騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました

藤原遊

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第7話 王国最後の1週間①

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ヴァレリア・グランツが国を去った翌日、
フローリア王国の王城は、驚くほど静かだった。

混乱はない。
反乱も起きていない。
街はいつも通りに動いている。

それを見て、
王子エドガーは満足そうに頷いた。

「ほら、何も起きていないだろう」

謁見の間で、彼はそう言った。
騎士団解体の判断は正しかった。
武力に頼らずとも、国は回る。
そう証明された気分だった。

側近たちは、曖昧に同意する。
誰も、異論を口にしない。

異論を言える者は、
もう城にはいなかった。

一日目、
騎士団の施設は閉鎖された。

訓練場からは人の気配が消え、
武器庫は封鎖される。
見慣れた光景が、音もなく失われていった。

「無駄な維持費が減ったな」

エドガーは軽く笑う。

「これで国の財政も楽になる」
「平和な国に、あれほどの兵はいらない」

その隣で、マリエルは小さく頷いた。

「怖かったですもの」
「剣や鎧なんて……」

守られる側の感想として、
それ以上の言葉はなかった。

二日目、
周辺国の動きが慌ただしくなった。

国境付近での通行量が増え、
商人たちが遠回りを始める。
それは、危険を避ける者たちの自然な判断だった。

報告は上がっていた。
だが、深刻には扱われなかった。

「様子見だろう」
「こちらが武力を持たないと示したのだ。
 無用な警戒は解ける」

エドガーは、そう信じていた。

信じたい、というより、
疑うという選択肢を持っていなかった。

三日目、
城下で小さな問題が起き始める。

盗み。
小競り合い。
治安の乱れ。

これまでなら、
騎士団が即座に対処していた事案だった。

だが今は、
対応が遅れる。

「警備兵を増やせばいい」

エドガーは簡単に言う。

だが警備兵は、
騎士ではない。

訓練も経験も足りず、
抑止力にはならなかった。

街の空気が、
わずかに変わる。

人々は、
まだ気づいていない。

ただ、
理由の分からない不安が、
足元に溜まり始めている。

王城では、
それを感じ取る者はいなかった。

エドガーは、
自らの判断が正しかったことを疑っていない。

「見ただろう」
「三日経っても、国は無事だ」

それが、
彼にとっての結論だった。

守りを失った国が、
崩れるまでには時間がかかる。

だからこそ、
多くの国は滅びる直前まで、
自分たちが安全だと信じている。

フローリア王国も、
その例外ではなかった。

四日目が、
近づいていた。
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