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3章 紅蓮の将との邂逅
①
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フィオラは辺境伯家の会議室で地図に目を落としていた。
国境付近での隣国の動きが活発化し、各地で散発的な衝突が起きている報告が次々と届いている。数日前に起きた村の襲撃も、より大きな侵攻の前触れだった可能性が高いと判断された。
「彼らの狙いは、この辺りの補給路だと思われます。」
地図の一点を指し示す彼女の指先に、周囲の騎士や家臣たちの視線が集まる。
その言葉には自信があり、彼女が前世で積み上げた戦術の知識に裏打ちされていた。
父アルベルトが静かに頷いた。
「そうだな。この地域を狙われるのは予想の範囲内だ。我々が先手を打つべきだろう。」
フィオラも同意しようと口を開きかけたその時、部屋の扉が乱暴に叩かれた。
入ってきたのは斥候の一人だった。
「報告します!敵軍が国境を越え、こちらに進軍中とのこと!」
一瞬、部屋に緊張が走る。
「数は?」アルベルトが低い声で問う。
「およそ二千。中心には『紅炎の術師団』が確認されています。」
その名を聞いた瞬間、部屋の空気が一層重くなった。
紅炎の術師団――隣国の精鋭部隊であり、その指揮官であるライナー・フォルクスは「紅蓮の将」として名を馳せている。
「紅炎の術師団……。」フィオラはその名を口の中で繰り返した。
その背後で、ロイドが眉をひそめる。
「ライナー・フォルクスか。嫌な相手だな。」
フィオラはロイドの言葉に目を向けた。
「その名前、何か知ってるの?」
「知ってるも何も、彼の戦いぶりは噂になってる。破壊力の高い火属性の魔法を操る天才で、指揮能力も群を抜いている。しかも、情け容赦ないらしい。」
「……情け容赦ない、ね。」
フィオラの胸に微かな緊張が走る。戦略魔法使いとしての力を持つ彼が敵に回るとなれば、こちらの防衛は容易ではないだろう。それでも、彼女は視線を落とさなかった。
「私が行きます。」
その言葉に、アルベルトをはじめとする全員が驚いた顔を向ける。
「フィオラ、お前が前線に出る必要はない。」
アルベルトが静かに制止する。
「でも、戦略魔法使いは私しかいないのよ。彼を止められる可能性があるとすれば、私しかいないわ。」
フィオラの目はまっすぐだった。
自分にしかできない役割がある。それを果たさなければならないと彼女は確信していた。
数日後、国境付近の前線。
フィオラとロイドが陣を敷く中、敵軍が徐々に姿を現し始めた。
「本当に来たな。」ロイドが低い声で呟く。
遠くの地平線から見えるのは、紅炎の術師団の旗印だった。
その中心に立つ人物――金の装甲に身を包み、燃え上がるような赤いマントを翻しているのがライナー・フォルクスだった。
「……彼が、紅蓮の将。」
フィオラは遠くを見据えながら小さく息を飲む。
距離があるにも関わらず、その存在感はまるで炎のように圧倒的だった。
「君、怯えてるのか?」
ロイドの言葉に、フィオラは首を横に振る。
「いいえ。ただ、妙に……気になるの。」
「気になる?」
フィオラは自分でも説明がつかない感覚に戸惑いながら、それ以上言葉を続けられなかった。初めて目にしたはずの相手なのに、どこか既視感があった。その感覚がどこから来るのか、わからないまま心をざわつかせていた。
国境付近での隣国の動きが活発化し、各地で散発的な衝突が起きている報告が次々と届いている。数日前に起きた村の襲撃も、より大きな侵攻の前触れだった可能性が高いと判断された。
「彼らの狙いは、この辺りの補給路だと思われます。」
地図の一点を指し示す彼女の指先に、周囲の騎士や家臣たちの視線が集まる。
その言葉には自信があり、彼女が前世で積み上げた戦術の知識に裏打ちされていた。
父アルベルトが静かに頷いた。
「そうだな。この地域を狙われるのは予想の範囲内だ。我々が先手を打つべきだろう。」
フィオラも同意しようと口を開きかけたその時、部屋の扉が乱暴に叩かれた。
入ってきたのは斥候の一人だった。
「報告します!敵軍が国境を越え、こちらに進軍中とのこと!」
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「およそ二千。中心には『紅炎の術師団』が確認されています。」
その名を聞いた瞬間、部屋の空気が一層重くなった。
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「紅炎の術師団……。」フィオラはその名を口の中で繰り返した。
その背後で、ロイドが眉をひそめる。
「ライナー・フォルクスか。嫌な相手だな。」
フィオラはロイドの言葉に目を向けた。
「その名前、何か知ってるの?」
「知ってるも何も、彼の戦いぶりは噂になってる。破壊力の高い火属性の魔法を操る天才で、指揮能力も群を抜いている。しかも、情け容赦ないらしい。」
「……情け容赦ない、ね。」
フィオラの胸に微かな緊張が走る。戦略魔法使いとしての力を持つ彼が敵に回るとなれば、こちらの防衛は容易ではないだろう。それでも、彼女は視線を落とさなかった。
「私が行きます。」
その言葉に、アルベルトをはじめとする全員が驚いた顔を向ける。
「フィオラ、お前が前線に出る必要はない。」
アルベルトが静かに制止する。
「でも、戦略魔法使いは私しかいないのよ。彼を止められる可能性があるとすれば、私しかいないわ。」
フィオラの目はまっすぐだった。
自分にしかできない役割がある。それを果たさなければならないと彼女は確信していた。
数日後、国境付近の前線。
フィオラとロイドが陣を敷く中、敵軍が徐々に姿を現し始めた。
「本当に来たな。」ロイドが低い声で呟く。
遠くの地平線から見えるのは、紅炎の術師団の旗印だった。
その中心に立つ人物――金の装甲に身を包み、燃え上がるような赤いマントを翻しているのがライナー・フォルクスだった。
「……彼が、紅蓮の将。」
フィオラは遠くを見据えながら小さく息を飲む。
距離があるにも関わらず、その存在感はまるで炎のように圧倒的だった。
「君、怯えてるのか?」
ロイドの言葉に、フィオラは首を横に振る。
「いいえ。ただ、妙に……気になるの。」
「気になる?」
フィオラは自分でも説明がつかない感覚に戸惑いながら、それ以上言葉を続けられなかった。初めて目にしたはずの相手なのに、どこか既視感があった。その感覚がどこから来るのか、わからないまま心をざわつかせていた。
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