魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

文字の大きさ
82 / 200
17章 北の遺跡

しおりを挟む
守護者を打ち倒し、遺跡のさらに奥へと進むアリアとイアン。剣が指し示す光は、遺跡の最深部を目指すかのように輝きを増していた。

「これ、どこまで続いてるんだろうね。」

アリアが歩きながら呟く。遺跡内の通路は徐々に狭くなり、壁の装飾もさらに複雑なものになっている。

「この構造……どうやら単なる遺跡ではないようだな。」

イアンが壁に刻まれた文様を観察しながら言った。

「何か分かるの?」

「魔族の古代文字が書かれている。『集えし刃の眠りし地』……ここは、剣を完成させるための場所だ。」

「やっぱり、そうなんだ……。」

アリアが剣を見つめると、再びその光が強く輝き、通路の先を示した。

通路の先には、巨大な扉が現れた。その扉には魔族の文字がびっしりと刻まれており、中心にはくぼみがあった。

「このくぼみ、剣をはめるためのものみたいだね。」

アリアが剣を取り出しながら言うと、イアンが警戒するように彼女を制した。

「待て。こうした仕掛けは、剣に関する試練を最終的に解放することが多い。何が起こるか分からない。」

「でも、進まないと何も分からないでしょ?」

アリアは軽く微笑み、剣を扉のくぼみに差し込んだ。すると、剣が光を放ち始め、扉全体が震えながらゆっくりと開き始めた。

扉の奥には、広大な空間が広がっていた。天井は高く、中央には剣の形をした台座が鎮座している。その台座の周囲には、魔力を封じ込めるような複雑な結界が展開されていた。

「……ここが、剣の真の眠りし地か。」

イアンが低い声で呟く。

「この台座、剣を置けって言ってるみたいだね。」

アリアが台座に近づこうとしたその時、結界が激しく揺れ、突然目の前に影が現れた。

影の正体は、漆黒の甲冑をまとった騎士だった。その全身からは尋常ではない魔力が放たれている。

「こいつ……!」

イアンが杖を構えると、騎士は剣を引き抜き、無言のままアリアに向かって突進してきた。

「避けて、アリア!」

イアンが叫ぶと同時にアリアは横に飛び、騎士の剣をかわした。その衝撃で台座の周囲が震え、結界の光が揺れる。

「こいつを倒さないと先に進めないってことだね……やるしかない!」

アリアが剣を構え、騎士に向かって突進した。

騎士の剣は重く、鋭い。アリアはその攻撃を避けつつ、隙を狙って反撃を試みる。しかし、相手の動きは素早く、簡単に攻撃を防がれてしまう。

「イアン、何か魔法で動きを止められる?」

「やってみる!」

イアンが冷気の魔法を放ち、騎士の足元を凍らせる。しかし、騎士はその氷を一瞬で砕き、再びアリアに襲いかかる。

「くそ……こいつ、どんな攻撃でも耐えられるのか?」

「いや、違う!剣が……剣が何か言ってる!」

アリアが剣を握りしめると、青白い光が再び放たれた。その光が騎士に当たると、わずかに動きが鈍った。

「この光……この剣の力が効いてる!」

「なら、剣にすべてを託せ!」

イアンが叫び、魔法で騎士の動きを封じる時間を稼ぐ。その隙にアリアは剣を高く掲げ、全力で振り下ろした。

アリアの剣が騎士の体を貫くと、騎士は光となって崩れ落ちた。その光が台座に吸い込まれ、結界が一気に消失した。

「やった……!」

アリアが息を整えながら剣を握り直すと、その剣が再び強い光を放ち始めた。剣から感じる力は、これまでとは比べものにならないほど強大なものだった。

「剣が……目覚めたのか?」

イアンが静かに呟く。

「分からない。でも、この剣がもっと力を貸してくれる気がする。」

アリアは剣を見つめながら、微笑みを浮かべた。

剣の光が部屋の奥を照らし、新たな通路を示していた。その先にはさらなる試練が待っているかもしれない。

「イアン、次に進む準備はいい?」

「いつでもいい。だが、この先はこれまで以上に気を引き締めろ。」

「分かってるよ。頼れる仲間がいるから大丈夫!」

アリアの元気な声に、イアンは小さく笑いながら杖を握り直した。

二人は再び、未知の道へと足を踏み出していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

処理中です...