魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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34章 アトラス廃城下の迷宮

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アトラス廃城下の迷宮から戻ったアリアたちは、手に入れた水晶と新たな情報をユーゴに届けるべく、ギルドへ急いだ。ローデンの街は穏やかな午後を迎え、活気ある市場の賑わいが三人の耳に届く。

「この街に戻ってくると、ほっとするね。」

アリアがギルドの建物を見上げながら呟いた。彼女の顔には疲労の影が少し残っているが、安堵の色が浮かんでいた。

「だな。ここなら少なくとも変な陰謀に巻き込まれる心配は少ない。」

ルイスが軽く笑いながら返すと、イアンが冷静に付け加えた。

「そう思うのは早計だ。俺たちの動きは必ずヴァリオスに感知されている。油断はできない。」

「そうだね。でも、とりあえずは一息つこうよ。ルイスだって、肩の力抜きなよ。」

アリアが明るく笑いながら二人を促し、三人はギルドの扉を開けた。


ギルドの奥にあるユーゴの執務室では、彼が大きな机の上に山積みになった資料と向き合っていた。彼が目を上げ、アリアたちに気付くと、小さく笑みを浮かべた。

「お帰り、アリア、イアン、ルイス。成果があったようだな?」

「はい、これを……。」

アリアが水晶を手渡すと、ユーゴは慎重にそれを受け取り、魔法陣が描かれた台座の上に置いた。水晶が淡い光を放ち、室内に地図が浮かび上がる。

「ほう……なるほどな。」

ユーゴが呟きながら地図を観察する。その目は鋭く、彼の頭の中でいくつもの情報が繋がっていくのが分かる。

「次の目的地は……アーカナ遺跡か。この場所は、古代文明が築いた最も強力な魔力の源と言われている。」

「また魔力の源……。ヴァリオスってやつ、本当に魔王復活を狙ってるの?」

アリアが半ば呆れながら尋ねると、ユーゴは頷いた。

「その可能性が非常に高い。これ以上、奴が動く前に先回りしなければならない。」

「そのアーカナ遺跡ってどんな場所なんですか?」

イアンが冷静に問いかける。ユーゴはしばし地図を見つめ、思案した後、静かに答えた。

「深い森に囲まれた場所だ。遺跡そのものは広大で、かつて強大な魔法結界が張られていたという記録がある。だが、近年ではその結界も弱まり、魔物が巣食う危険な地となっている。」

「なるほど……。また厄介な場所ってことだね。」

アリアが肩をすくめると、ルイスが短く笑った。

「厄介な場所でないと、俺たちの出番はないだろう?」

「……そうかもね。」

アリアはルイスの軽口に笑い返したが、その表情には少し緊張の色が見えた。

その後、ユーゴが遺跡への道程や必要な準備を話し終えると、三人はギルドの食堂に移動した。そこでは、ギルドの仲間たちが戻った三人を迎え、次々と声をかけてくる。

「お帰り! アリア、イアン、ルイス! 今度はどこ行ってきたんだ?」

「迷宮だよ。あんたたちなら絶対泣いて逃げ出すような場所!」

アリアが冗談めかして言うと、仲間たちが笑い声を上げた。

「ルイスもまだローデンにいるのか? 王都での仕事があるんじゃないのか?」

その問いに、ルイスは余裕の笑みを浮かべて答えた。

「王都の仕事は暇つぶしみたいなもんさ。今はこっちのほうが面白い。」

「へえ、まあお前さんがいると、うちのギルドの格が上がるよ!」

仲間たちの賑やかなやり取りを横目に、イアンは少し離れた席で静かにアリアを見守っていた。

「イアン、どうしたの?」

アリアが気付き、小走りで彼の隣に座る。イアンは少しだけ目を伏せ、低い声で言った。

「お前が楽しそうで何よりだ。」

「何それ……なんか変な感じ。まあ、楽しいのは確かだよ! でも、あんたももっと楽しんでいいんだよ?」

その言葉に、イアンはわずかに微笑んだ。

「……お前がそう言うなら、少しは考えてみる。」

そのやり取りを見ていたギルドの仲間たちが、また何かを囁き合い、笑い声が広がった。
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