悪役令嬢の破滅フラグ?転生者だらけの陰謀劇!勝者は誰だ

藤原遊

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夜風が涼しさを増す中、レティシアは再び庭園に足を運んでいた。月明かりが花々を照らし、その静けさが彼女の心を落ち着かせる。
だが、どこか胸の奥がざわついていた。

「……私、何を迷っているのかしら」

呟いたその声に答えるように、背後から足音が近づいてきた。

「迷うことは悪いことじゃないさ」

振り向くと、そこにはリシャールが立っていた。彼の顔には穏やかな笑みが浮かんでいるが、その目にはどこか決意めいた光が宿っていた。

「リシャール? こんな時間にどうしたの?」

「君に話したいことがあるんだ。ずっと、言うべきか迷っていたけれど、もう隠すのはやめようと思って」

その言葉に、レティシアは驚きと不安が入り混じった表情を浮かべた。

「話したいこと?」

「そうだ。僕の正体について……そして、どうしてこの国に来たのか」

リシャールの静かな声に、レティシアは息を飲んだ。彼が何を語ろうとしているのか、直感的にそれがただ事ではないと感じた。

「リシャール、あなたの正体って……?」

彼は一歩彼女に近づき、真剣な目で彼女を見つめた。

「僕は、この国の人間ではない。隣国から来た使者……いや、正式には次期公爵候補だ」

その言葉に、レティシアの目が見開かれた。だが、彼女は言葉を挟まず、ただ彼の話を聞き続けた。

「最初にこの国に来たのは、純粋に外交の一環だった。だけど、滞在中に感じたんだ。この国が抱えている問題や、それに直面する人々の強さを。そして、何より……君のことを知ったとき、ただの滞在者ではいられないと思った」

「私のことを?」

レティシアの問いに、リシャールは頷いた。

「君の振る舞い、知性、そして何よりも誰かを助けようとするその姿勢。それが僕にとって、忘れられない存在になったんだ」

彼の真摯な言葉に、レティシアは胸が熱くなるのを感じた。それと同時に、彼が隠していた秘密の重さに心が揺れた。

「……それで、あなたはどうして私にこれを話してくれるの?」

リシャールは少しだけ微笑みを浮かべ、優しい声で答えた。

「君に隠し事をしたままでは、これ以上近づけないと思ったからだ。僕は君に全てを伝えたかった。そして、君が何かを抱えているなら、僕にもそれを共有してほしい」

その言葉に、レティシアは小さく息をついた。

(彼は、私に信じてほしいと言っている。でも……私の転生のことを話して、彼はどう思うのだろう)

迷いながらも、リシャールの目を見ると、その中には嘘偽りのない信頼が宿っているのが分かった。

「リシャール、私も……話さなければならないことがあるわ」

「レティシア?」

彼女は少し躊躇しながらも、ゆっくりと口を開いた。

「私……普通の人間じゃないの。この世界に生まれる前の記憶があるわ。まるで別の世界から来たみたいに……」

リシャールの目がわずかに驚きで揺れたが、すぐに真剣な表情を浮かべた。

「つまり、君は……」

「ええ。転生者よ」

レティシアは覚悟を決めたようにそう告げた。リシャールは一瞬だけ黙ったが、その後すぐに微笑みを浮かべた。

「なるほど。それで、時々君が他の人と違う視点を持っている理由が分かったよ」

「……それだけ?」

レティシアは思わず声を上げた。その反応に驚くどころか、リシャールは柔らかく笑った。

「君がどんな過去を持っていても、今の君が君であることには変わらない。それに、僕も今、君の前にこうして全てを明かしたんだ。お互い、同じだろう?」

その言葉に、レティシアの目には涙が浮かんだ。彼の受け入れる姿勢と変わらない信頼が、彼女の心を温かく包み込んでいた。

「リシャール……本当にありがとう」

「感謝されることじゃないさ。僕が信じているのは、君そのものだから」

彼はそっと彼女の手を取った。その温もりに、レティシアの胸の中にあった不安は、ゆっくりと溶けていった。

(私はもう、隠さなくていい。この人なら……信じられる)

レティシアは静かに目を閉じ、その手のぬくもりをしっかりと感じた。
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