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第8話 王国最後の1週間②
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四日目、最初の報せは国境から届いた。
侵入ではない。侵攻だった。複数の軍勢が、同時に国境を越えているという知らせだった。
「……同盟国は?」
エドガーが問い返す。だが返ってきたのは、歯切れの悪い沈黙だった。誰も、援軍を約束していない。騎士団を解体した国に肩入れする理由は、どこにもなかった。
迎撃を命じようとして、エドガーは言葉を詰まらせた。迎撃する兵がいない。集められたのは警備兵だけで、それは守っているつもりになるための数合わせに過ぎなかった。
五日目、城壁の一部が破られた。
敵は無駄な損耗を避けていた。正面から押すのではなく、守りの薄い場所を選び、確実に進む。指揮官が戦を知っている動きだった。
街に混乱が広がる。逃げ惑う人々、閉じられる店、行き場を失う声。これまで騎士団が立っていた場所には、誰もいない。
六日目、王城への道が開いた。
王族は避難を試みたが、遅すぎた。城を出る前に包囲され、抵抗らしい抵抗は成立しなかった。王はその日のうちに捕らえられ、詳細は後に伝えられることになる。
七日目、フローリア王国は事実上、終わった。
王族は処断され、国を統べる者はいなくなる。エドガーは最後まで状況を理解できていなかった。
「僕は、国のために――」
そう言いかけて、言葉を遮られる。彼は、自分を英雄だと信じていた。武力を捨て、平和を選んだ王子。その物語を、最後まで語るつもりだったのだろう。
だが、語る相手はいない。
捕らえられた彼は、スパイとして働いていたと吹聴され、街の外れに晒された。真偽は、もはや問題ではなかった。民衆は、投げる理由を求めていただけだ。
石が飛び、罵声が重なる。
彼は、何も理解しないまま終わった。
城壁の外では煙が上がっている。それは戦火の煙ではない。国が、片づけられていく煙だった。
守る力を失った国は、抵抗する時間すら与えられない。そのことを、フローリア王国は七日かけて証明した。
同じ頃、遠く離れた地で、ヴァレリア・グランツは報告書に目を通していた。国名を見ただけで、彼女は先を読まなかった。必要な情報は、すでに分かっていたからだ。
力を火種と呼んだ国は、火に包まれた。
それだけの話だった。
侵入ではない。侵攻だった。複数の軍勢が、同時に国境を越えているという知らせだった。
「……同盟国は?」
エドガーが問い返す。だが返ってきたのは、歯切れの悪い沈黙だった。誰も、援軍を約束していない。騎士団を解体した国に肩入れする理由は、どこにもなかった。
迎撃を命じようとして、エドガーは言葉を詰まらせた。迎撃する兵がいない。集められたのは警備兵だけで、それは守っているつもりになるための数合わせに過ぎなかった。
五日目、城壁の一部が破られた。
敵は無駄な損耗を避けていた。正面から押すのではなく、守りの薄い場所を選び、確実に進む。指揮官が戦を知っている動きだった。
街に混乱が広がる。逃げ惑う人々、閉じられる店、行き場を失う声。これまで騎士団が立っていた場所には、誰もいない。
六日目、王城への道が開いた。
王族は避難を試みたが、遅すぎた。城を出る前に包囲され、抵抗らしい抵抗は成立しなかった。王はその日のうちに捕らえられ、詳細は後に伝えられることになる。
七日目、フローリア王国は事実上、終わった。
王族は処断され、国を統べる者はいなくなる。エドガーは最後まで状況を理解できていなかった。
「僕は、国のために――」
そう言いかけて、言葉を遮られる。彼は、自分を英雄だと信じていた。武力を捨て、平和を選んだ王子。その物語を、最後まで語るつもりだったのだろう。
だが、語る相手はいない。
捕らえられた彼は、スパイとして働いていたと吹聴され、街の外れに晒された。真偽は、もはや問題ではなかった。民衆は、投げる理由を求めていただけだ。
石が飛び、罵声が重なる。
彼は、何も理解しないまま終わった。
城壁の外では煙が上がっている。それは戦火の煙ではない。国が、片づけられていく煙だった。
守る力を失った国は、抵抗する時間すら与えられない。そのことを、フローリア王国は七日かけて証明した。
同じ頃、遠く離れた地で、ヴァレリア・グランツは報告書に目を通していた。国名を見ただけで、彼女は先を読まなかった。必要な情報は、すでに分かっていたからだ。
力を火種と呼んだ国は、火に包まれた。
それだけの話だった。
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