婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊

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第五部 辺境の日々

第29話 プロポーズ

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丘の上は、夕暮れの光に包まれていた。
街の灯りが、少しずつ浮かび始めている。

エリシアは足を止め、眼下を見下ろした。
畑。家々。行き交う人の気配。
すべてが、ここで生きると決めた結果だ。

「……綺麗ね」

そう言うと、隣に立つレオンが小さく頷いた。

「君が守ってきた景色だ」

その言葉に、胸が温かくなる。
同時に、ここ数日の彼の様子が頭をよぎった。

――そわそわしていて。
――何かを隠しているようで。

エリシアは考える。
聞くべきか。
それとも、待つべきか。

少し迷ってから、選んだ。

「レオン」

名を呼ぶと、彼が息をのむのがわかった。
そして、ゆっくりとこちらを向く。

「……エリシア。少し、話してもいいか」

その声音は、いつもより低く、真剣だった。

エリシアは頷く。
逃げない。向き合うと決めた。

レオンは一歩前に出る。
夕陽を背にして、まっすぐに彼女を見る。

「俺は、王子として生きる道を捨て、生まれ育った国から離れた」

一度、言葉を切る。

「でも、後悔はない。
 君の隣で生きることを選んだからだ」

彼は懐から、小さな箱を取り出した。
エリシアは、息を忘れる。

「これは、ダンジョン鉱石で作った。
 この地で見つけ、この地で鍛えたものだ」

箱が開く。
中には、柔らかな光を宿した指輪。

「君と共に生きたい。
 一生、隣にいたい」

逃げ場のないほど、真っ直ぐな言葉。

エリシアの胸が、きゅっと鳴る。

彼女は考える。
この先の責任。
この地を背負う覚悟。

そして、選ぶ。

「……私も」

声が震える。
それでも、はっきりと言った。

「あなたと生きたい。
 この地で。これから先も」

涙が、一筋こぼれ落ちる。

「はい。よろしくお願いします」

レオンは一瞬、言葉を失い――
次の瞬間、強く、けれど優しく抱きしめた。

「ありがとう。エリシア」

その腕の中で、彼女は小さく息を吸う。
もう、迷わない。

二人の影が、丘の上で重なった。

街の灯りが、祝福するように瞬く。

――これは、終わりではない。
共に生きる未来への、確かな始まりだった。
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