魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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28章 旧バルグレン領の地下遺跡

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遺跡の広間に踏み込んだ瞬間、アリアたちは異様な空気を感じ取った。中央に描かれた魔法陣が薄く光を放ち、その周囲には古びた器具が無造作に置かれている。壁には魔族の紋様が刻まれ、ここがただの遺跡でないことを物語っていた。

「……ここが奴の狙いだった場所か。」
ルイスが目を細めて言った。

「すごい魔力……封印の場、って感じだね。」
アリアが剣に手を置きながら周囲を見回す。

イアンは杖を握り、魔法陣を調べ始める。
「魔族の技術だ。封印術が使われているが、これを解放することで何かを呼び起こそうとしているようだ。」

「呼び起こすって……それ、本当にまずいやつじゃない?」
アリアが少し不安そうに言う。

ルイスが冷静な口調で補足した。
「おそらく奴は、この遺跡の封印された力を利用しようとしている。魔族の技術を使えば、それが可能だと踏んでいるんだろう。」

アリアが盾を握りしめ、険しい表情を浮かべたその時だった。広間の奥から、ゆっくりとした足音が響いた。

「待っていたぞ。」
暗闇から現れたのは黒いローブを纏った男――バルグレン侯爵だった。アリアたちの視線を受け、男は悠然とフードを下ろした。

「ようこそ、私の領地へ。君たちがここまでたどり着いたことを評価してやろう。」

「バルグレン侯爵。」
ルイスがその名を口にすると、侯爵は薄く笑った。

「ほう、私の素性に気づいているとは。さすがはテミス家の三男。君の家の情報網には感服するよ。」

「情報網がどうのではない。」
ルイスが一歩前に出る。

「お前のような反乱貴族が生き延びている事実が、この国の恥だ。それだけだ。」

侯爵は軽く肩をすくめて答えた。
「恥、か。なるほど。それは君たち貴族の自己満足だろう。しかし、この地で封じられた力を手に入れれば、私の地位は復権される。そして、この腐った国を再び正しい形に導くのだ。」

「力を振りかざすことが正しい形だと思っているなら、それこそ勘違いだ。」
イアンが静かに呟いた。

「勘違いかどうか、今に分かる。だが、その前に君たちにはここで消えてもらおう。」

侯爵が手を挙げると、魔法陣が眩い光を放ち始めた。その光から姿を現したのは、巨大で異形の魔物だった。体には魔族の紋様が刻まれ、怨嗟のような唸り声を上げている。

「くそ、やっぱり出るんだよね、こういうの!」
アリアが剣を抜きながら叫ぶ。

「奴は後で必ず倒す。まずは目の前の敵を片付けるぞ!」
ルイスが鋭い声で指示を飛ばした。

魔物が巨大な腕を振り下ろす。アリアは盾を構え、その攻撃を真正面から受け止めた。衝撃で膝が震えるが、耐えられないほどではない。

「まだまだだよ!」
アリアが盾で攻撃を弾き返しながら剣で反撃を仕掛ける。その間にイアンが杖を振り、魔物の足元に土魔法を放った。

「動きが封じられる……今だ!」
ルイスが魔物の脇をすり抜け、レイピアで鋭い一突きを放つ。その攻撃は魔物の関節部分に正確に突き刺さり、魔力の流れを寸断した。

「もう一息!」
アリアが叫びながら剣を深々と突き立てると、魔物は低い唸り声を上げて崩れ落ちた。

戦闘が終わると、ルイスは即座に侯爵へ向き直った。侯爵は眉一つ動かさずに彼を見返す。

「さすがだな、テミス家の剣士よ。だが、お前一人で私を倒せると思うなよ。」

「倒せるさ。貴族である前に、この国の敵だからな。」
ルイスが冷静な声で答える。

侯爵は魔力で剣を作り出し、構えを取った。ルイスもレイピアを構え、二人の間に一瞬の静寂が訪れる。

次の瞬間、剣と剣が激しくぶつかり合った。
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