婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊

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第一部 凱旋と裏切り

第1話 勇者一行の凱旋

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王都の大通りは、人で埋まっていた。
窓という窓に布がかかり、花びらが上から降りそそぐ。
魔王討伐から戻った――その知らせひとつで、街は祝祭に変わったのだ。

私、エリシア・ヴァレンティーナは、勇者一行の列の先頭に立つ。
白い外套が光を受けて揺れ、声があがる。

「聖女様だ!」「本当に戻ってきたんだ……!」

民の視線は温かく、まっすぐだった。
その光景に胸が少しだけ熱くなる。
旅の途中では、こんな穏やかな視線を向けられることはなかったからだ。

隣には勇者――レオン・アルヴェル。
隣国アルヴェル王国の第三王子であり、魔王を討ち果たした剣の担い手だ。

「皆、喜んでくれているな」

レオンは軽く笑った。
その笑みは素朴で、王族らしい威圧はない。
だからこそ、民に愛されるのだろう。

「レオン様が無事に戻ってきたからです」

私が答えると、彼は一瞬だけ私を見る。
あの戦場で幾度となく背中を預け合った相棒――そのまなざしは変わらない。

後方にはリリア、ハウンド、そしてシグルド。
皆が疲れた表情のまま、それでも誇らしく胸を張って歩いている。

パレードは続く。
けれど、違和感はすぐにやってきた。

王宮前の広場に入り、人々の歓声が最高潮に達した瞬間――
王族が姿を現した。
その列だけが、驚くほど静かだった。

王も王太子も、そして私の家族までもが、
まるで“魔物”でも見るように目を細めている。

どうしてだろう。
数刻前まで、民衆はあれほど喜んでくれたのに。

レオンもその視線に気づいた。
眉がわずかに寄る。

「歓迎されていない、ということか……」

「気にする必要はありません。式典を終えましょう」

そう言った私の声は、思った以上に冷静だった。
だが胸の奥に、ひんやりとしたものが沈んでいく。

王族と教会の上層部だけが、私たちを見ようとしない。

歓声の渦の中、そこだけが――
氷のように冷たかった。

この違和感が、全ての始まりだと私はまだ知らない。
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