魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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9章 失われし魔法の塔

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塔の階段を上り、次の階層へと進む二人。途中で足元の床がわずかに揺れるたびに、アリアは剣を握りしめ、周囲を警戒していた。

「ふぅ……この塔、階段が多いね。もう少し楽な道があればいいのに。」
アリアが肩で息をしながらつぶやく。

「それほどの障害がなければ、塔の秘密が残っているはずもありません。」
イアンが淡々と答える。

「そりゃそうだけど……剣の力を使うたびに疲れるのも、結構きついんだよね。」
アリアは「選ばれし刃」をちらりと見やりながら言った。

「無理をするな。剣に頼るのは、必要な場面に限定すべきだ。」
イアンは彼女を一瞥し、足を止めた。

「もう少し休んだ方がいいかもしれない。」

「えっ、イアンがそんなこと言うなんて珍しいじゃん!」
アリアが驚いた表情を浮かべる。

「……君が倒れたら、それこそ冒険が終わりだからな。」
イアンが視線を逸らしながら静かに答えた。

アリアはその言葉に少しだけ笑顔を浮かべ、「ありがとう」と短く返した。

しばしの休憩を取った後、二人はさらに奥へと進んだ。階段を上りきると、そこには広い部屋が広がっていた。中央には巨大な魔法陣が描かれており、そこから赤い光が淡く揺らめいている。

「これは……単なる装飾ではない。何かが起こる前兆だ。」
イアンが杖を握りしめながら言う。

その言葉通り、魔法陣が輝きを増し、部屋全体が振動し始めた。次の瞬間、魔法陣の中から無数の魔物が現れた。それらは小型のゴーレムのような姿をしており、目に埋め込まれた赤い宝石が不気味に光っている。

「数が多い……これ、かなり厄介だね!」
アリアが剣を構えながら叫ぶ。

「これほどの数を一度に相手にするのは危険です。防御を優先して退避を検討するべきです。」
イアンが冷静に判断する。

「いや、ここで逃げたら次に進めないじゃん!やるしかないよ!」
アリアが突進し、最初のゴーレムに剣を振り下ろした。

アリアの「選ばれし刃」が青白い光を放ち、ゴーレムの体を真っ二つにする。だが、その光が発せられた瞬間、アリアの足がふらついた。

「くっ……まただ。」
アリアが小さく息を呑む。

「アリア!」
イアンが杖を振り、氷の壁を生成して彼女を守る。

「無理をするなと言ったはずだ!」
イアンの声が少しだけ鋭く響いた。

「でも、剣を使わないとこいつら倒せないんだもん!」
アリアは顔を上げ、剣を握り直した。

イアンは歯を食いしばりながら、自分の魔法で残りのゴーレムを足止めする。だが、魔物の数は多く、次第に二人を取り囲むように押し寄せてきた。

「イアン、もうちょっと持ちこたえて!」
アリアが叫びながら再び剣を振るう。

その瞬間、剣の光がさらに強く輝き、周囲の魔物を一気に吹き飛ばした。だが、その代償としてアリアは膝をつき、息を切らしていた。

「大丈夫か!」
イアンが彼女に駆け寄る。

「だ、大丈夫……。でも、やっぱりこの剣、疲れるよ……。」
アリアは苦しそうに微笑みながら答えた。

イアンは彼女の肩に手を置き、周囲を警戒しながら静かに言った。

「君のその剣には、何か代償がある。それを理解しない限り、危険を伴う戦いを続けることになる。」

アリアは彼の言葉に小さく頷き、再び立ち上がった。

「でも、大丈夫。これくらい、慣れれば平気だよ。」
彼女の無邪気な笑顔を見て、イアンは何かを言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。

(彼女の強さに頼るだけでは、いずれ限界が来る……。)

部屋の魔法陣が光を失い、静寂が戻った。二人は少しだけ息を整えた後、さらに奥へと進む準備を整えた。その先に何が待つのか、まだ誰も知る由もない。






ステータス画面

アリア・マーウェラ

• レベル: 13
• 職業: 剣士(盾なし)
• 体力: 31
• 魔力: 0
• 力: 27
• 敏捷: 20
• 器用: 16
• 知力: 9
• 精神: 12

スキル一覧

• 剣の扱い Lv.5
• 投擲 Lv.1
• 身体強化 Lv.2
• 戦闘直感(パッシブ)
• 特別装備: 選ばれし刃(第一段階解放 / 魔力を断ち切る力 / 使用時に疲労を伴う)

イアン

• レベル: 14
• 職業: 魔法使い(呪術特化)
• 体力: 10
• 魔力: 44
• 力: 6
• 敏捷: 12
• 器用: 14
• 知力: 28
• 精神: 26

スキル一覧

• 氷結魔法 Lv.4
• 魔力制御 Lv.3
• 詠唱短縮 Lv.2
• 炎魔法付与 Lv.1
• 呪いの触(自動発動 / パッシブ)
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