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第三部 世界と対立
第27話 下された決定
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大理石の円卓が、冷たい光を返す。
世界会議の中心。各国の王と、教皇が並ぶ場に、私とレオンは向き合って座った。
なぜ勇者一行がそろっていないのか、その理由は簡単だ。
「エリシア、お前たちがこの場を離れている間、村の守りは任せろ」
そう言って、リリアたちは辺境の街に残ってくれた。
刺客が動いたばかりだ。背中を預けられる仲間がいる。それだけで心強かった。
円卓の王たちは、開口一番こう告げた。
「聖女エリシア。お前たちは国家の脅威である可能性がある」
続くように、別の王が言い放つ。
「辺境領で力を蓄えているのではないか」
「勇者の力で反乱を起こす気では」
退屈な予想どおりの“英雄封じ”の論調。
私は呼吸を整え、静かに答えた。
「私たちは民を救っています。脅威になる意思などありません」
レオンがすぐに続いた。
「それと……俺はもう、自国の王族ではない。あなた方が言う“国家に従う義務”はないはずだ」
王たちがざわつく。
「では、何の立場でここに来た」
レオンは迷わず答えた。
「エリシアの隣にいる者としてだ。王家の道具として扱われるより、彼女たちの暮らしを守る方が価値がある」
はっきりと言い切る横顔に、胸が熱くなる。
私は続ける。
「それに――辺境は“褒賞”として私に与えられた領地です。
報奨と称しながら、王都の命令を絶対視し、出土物をすべて献上しろと言う。それは褒賞ではなく支配です」
王たちが口をつぐむ。
私は教皇を見た。
「教皇猊下。私は聖女位を離れましたが、信徒として扱ってくださり、感謝しています。
そして監査官を送ってくださったおかげで、王太子夫妻の横暴から身を守れました」
教皇は、表情ひとつ変えずに微笑んだ。
「民を救う者を守るのは、教会の役目です。信徒であることに、変わりはありませんよ」
その一言が、会議の空気を決めた。
教皇は静かに宣言した。
「聖女エリシア、および勇者レオンを“国家の脅威”とは認めない。
彼らは世界の支えとなる存在だ」
円卓がざわめく。だが、教皇の権威は絶対だ。
さらに続く。
「辺境領は、エリシアの治める自治領として認める。
王都の不当な干渉は禁止とする」
王国の代表が慌てて立ち上がる。
「ま、待て!我が王太子夫妻の判断は――」
教皇は穏やかに、しかし容赦なく告げた。
「あなた方の王太子と王太子妃は、外交問題を引き起こした。
監査官クレインの報告により、事実は確認済みだ」
完全な“政治的失脚”。
リュシアとヘルマンの野望は、ここで終わった。
王国の側近が沈黙し、やがて低く頭を下げた。
「……王弟を、新たな王太子とする方向で調整いたします」
会議は、最終結論へと向かった。
「英雄との共存を取る。これが、世界の裁定だ」
私は深く息をついた。
ようやく、辺境が“私たちの家”として守られた。
レオンが、小声で囁いた。
「エリシア。これで……本当に、自由に生きられるな」
その言葉が、胸にじんと染みる。
私は彼を見つめ、静かにうなずいた。
世界が選んだ答えの先で、私たちの新しい未来が動き始める。
世界会議の中心。各国の王と、教皇が並ぶ場に、私とレオンは向き合って座った。
なぜ勇者一行がそろっていないのか、その理由は簡単だ。
「エリシア、お前たちがこの場を離れている間、村の守りは任せろ」
そう言って、リリアたちは辺境の街に残ってくれた。
刺客が動いたばかりだ。背中を預けられる仲間がいる。それだけで心強かった。
円卓の王たちは、開口一番こう告げた。
「聖女エリシア。お前たちは国家の脅威である可能性がある」
続くように、別の王が言い放つ。
「辺境領で力を蓄えているのではないか」
「勇者の力で反乱を起こす気では」
退屈な予想どおりの“英雄封じ”の論調。
私は呼吸を整え、静かに答えた。
「私たちは民を救っています。脅威になる意思などありません」
レオンがすぐに続いた。
「それと……俺はもう、自国の王族ではない。あなた方が言う“国家に従う義務”はないはずだ」
王たちがざわつく。
「では、何の立場でここに来た」
レオンは迷わず答えた。
「エリシアの隣にいる者としてだ。王家の道具として扱われるより、彼女たちの暮らしを守る方が価値がある」
はっきりと言い切る横顔に、胸が熱くなる。
私は続ける。
「それに――辺境は“褒賞”として私に与えられた領地です。
報奨と称しながら、王都の命令を絶対視し、出土物をすべて献上しろと言う。それは褒賞ではなく支配です」
王たちが口をつぐむ。
私は教皇を見た。
「教皇猊下。私は聖女位を離れましたが、信徒として扱ってくださり、感謝しています。
そして監査官を送ってくださったおかげで、王太子夫妻の横暴から身を守れました」
教皇は、表情ひとつ変えずに微笑んだ。
「民を救う者を守るのは、教会の役目です。信徒であることに、変わりはありませんよ」
その一言が、会議の空気を決めた。
教皇は静かに宣言した。
「聖女エリシア、および勇者レオンを“国家の脅威”とは認めない。
彼らは世界の支えとなる存在だ」
円卓がざわめく。だが、教皇の権威は絶対だ。
さらに続く。
「辺境領は、エリシアの治める自治領として認める。
王都の不当な干渉は禁止とする」
王国の代表が慌てて立ち上がる。
「ま、待て!我が王太子夫妻の判断は――」
教皇は穏やかに、しかし容赦なく告げた。
「あなた方の王太子と王太子妃は、外交問題を引き起こした。
監査官クレインの報告により、事実は確認済みだ」
完全な“政治的失脚”。
リュシアとヘルマンの野望は、ここで終わった。
王国の側近が沈黙し、やがて低く頭を下げた。
「……王弟を、新たな王太子とする方向で調整いたします」
会議は、最終結論へと向かった。
「英雄との共存を取る。これが、世界の裁定だ」
私は深く息をついた。
ようやく、辺境が“私たちの家”として守られた。
レオンが、小声で囁いた。
「エリシア。これで……本当に、自由に生きられるな」
その言葉が、胸にじんと染みる。
私は彼を見つめ、静かにうなずいた。
世界が選んだ答えの先で、私たちの新しい未来が動き始める。
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