたいだけだ」
この感じ……たぶん、最初に“本物”だと思われたら、逆にすごくやりづらいやつだったかもしれない。
でも“信じてない”前提の人間が目の前にいると、なんだろう、こう……不思議な居心地の良さがある。
私はふ、と息をついて、彼の目を見て、肩をすくめた。
「じゃあ、せいぜい“失望”してね。私が“ただの人間”だって、その目で確認すればいい」
「……その言葉が本当なら、俺はそれで構わない」
──けれど、この三日後。
ライオネルは、自分の手で“奇跡”を目撃することになる。
信じてなどいなかったのに、誰よりも深く、跪くことになるのだ。
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