魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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26章 貴族の思惑と揺れる王都

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廃城の深部に進むアリア、イアン、ルイスの三人。古びた石壁にはひびが走り、かつての栄光の面影はどこにもない。奥へ進むにつれて、不穏な空気が次第に濃くなっていった。

「……何かがおかしい。」

イアンが立ち止まり、杖を握りしめた。その目は鋭く、周囲の魔力の動きを読み取ろうとしている。

「魔力の流れが不自然だ。罠か、あるいは何かが待ち構えている。」

「そりゃ楽しみだな。」

ルイスは余裕のある笑みを浮かべながらレイピアを構えた。アリアはそんな二人を見渡しながら、自分の片手剣を握り直す。

「待ち構えてるなら、叩くだけでしょ?何が来ても大丈夫、みんながいるから。」

その言葉にイアンは一瞬だけ目を伏せた。彼女の無邪気な信頼に応えるには、まだ自分の力が足りない気がしていたからだ。

突然、廃城の広間が激しく揺れ、天井から砂が落ちてきた。三人が周囲を警戒する中、中央に巨大な魔物が出現した。それは石でできたゴーレムのような姿をしており、全身に奇妙な紋様が刻まれている。

「また呪具の仕業か……!」

イアンが魔物の背後にある魔法陣を指差した。

「このゴーレムは魔力の供給で動いている。魔法攻撃が効くかどうかは分からないが、急所は背中の魔法陣だ!」

「じゃあ、そこを狙えばいいんだね!」

アリアが盾を構えて突進しようとした瞬間、ゴーレムが腕を振り下ろし、巨大な衝撃波を放った。アリアはなんとか回避するが、その衝撃波は広範囲に広がり、イアンも足元を崩されてしまう。

「くっ……これはまずいな。」

「僕が壁になる。」

ルイスが障壁を展開し、次の衝撃波を防いだ。しかし、その隙にゴーレムが新たな攻撃態勢に入る。

「ルイス、障壁を少し下げてくれ。」

イアンが静かに言った。その声に、ルイスは一瞬だけ眉をひそめた。

「何をするつもりだ?」

「時間を稼ぐ。このゴーレムには魔法が通るかもしれない。」

イアンは杖を握りしめ、集中した。杖の先に青白い光が集まり始めたが、それはいつもの氷魔法ではなかった。彼が次に口にした言葉は、アリアにもルイスにも聞き覚えのないものだった。

「燃え上がれ、炎の刃!」

杖から放たれた炎の魔法がゴーレムの片腕を包み込み、石を焼き焦がした。ゴーレムの動きが一瞬鈍る。

「イアン!?今の……!」

アリアが驚いた声を上げる。ルイスも目を見張りながら口元に微笑を浮かべた。

「へぇ、炎の魔法か。君にそんな力があったとはな。」

イアンは額に汗を浮かべながら、次の呪文を唱える。

「まだ終わりじゃない……アリア、急所を狙え!」

イアンが放つ炎の魔法がゴーレムの攻撃を止める間に、アリアは一直線に駆け出した。その盾でゴーレムの攻撃を弾きながら、背後に回り込む。

「ここが急所なら――!」

片手剣を高く振り上げ、一気に魔法陣へと突き立てた。その瞬間、ゴーレムは大きく揺れ、崩れ落ちるように地面に倒れ込んだ。

「やった……!」

アリアが剣を引き抜き、振り返ると、イアンが杖を支えにして息を整えていた。

「イアン、大丈夫?」

「問題ない。ただ、まだまだ慣れないな……。」

その言葉に、アリアは少しだけ微笑んだ。

「でも、すごかったよ。イアンが炎の魔法を使えるなんて知らなかった。」

「ユーゴさんに教えてもらっただけだ。まだ基礎の段階だが、君を守るためなら、何だって試すさ。」

その言葉に、アリアは少し顔を赤らめたが、何も言わなかった。

「確かに見事な炎だった。だが、それを使えるならもっと早く教えてくれても良かったのでは?」

ルイスが冗談めかして言うと、イアンは冷静な表情を保ちながら答えた。

「必要な時に使えば十分だ。それが今だったというだけのことだ。」

その静かな決意に、ルイスは微かに笑いながら肩をすくめた。

「ふむ、ますます興味深い。アリアを守るために自分を高める姿勢、その執念は悪くない。」

「……君に言われる筋合いはない。」

イアンの冷たい返答に、ルイスは一瞬驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。
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