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第五部 辺境の日々
第2話 名前
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朝の陽が差し込み、辺境の街に清らかな空気が流れ込んだ。
収穫祭の余韻がまだ街に残っている。
エリシアは町役場の前でレオンと並んでいた。
いつもと同じ朝なのに、胸の奥が少しだけ高鳴る。
“恋人”という言葉が、まだ肌に馴染んでいない。
「エリシア、今日の巡察は北門からにしよう」
自然に呼ばれた名前に、思わず肩が揺れた。
これまでと同じ声色なのに、距離が違う。
近い。息づかいまで分かるほど。
「ええ、レオン。北門に少し魔力の濃い場所があるみたいだから」
言った瞬間、自分で自分の声の柔らかさに気付いた。
レオンがわずかに目を細める。嬉しそうに。
「その……エリシアにそう呼ばれるだけで……隣にいられる証みたいに感じる」
落ち着いた声音だった。
押しつけがましくはない。それでも真っ直ぐで、エリシアの胸をくすぐる。
ミアが少し離れた場所から、その様子を微笑ましく見ていた。
「まあ、お二人とも」と言いたげな顔だ。
通りすがる村人も、優しい目で二人を見守る。
英雄の二人が恋人同士になったことは、もう街の噂になっていた。
エリシアは小さく息を吸い、覚悟を決める。
“考えて” “選んで” “動く”——それが自分だ。
「レオン。今日も一緒に頑張りましょう」
「もちろんだ、エリシア」
レオンの手が、ほんの一瞬だけ彼女の指先に触れた。
わざとではない。けれど自然すぎて、かえって心臓が跳ねる。
新しい呼び名は、二人の距離をそっと縮め続ける。
そしてエリシアは気付いた。
この距離はもう、後戻りできない。
(恋人として歩く日々が、本当に始まったのね)
その確信が、静かに胸に落ちた。
不思議なほど甘く、力強く。
収穫祭の余韻がまだ街に残っている。
エリシアは町役場の前でレオンと並んでいた。
いつもと同じ朝なのに、胸の奥が少しだけ高鳴る。
“恋人”という言葉が、まだ肌に馴染んでいない。
「エリシア、今日の巡察は北門からにしよう」
自然に呼ばれた名前に、思わず肩が揺れた。
これまでと同じ声色なのに、距離が違う。
近い。息づかいまで分かるほど。
「ええ、レオン。北門に少し魔力の濃い場所があるみたいだから」
言った瞬間、自分で自分の声の柔らかさに気付いた。
レオンがわずかに目を細める。嬉しそうに。
「その……エリシアにそう呼ばれるだけで……隣にいられる証みたいに感じる」
落ち着いた声音だった。
押しつけがましくはない。それでも真っ直ぐで、エリシアの胸をくすぐる。
ミアが少し離れた場所から、その様子を微笑ましく見ていた。
「まあ、お二人とも」と言いたげな顔だ。
通りすがる村人も、優しい目で二人を見守る。
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エリシアは小さく息を吸い、覚悟を決める。
“考えて” “選んで” “動く”——それが自分だ。
「レオン。今日も一緒に頑張りましょう」
「もちろんだ、エリシア」
レオンの手が、ほんの一瞬だけ彼女の指先に触れた。
わざとではない。けれど自然すぎて、かえって心臓が跳ねる。
新しい呼び名は、二人の距離をそっと縮め続ける。
そしてエリシアは気付いた。
この距離はもう、後戻りできない。
(恋人として歩く日々が、本当に始まったのね)
その確信が、静かに胸に落ちた。
不思議なほど甘く、力強く。
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