魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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19章 終焉の谷

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終焉の谷の中心で得た書物の真実と剣の試練が、アリアとイアンに新たな問いを突きつける。その試練は、彼らの絆と覚悟を試すために用意されたものだった。

書物を読み解いた後、アリアは剣を手に再び立ち上がった。その剣が放つ青白い光が、魔法陣の中心から現れた新たな扉を照らしている。

「……まだ終わってないみたいだね。」

アリアが剣を見つめながら呟く。イアンは杖を握りしめながら、扉の向こうを見据えて答えた。

「この先に剣の力が完全に覚醒するための最後の試練が待っているのだろう。だが、それは簡単なものではないはずだ。」

「簡単じゃないのは分かってる。でも、私たちなら絶対に乗り越えられるよ。」

アリアが力強く微笑む。その笑顔にイアンは一瞬だけ視線を揺らしたが、すぐに冷静さを取り戻して頷いた。

「そうだな。君がそう言うなら、信じるしかない。」

扉を抜けた先は、まるで現実とは異なる異空間だった。足元は白い光に覆われ、周囲には何もないかのように見える。ただ、空間全体に漂う重い気配が二人を包み込んでいた。

「ここが……試練の場所?」

「気をつけろ。何が現れるか分からない。」

イアンが警戒を呼びかけたその瞬間、空間の中心に黒い影が現れた。それは先ほど倒した魔物よりもさらに巨大で、人間のような形をしている。

「選ばれし刃の持ち主よ。そして、魔族の血を引く者よ。」

低い声が空間に響き渡る。その声には威厳と冷たさがあり、二人を一瞬で緊張させた。

「お前たちの絆が本物であることを示せ。そうでなければ、この剣の力はその代償と共にお前たちを蝕むだろう。」

「絆……。」

アリアが剣を握りしめる。守護者の目が赤く光り、彼らを見据える。

「この試練では、二人が互いをどれほど信じ合っているかが問われる。覚悟を見せよ。」

その言葉と共に、守護者が動き出した。両腕を広げ、巨大な闇の剣を生成し、二人に向かって振り下ろす。

「アリア、右に避けろ!」

イアンが叫び、冷気の魔法で闇の剣を弾こうとする。しかし、その一撃の重さは尋常ではなく、結界が砕けて衝撃が二人を襲った。

「くっ……なんて強さ……!」

アリアが立ち上がり、剣を掲げて再び前に進む。その剣が光を放ち、守護者に切りかかるが、守護者は片手でそれを防いだ。

「お前たちの力だけでは足りない。互いを信じ、力を一つにしなければ、この試練は乗り越えられぬ。」

守護者の声が再び響く。その言葉に、アリアはイアンを振り返った。

「イアン、私たち……どうすればいいの?」

「恐らく、この剣の力を共有する必要がある。君と俺の力を繋げることで、剣が真の力を発揮するはずだ。」

イアンが冷静に答える。その言葉にアリアは頷き、剣をイアンに向けた。

「なら、やってみよう。私は君を信じてるから!」

アリアが剣を振りかざし、イアンが杖を掲げて魔力を放出すると、二人の間に青白い光の帯が生まれた。その光が剣に集まり、剣がこれまで以上に強く輝き始める。

「この力は……!」

アリアは剣を握り直し、その力を守護者に向けて解き放った。光の波動が空間全体を包み込み、守護者の体を一気に貫いた。

「見事だ……。」

守護者は小さく呟き、やがて闇に溶けるように消え去った。

試練が終わると同時に、空間全体が穏やかな光に包まれた。剣が完全に覚醒し、その輝きがアリアの手の中で静かに息づいている。

「これで……剣が完全に覚醒したんだね。」

アリアが剣を見つめながら呟く。イアンは杖を下ろし、少しだけ微笑んだ。

「そうだ。君が剣を信じ、自分を信じた結果だ。」

その言葉に、アリアはイアンを見つめた。そして、意を決したように口を開く。

「でも、私が信じてるのは……剣だけじゃない。君も、私にとってかけがえのない存在だから。」

その言葉に、イアンは一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに視線をそらした。
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