冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊

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第六章 再開

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辺境伯城の会議室は、重苦しい空気に包まれていた。
辺境伯様をはじめ、領内の有力者たちが一堂に会し、私はいつものようにリシェル様の背後に控えていた。副官としての定位置――それは私の居場所であり、影としての務めだった。

卓の向こうで、アルノルト様が落ち着いた声で口を開く。

「……今回のスタンピード、魔物の暴走だけではありません。背後に、知能を持ち、群れを統率する存在――魔族が関与していると考えられます」

ざわめきが広がった。
魔族。滅多に姿を見せぬ存在だが、だからこそ脅威は計り知れない。
再び同じ災厄が起こる可能性が高い――その一言が、場の空気をさらに張り詰めさせた。

辺境伯様が低く応じる。

「王都からの支援が急務だな」

しかし、すぐに首を振る。

「だが、王都の騎士団が来たところで……団長ならともかく、並の騎士では歯が立つまい。むしろ避難民の受け入れと物資の補給、その方がまだ役に立つ」

卓上に広げられた地図を叩き、鋭い声で告げられた。

「私が上申書をまとめる。アルノルト殿、これを王都に届け、支援を引き出していただきたい」

アルノルト様はすぐに頭を垂れた。

「もちろんです。必ずや」

その姿は、穏やかさの裏に揺るぎない責任感を湛えていて、胸の奥がちくりとした。
――こういう方だからこそ、リシェル様が信頼を寄せられるのだろう。

会議が終わり、解散の声が響く。
去ろうとした私の視界に、アルノルト様がリシェル様へ歩み寄る姿が入った。学友としての挨拶――それだけだとわかっていても、胸の内にざわめきが広がる。思わず一歩引き、影に徹しようとした、その瞬間。

「カイ殿」

名を呼ばれ、息が詰まった。
視線を向けると、アルノルト様は自然な笑みで私とリシェル様、両方に向かって言葉をかけてきた。

「必ず支援を持って戻ります。また会いましょう」

あまりにも真っ直ぐで、揺るぎない言葉だった。
リシェル様が微笑みで応じる。私はただ、深く一礼するしかできなかった。

――やはり、この人は敵わぬお方だ。
そう思い知らされるほどに、胸は締めつけられていった。
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