婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊

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第二部 辺境の地

第12話 新しい生活

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討伐の翌日。
村は驚くほど活気に満ちていた。

家々の窓は開き、
子どもたちは外を走り回り、
大人たちは復旧作業を手伝いながら笑っている。

夕刻――
広場では簡単な宴が準備されていた。
狩れた魔物の肉、保存庫の干し野菜、焼きたての黒パン。
質素だが、心のこもった料理だ。

村長が声を張る。

「昨日の恩を忘れん! 勇者様も聖女様も、どうか座ってくれ!」

レオンは苦笑しながら席につく。

「勇者はやめてくれ。ここではただの旅人だ」

その言葉に、村人たちがほっとしたように笑った。

リリアは興味深そうに鍋を覗き込み、
ハウンドは子どもたちに囲まれて盾を持たされ、
シグルドは気配を消しつつも人々の視線の届く範囲に控えている。

ミアはというと――

「はい、この薬草茶をどうぞ。疲れが軽くなりますよ」

村人の手を取り、
声をかけながら一人ひとりの体調を確認していた。

孤児院で育ったせいか、
彼女が人に寄り添う姿は自然で、温かい。

「ミア、休まなくて大丈夫?」

「はい。エリシア様のお力になるのが、私の嬉しいことですから」

その素直な笑みに、胸が緩む。

宴が進むにつれ、
村人たちは勇者一行を“特別な存在”ではなく
“ここに住む仲間”として扱い始めた。

レオンが笑う。

「この村、悪くないな」

私は空を見上げる。
魔物の瘴気は薄れ、星がよく見えた。

「ええ。
 ここが……私たちの始まりになる気がするわ」

声に力はない。
けれど、心の奥で確かな灯がともった。

王都では与えられなかったもの。
家族も教会もくれなかったもの。

“居場所”という温度。

それを、この荒れた辺境領で初めて知った。

レオンが隣に立ち、
どこか安心したように言う。

「だったら、守りがいがある。
 ここをちゃんとした土地にしよう」

その横顔は旅のときと同じ、
まっすぐな光を帯びていた。

私は静かに頷く。

「ええ。ここからすべてを始めましょう」

――辺境領の再生と、新しい生活が動き出す。
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