戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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6章 将たちの対話

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ロイドは剣を握る手に力を込めながら、フィオラとライナーのやり取りを見つめていた。
フィオラの決断を尊重するという気持ちはある。彼女の信念を知っているからこそ、その判断が彼女自身を裏切らないことも理解している。

だが、それでも心の奥底で湧き上がる感情を抑えきれなかった。

「どうして、フィオラはこんなにもあいつに惹かれるんだ……。」

フィオラがライナーの言葉を受け入れた瞬間、ロイドの胸には鋭い痛みが走った。彼にとって、フィオラの隣にいるのは常に自分でありたいと思っていた。だが、彼女は目の前の敵将に興味を抱き、彼の話を真剣に聞いている。

「フィオラ……お前は俺たちの指揮官だ。それだけじゃない……俺にとっては……。」

ロイドはその思いを口にすることができないまま、フィオラの背中を見つめていた。

フィオラがライナーに向き直り、彼の言葉に応えるのを見たロイドは、再び心を乱された。彼の胸には、一つの疑問が膨らんでいた。

「俺にはお前を守ることしかできないのか?それだけで、お前の隣に立つ資格があるのか?」

ライナーが「影」について語り、それに動揺するフィオラを支えたいという気持ちはあった。だが、ライナーが示す冷静さや知略、そしてその言葉にフィオラが耳を傾ける様子を見るたびに、ロイドは自分が無力に感じられるのだった。

「俺は、ただの剣士だ。お前の理想を支えるには、それだけじゃ足りないのかもしれない……。」

彼は剣を収めながら、ふとフィオラの横顔を見つめた。
その表情は確かに迷っているが、同時に新たな決意が宿っているようにも見えた。

「お前は、どこまで強くなるんだ……。」

陣営に戻った後、ロイドは夜の静寂の中で一人剣を振っていた。
暗闇の中で剣を振り下ろすたびに、自分の中の苛立ちや焦りが少しずつ消えていく気がした。

「守る。それしかできないとしても、俺はそれをやり遂げる。」

自分に何ができるのかを問い続けながらも、彼は一つの答えにたどり着いていた。

「俺はフィオラを守る。それがどんな状況でも、どんな相手でも……。」

その時、背後からフィオラの声が聞こえた。

「ロイド……こんな時間に何をしているの?」

振り向いた彼は、少し驚いた表情を見せた。

「お前こそ、まだ起きていたのか。」

「少し考え事をしていて……。」

フィオラはそう言いながら、彼の隣に歩み寄った。夜風が彼女の髪を揺らし、その姿が妙に儚く見える。

「ロイド、あなたには感謝しているわ。」

突然の言葉に、ロイドは一瞬言葉を失った。

「……なんで急にそんなことを言うんだ。」

「あなたがいつも私を守ってくれていること、そのおかげで私は自分の道を選べる。だから……ありがとう。」

フィオラの笑顔に、ロイドは心の奥底が熱くなるのを感じた。だが、その言葉がどこか遠くに響くようにも感じられた。

「……フィオラ、お前が選ぶ道がどんなものでも、俺はそれを支える。それだけは覚えておいてくれ。」

「ええ。あなたがいる限り、私はきっと大丈夫。」

フィオラの言葉に、ロイドは微笑み返したものの、その胸にはまだ言い表せない感情が渦巻いていた。

翌日、フィオラは部隊に影の存在を探る動きを指示し、ロイドもそれを見守りながら戦力を整えていた。だが、その中でも彼の視線は常にフィオラに向けられていた。

「俺はお前に追いつけるのか……それとも、ずっと支えるだけなのか。」

ロイドの心の葛藤は、戦いの中でさらに深まっていくのだった。
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