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第4話 追放
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騎士団長追放の知らせは、王城よりも早く訓練場に届いた。
誰かが声高に触れ回ったわけではない。ただ噂として、静かに広がった。
――グランツ家が切り捨てられた。
――騎士団は解体される。
それだけで、十分だった。
騎士たちは、一人、また一人と判断を下した。怒号も抗議もない。あったのは、淡々とした準備だけだ。
解体に伴い、最後の報酬が支払われる。剣を預け、鎧を返し、長年の務めに終止符を打つ。その金を受け取った者の多くが、そのまま国を去る決断をした。
残る理由が、もはやなかった。
騎士団は、この国の最後の保険だった。それを自ら切り捨てた王国に、未来はない。
それを、彼らは知っている。
「団長は、どこへ行かれるのですか」
城門の近くで、そう尋ねられた。
ヴァレリアは、隠すことなく答えた。
「グラディウス帝国へ」
その名を聞いた瞬間、何人もの騎士が顔を上げた。
帝国は厳しい国だ。人種差別もある。出自による偏見も、決して少なくはない。
だが、実力を示せば上へ行ける。それだけは、確かだった。
「理想を語る国より、現実を選ぶ」
誰かが、そう呟いた。
人種平等を掲げながら、自国民以外の財産保有を禁じる国。
口では受け入れると言いながら、決して居場所を与えない国。
そうした例を、彼らは嫌というほど見てきた。
グラディウス帝国は違う。公平ではないが、嘘はつかない。
力があれば、使われる。ただ、それだけの国だ。
「行き先が同じなら、一緒に行かせてください」
そう言い出す者は、一人ではなかった。
騎士だけではない。その家族、鍛冶師、補給係。騎士団に関わって生きてきた人々が、次々に動き出す。
ヴァレリアの出国を知ったグランツ家の屋敷でも、同じだった。
「お嬢様が行かれるなら、私たちも」
「残る理由がありません」
使用人たちは、当然のように荷をまとめ始める。誰一人として、止まらなかった。
こうして、小さな追放は大きな移動へと変わった。
家族連れの馬車、荷を積んだ荷車、歩いて向かう者たち。城門の外には、静かな列ができていた。
王都の人々は、それを遠巻きに眺めるだけだった。引き止める声も、別れの言葉もない。
ただ、何か大切なものが抜け落ちていく感覚だけが、街に残される。
ヴァレリアは、その列の先頭に立っていた。
もう、振り返らなかった。
この国は、彼女を追放したのではない。
自分から、守りを手放したのだ。
国境へ向かう道は、思いのほか静かだった。
嵐の前兆は、いつもこんなものだ。
誰かが声高に触れ回ったわけではない。ただ噂として、静かに広がった。
――グランツ家が切り捨てられた。
――騎士団は解体される。
それだけで、十分だった。
騎士たちは、一人、また一人と判断を下した。怒号も抗議もない。あったのは、淡々とした準備だけだ。
解体に伴い、最後の報酬が支払われる。剣を預け、鎧を返し、長年の務めに終止符を打つ。その金を受け取った者の多くが、そのまま国を去る決断をした。
残る理由が、もはやなかった。
騎士団は、この国の最後の保険だった。それを自ら切り捨てた王国に、未来はない。
それを、彼らは知っている。
「団長は、どこへ行かれるのですか」
城門の近くで、そう尋ねられた。
ヴァレリアは、隠すことなく答えた。
「グラディウス帝国へ」
その名を聞いた瞬間、何人もの騎士が顔を上げた。
帝国は厳しい国だ。人種差別もある。出自による偏見も、決して少なくはない。
だが、実力を示せば上へ行ける。それだけは、確かだった。
「理想を語る国より、現実を選ぶ」
誰かが、そう呟いた。
人種平等を掲げながら、自国民以外の財産保有を禁じる国。
口では受け入れると言いながら、決して居場所を与えない国。
そうした例を、彼らは嫌というほど見てきた。
グラディウス帝国は違う。公平ではないが、嘘はつかない。
力があれば、使われる。ただ、それだけの国だ。
「行き先が同じなら、一緒に行かせてください」
そう言い出す者は、一人ではなかった。
騎士だけではない。その家族、鍛冶師、補給係。騎士団に関わって生きてきた人々が、次々に動き出す。
ヴァレリアの出国を知ったグランツ家の屋敷でも、同じだった。
「お嬢様が行かれるなら、私たちも」
「残る理由がありません」
使用人たちは、当然のように荷をまとめ始める。誰一人として、止まらなかった。
こうして、小さな追放は大きな移動へと変わった。
家族連れの馬車、荷を積んだ荷車、歩いて向かう者たち。城門の外には、静かな列ができていた。
王都の人々は、それを遠巻きに眺めるだけだった。引き止める声も、別れの言葉もない。
ただ、何か大切なものが抜け落ちていく感覚だけが、街に残される。
ヴァレリアは、その列の先頭に立っていた。
もう、振り返らなかった。
この国は、彼女を追放したのではない。
自分から、守りを手放したのだ。
国境へ向かう道は、思いのほか静かだった。
嵐の前兆は、いつもこんなものだ。
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