十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】

藤原遊

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夜の帳が降りると、屋敷は静まり返った。
カーテンの隙間からは、月の光が薄く差し込んでいる。
風は止み、鳥も眠りにつき、外の世界がひとつ、遠くなったように感じられる。

私はベッドの上に腰掛けたまま、窓の外を見つめていた。

今日という一日。
街の賑わい、レオニスの笑顔、兄の静かな眼差し。
それらすべてが夢のように現実で、現実のように儚い。

(何度目の春だろう)

もう数えるのはやめてしまったけれど、
今日のような日は、記憶の底に澱のように積もっていく。

同じ光景。
同じ笑顔。
同じ優しさ。
それを何度も受け取りながら、私はいつも何もできないまま、
十八歳の死を迎えてきた。

(私は、生きたいのかしら)

自問する。けれど、答えは浮かばない。

ただ、“繰り返している”という事実だけが、私をここに座らせている。
本来なら、とっくに終わっていたはずの人生を、何者かの手で再生され続けているだけ。

理由もわからない。
意味も、与えられていない。
誰にも頼んでなどいないのに、私はこうして目を覚まし続けている。

「……つかれてるのよ、きっと」

ぽつりとつぶやいた言葉が、部屋の中で虚しく響いた。

でも――それでも。

今日、レオニスが笑ってくれた。
カミラが心配そうに手を伸ばしてくれた。
兄が、何も言わずに隣を歩いてくれた。

それだけで、私はまた“生きよう”と思ってしまう。

(だから苦しいのよ。愛されるたびに、忘れられなくなる)

終わるとわかっている日々を、もう一度始めることの重さ。
それでも、逃げられない。
忘れたくない。
失いたくない。

(どうせまた死ぬのなら――)

私は目を閉じる。
月の光がまぶたに滲んだ。

(せめて今度は、誰かの手を取ったまま、最後まで行きたい)

そう思った。
それが、私に残された、唯一の希望の形だった。
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