魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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9章 失われし魔法の塔

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街を出発して数日、アリアとイアンは「失われた魔法の塔」のふもとにたどり着いた。その塔は高くそびえ立ち、まるで空を突き刺すような異様な存在感を放っている。周囲には魔力が漂い、草木が枯れ果てていた。

「うわー……ここ、雰囲気からして不気味だね。」
アリアが塔を見上げながらつぶやく。

「この塔はかつて魔族が使っていた研究施設だったと言われています。その魔力が今も残り、魔物の巣窟となっている。」
イアンが冷静に説明する。

「じゃあ、何かすごいお宝とかも残ってるかもね!」
アリアが目を輝かせる。

「軽い気持ちで入る場所ではありません。内部には強力な魔物や仕掛けが待ち受けているはずです。」
イアンが警戒を促す。

「分かってるよ!ほら、行こう!」
アリアは剣を握り直し、塔の入口へと足を進めた。

塔の入口は開かれており、内部には薄暗い光が差し込んでいた。足を踏み入れると、ひんやりとした空気が二人を包み込む。

「うわ、冷たい……これも魔力の影響?」
アリアが周囲を見回しながら言う。

「おそらくそうでしょう。この冷気は、塔の仕掛けを動かす魔力から発生しているものです。」
イアンが杖を掲げ、小さな光を灯した。

その光が壁を照らすと、古代の魔法陣のような模様が浮かび上がった。それはまるで、生き物のようにゆっくりと動いている。

「何これ……動いてる?」
アリアが驚きの声を上げる。

「おそらく、この塔全体が一つの魔法陣として機能しているのでしょう。」
イアンが慎重に観察しながら答えた。

二人が歩みを進めると、突然、床の一部が光り始めた。その光は二人を中心に円を描き、次第に鮮やかな赤に変わっていく。

「罠か!?」
イアンが警戒する。

次の瞬間、床から黒い煙が噴き出し、それが次第に人型を形作った。現れたのは、漆黒の甲冑を纏った騎士のような魔物だった。

「また出たか……!」
アリアが剣を構える。

「この魔物は、この塔を守る役割を担っているのでしょう。簡単には先へ進ませてもらえません。」
イアンが冷静に構えた。

騎士型の魔物は無言のまま、漆黒の大剣を振り上げて襲いかかってきた。アリアはそれをギリギリで受け止める。

「硬っ!こいつ、めちゃくちゃ力強いよ!」
アリアが剣を押し返しながら叫ぶ。

「この魔物は魔力で形成された存在。通常の武器では有効ではありません。」
イアンが氷の魔法を放つが、魔物の体に当たるとすぐに溶けて消えた。

「またかよ!じゃあ、あの剣じゃないと倒せないんだね!」
アリアは「選ばれし刃」を抜き、光る刃を振りかざした。

剣が魔物に触れた瞬間、青白い光が魔物の体を包み込む。その光は魔物の動きを鈍らせ、霧のような体を一部切り裂いた。

「効いてる……!」
アリアが息を整えながら構え直す。

「その剣の力を使って、この魔物を完全に断ち切るしかありません。」
イアンが言葉でサポートする。

アリアは再び魔物に向かって突進した。魔物の大剣が迫る中、彼女は瞬時にその刃をかわし、「選ばれし刃」を勢いよく振り下ろす。

剣が魔物の核心を貫いた瞬間、魔物は苦しげな叫び声を上げ、黒い霧となって消え去った。

「ふぅ……なんとか倒せた。」
アリアが剣を下ろし、深呼吸をする。

しかしその直後、彼女の肩が僅かに震え、息遣いが荒くなった。

「……アリア、大丈夫か?」
イアンが眉をひそめる。

「うん、大丈夫……たぶんね。でも、ちょっと疲れるかも。この剣を使うと、なんか力が抜ける感じがするんだよね。」
アリアが額の汗を拭いながら答える。

「剣の力が君自身の生命力に影響を与えている可能性があります。使い方には慎重になるべきです。」
イアンの声には、わずかな不安が滲んでいた。

「そっか。でも、これがなかったら戦えないし……仕方ないよね。」
アリアは無理に笑みを浮かべたが、その顔にはほんの少しの疲労が見え隠れしていた。

二人は再び歩みを進めた。その奥にはさらに複雑な仕掛けや魔物が待ち受けている。しかし、アリアは「選ばれし刃」を握りしめながら、自分の力とその代償を胸に刻んでいた。
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