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30章 地下迷宮
⑦
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アリアが肩に盾を担ぎ、重い足取りで前を歩いていた。
「……なんだか、また変なことに巻き込まれそうだね。」
彼女の声には、苦笑交じりの疲れが滲んでいる。後ろから歩いていたイアンが軽く息を吐いた。
「変なこと、か。確かにそうだな。けど……お前が無事でよかった。」
その言葉に、アリアは足を止めて振り返る。彼の黒髪は遺跡の薄暗い光に照らされて鈍く輝いていた。
「……そんなに心配してくれてたの?」
「当然だろう。お前がいない戦いなんて……」
言いかけたイアンは、一瞬言葉を飲み込む。アリアは軽く首を傾げたが、特に気にせず笑顔を浮かべる。
「私だって、イアンがいないと困るんだから。ちゃんと守ってよね!」
その無邪気な返答に、イアンはふっと微笑みを返した。
少し後ろを歩いていたルイスが、二人のやり取りを見て静かに笑った。
「お前たち、随分と仲がいいな。」
アリアが振り返り、困惑した表情を浮かべる。
「え? 別に普通だよ?」
「……そうか?」
ルイスの言葉にはどこか含みがあったが、それ以上追及することなく前を向く。そして、彼はふと呟いた。
「だが……今回の戦いで分かったことがある。」
「分かったこと?」
「ヴァリオスの狙いだ。彼が『選ばれし刃』に執着している理由。それが、魔王復活のための鍵だとしたら――」
ルイスの声が途切れる。その背中越しに、アリアとイアンはお互いを見つめ合った。
「まだ終わってない、ってことだよね。」
アリアが言葉を続けると、ルイスは短く頷いた。
数日後、ローデンのギルドに戻った三人を、ユーゴが静かに迎えた。その顔にはいつになく険しい表情が浮かんでいる。
「戻ったか……無事で何よりだ。だが、その表情を見る限り、良い結果ではなかったようだな。」
イアンが一歩前に出て、簡潔に報告を始める。
「ヴァリオスという名の魔族と接触しました。彼は、魔王復活を目論んでいるようです。」
その言葉に、ユーゴは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに鋭い視線を返す。
「魔王復活、か……それが奴の最終目標だとすると、これからの行動は明白だ。おそらく、さらに多くの魔族が動き出すだろう。」
ルイスが腕を組みながら、冷静に付け加える。
「指輪に記された情報も解析する必要があるな。ヴァリオスがここまで執着するのなら、そこには奴の計画の核心があるはずだ。」
その日の夜。ギルドの庭に立っていたアリアは、空を見上げながら一人佇んでいた。遺跡での戦いが脳裏をよぎる。
(イアンがあんなに怒るなんて、珍しかったな……。)
彼女はそっと胸に手を当てる。戦いの最中、彼が見せた激しい感情。それが彼女の心に何かを残していた。
「……何を考えてる?」
背後から声が聞こえ、振り返ると、イアンが立っていた。黒髪が夜風になびき、その瞳がまっすぐ彼女を見つめている。
「別に……ただ、今日のことを振り返ってただけ。」
アリアが苦笑いすると、イアンは少し近づき、彼女の横に立った。
「お前が無茶をするたびに、俺は心臓が止まりそうになる。」
「そ、そんなに?」
アリアが焦ったように返すと、イアンは微かに笑った。そして、ぽつりと呟く。
「……俺にとって、お前がどれだけ大事か、分からないだろうな。」
その一言に、アリアは驚いてイアンを見上げる。だが、彼はそれ以上言葉を続けず、そっと夜空を見上げた。
「……守るべきものがあるって、大変だな。」
「うん……でも、ありがと。イアンがいるから私も頑張れる。」
二人の間に、静かな夜風が吹き抜けた。
「……なんだか、また変なことに巻き込まれそうだね。」
彼女の声には、苦笑交じりの疲れが滲んでいる。後ろから歩いていたイアンが軽く息を吐いた。
「変なこと、か。確かにそうだな。けど……お前が無事でよかった。」
その言葉に、アリアは足を止めて振り返る。彼の黒髪は遺跡の薄暗い光に照らされて鈍く輝いていた。
「……そんなに心配してくれてたの?」
「当然だろう。お前がいない戦いなんて……」
言いかけたイアンは、一瞬言葉を飲み込む。アリアは軽く首を傾げたが、特に気にせず笑顔を浮かべる。
「私だって、イアンがいないと困るんだから。ちゃんと守ってよね!」
その無邪気な返答に、イアンはふっと微笑みを返した。
少し後ろを歩いていたルイスが、二人のやり取りを見て静かに笑った。
「お前たち、随分と仲がいいな。」
アリアが振り返り、困惑した表情を浮かべる。
「え? 別に普通だよ?」
「……そうか?」
ルイスの言葉にはどこか含みがあったが、それ以上追及することなく前を向く。そして、彼はふと呟いた。
「だが……今回の戦いで分かったことがある。」
「分かったこと?」
「ヴァリオスの狙いだ。彼が『選ばれし刃』に執着している理由。それが、魔王復活のための鍵だとしたら――」
ルイスの声が途切れる。その背中越しに、アリアとイアンはお互いを見つめ合った。
「まだ終わってない、ってことだよね。」
アリアが言葉を続けると、ルイスは短く頷いた。
数日後、ローデンのギルドに戻った三人を、ユーゴが静かに迎えた。その顔にはいつになく険しい表情が浮かんでいる。
「戻ったか……無事で何よりだ。だが、その表情を見る限り、良い結果ではなかったようだな。」
イアンが一歩前に出て、簡潔に報告を始める。
「ヴァリオスという名の魔族と接触しました。彼は、魔王復活を目論んでいるようです。」
その言葉に、ユーゴは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに鋭い視線を返す。
「魔王復活、か……それが奴の最終目標だとすると、これからの行動は明白だ。おそらく、さらに多くの魔族が動き出すだろう。」
ルイスが腕を組みながら、冷静に付け加える。
「指輪に記された情報も解析する必要があるな。ヴァリオスがここまで執着するのなら、そこには奴の計画の核心があるはずだ。」
その日の夜。ギルドの庭に立っていたアリアは、空を見上げながら一人佇んでいた。遺跡での戦いが脳裏をよぎる。
(イアンがあんなに怒るなんて、珍しかったな……。)
彼女はそっと胸に手を当てる。戦いの最中、彼が見せた激しい感情。それが彼女の心に何かを残していた。
「……何を考えてる?」
背後から声が聞こえ、振り返ると、イアンが立っていた。黒髪が夜風になびき、その瞳がまっすぐ彼女を見つめている。
「別に……ただ、今日のことを振り返ってただけ。」
アリアが苦笑いすると、イアンは少し近づき、彼女の横に立った。
「お前が無茶をするたびに、俺は心臓が止まりそうになる。」
「そ、そんなに?」
アリアが焦ったように返すと、イアンは微かに笑った。そして、ぽつりと呟く。
「……俺にとって、お前がどれだけ大事か、分からないだろうな。」
その一言に、アリアは驚いてイアンを見上げる。だが、彼はそれ以上言葉を続けず、そっと夜空を見上げた。
「……守るべきものがあるって、大変だな。」
「うん……でも、ありがと。イアンがいるから私も頑張れる。」
二人の間に、静かな夜風が吹き抜けた。
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