婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊

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第五部 辺境の日々

第16話 遠い知らせ

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王都から届いた書状は、ずいぶんと軽かった。

レオンが中身を読み、苦く笑う。

「……王太子ヘルマン殿下とリュシア嬢。政務放棄と不祥事の責任で、離宮に幽閉だそうだ」

その短い報せに、周囲の空気が少しだけざわつく。

エリシアはまばたきを一度だけして、手を止めた。

「そう。私たちには、もう関係のない話ね」

声に揺れはない。
けれどレオンは横目で彼女の指先がわずかに震えたのを見逃さなかった。

「……あの二人の噂は、辺境まで届いていた。
 民も貴族も、誰も信頼しなくなったらしい」

淡々とした報告の中に、少しの同情すら滲む。

エリシアは小さく息を吐いた。

「自ら選んだ道なのでしょう。
 人を踏みつけにして手に入れたものは、何一つ残らない」

その言葉は、過去の自分への決別のようにも聞こえた。

レオンはそっとエリシアの手を取る。

「君は、もう遠くを見なくていい。
 隣で、前だけを向いていればいい」

あたたかい掌が、迷いを溶かしていく。

エリシアも握り返す。

「ええ。私はここで、未来を築いていくわ。
 あなたたちと一緒に」

焚き火の揺らぎが、二人を照らした。

その光は、王都の闇よりもはるかに強い。

背中越しに遠ざかる声は、もう届かない。

この地こそ、エリシアの選んだ居場所なのだから。
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