魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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23章 古代遺跡

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黒幕が放った霧の魔物が周囲を埋め尽くす中、アリアとイアンは最後の力を振り絞って戦っていた。黒幕の計画は最終段階に入り、魔法陣は不気味な輝きを増している。剣を完全に覚醒させるか、それとも命を守るか――二人は選択を迫られる。

アリアは剣を構え、目の前の霧の魔物を切り裂いていく。しかし、そのたびに新たな魔物が湧き上がり、終わりが見えない。

「どこまで続くの……!?」

息を切らしながら叫ぶアリアに、イアンが後方から声をかけた。

「アリア、剣の光をさらに高めろ。奴らの核を一気に断つんだ!」

「分かった!」

アリアが剣を掲げると、剣が青白い光をさらに強く放ち、周囲の霧を一瞬で払いのけた。その光景に黒幕が冷笑を浮かべる。

「素晴らしい……!その力こそ、私が求めていたものだ!」

黒幕が手をかざし、魔法陣の輝きがさらに増す。アリアとイアンは体ごと押し返されるような圧倒的な魔力を感じた。

「お前は何者なんだ……!?」

イアンが杖を握りしめ、黒幕に問いかける。その問いに、黒幕は静かに答えた。

「私は魔族でも人間でもない。この世界が生み出した混沌そのものだ。」

アリアが驚きの声を上げる。

「混沌……?どういうこと?」

「人間と魔族の争いが生んだ憎しみの集合体。それが私だ。この剣は、その憎しみを浄化する力を持つ。それゆえに私はこの剣を求めるのだ。力を完全に解放し、世界を一つにするために。」

「そんなこと……許さない!」

アリアが剣を構え直し、黒幕に向かって突き進む。しかし、黒幕が放った魔力の衝撃波に阻まれ、剣を振り下ろすことができない。

その時、アリアの剣が再び強く光を放ち始めた。剣が震え、彼女の手に青白い熱を伝える。

「剣が……!」

イアンが剣を見つめながら冷静に状況を分析する。

「剣が完全に覚醒しようとしている……でも、アリア、気をつけろ!その代償は……!」

「分かってる。でも、私がやらなきゃ!」

アリアが剣を掲げると、剣が放つ光が黒幕の魔法陣に干渉し始めた。その瞬間、黒幕が驚きの表情を浮かべる。

「やめろ……その剣を覚醒させるな!」

黒幕が魔物たちをアリアに向けて送り込むが、イアンがその動きを封じた。

「俺が止める!アリア、全力で剣の力を解放しろ!」

アリアは剣を握りしめ、心の中で自分に問いかけた。

(私は、この剣を完全に覚醒させるべき?でも、その代償に……私自身がどうなっても……。)

その時、イアンの声が響いた。

「アリア、君が選ぶ道を俺は支える!だから、怖がるな!」

その言葉に、アリアの心が決まった。

「分かった!私にできることを全てやる!」

アリアが剣を振り下ろすと、その光が一瞬で魔法陣を覆い尽くした。黒幕が叫び声を上げ、結界が崩れ始める。

黒幕が最後の抵抗を試みる中、アリアは全身全霊を込めて剣を構えた。

「これで……終わりだ!」

アリアが剣を振り下ろすと、その刃が黒幕の中心を貫いた。黒幕は激しい叫び声を上げながら崩れ落ち、霧となって消え去っていった。

静寂が訪れ、剣の光も徐々に収まっていく。

勝利の余韻に浸る間もなく、アリアが膝をついた。剣を握る手には痛みが走り、体から力が抜けていく。

「アリア……!」

イアンが駆け寄り、彼女を支える。

「大丈夫……?!」

アリアは息を切らしながら微笑んだ。

「うん……勝ったよね?」

イアンは深く頷いた。

「そうだ。君が全てを終わらせたんだ。」

アリアは剣を見つめながら、静かに呟いた。

「でも、この剣が……少しずつ私の体を蝕んでる感じがする。」

「そんなこと、させるもんか。俺が君を守る。絶対に。」

イアンの言葉に、アリアは安心したように目を閉じた。
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