魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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35章 アーカナ遺跡

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遺跡の扉をくぐった瞬間、冷たい空気が三人を包み込んだ。内部は薄暗く、かすかな光が天井の隙間から差し込むだけだった。壁には古代の魔法文字が刻まれており、遠い昔にこの地で何かが行われていたことを物語っている。

「……思ったより寒いね。」

アリアが肩をすくめながら周囲を見渡す。剣を抜いた彼女の表情は、外とは打って変わって真剣そのものだった。

「冷気は魔法の残滓だろうな。長い時間が経っているのに、これだけ強力な気配が残っているとは……。」

イアンが低く呟き、杖を握り直す。

「妙な仕掛けがあるのは間違いなさそうだ。慎重に進もう。」

ルイスも剣を片手に警戒を怠らない。三人は隊列を組み、暗い通路をゆっくりと進んでいった。


遺跡に足を踏み入れてしばらくすると、道の先に光る魔法陣が見えてきた。複雑に組み合わされた魔法文字が青白く輝き、圧迫感のある存在感を放っている。

「これは……何の魔法陣?」

アリアが目を凝らして尋ねると、イアンが慎重に近づいて解析を始めた。

「攻撃型と防御型の複合魔法陣だ。範囲内に入れば即座に発動する仕掛けになっている。」

「どうする? 壊せばいいのか?」

ルイスが剣を構えたが、イアンは首を横に振る。

「壊すのは最終手段だ。このタイプの魔法陣は壊そうとするとさらに複雑な罠を発動させることが多い。無効化する方法を探すしかない。」

イアンは魔法陣の周囲を慎重に歩きながら、文字の流れを見つめた。

「アリア、近くの壁を調べてくれ。この魔法陣を制御している鍵があるはずだ。」

「分かった!」

アリアが壁際に走り、文字を丹念に見つめる。その間、ルイスは剣を抜き、背後から迫る魔物に目を光らせていた。


「これかも!」

アリアが指差したのは、壁に埋め込まれた小さな水晶だった。それは淡い光を放ち、魔法陣と同じ波動を感じさせた。

「間違いない。その水晶が魔法陣の制御装置だ。」

イアンが近づき、水晶に触れようとするが、その瞬間、魔法陣が反応して眩しい光を放った。

「くっ……! 防御を!」

イアンが咄嗟に土壁を作り出し、魔法陣の攻撃を防ぐ。その一方で、ルイスが剣を振り、迫りくる魔法の波動を跳ね返した。

「なかなかしつこいな……!」

ルイスが低く唸る中、アリアが剣を振り上げ、水晶を叩き割った。次の瞬間、魔法陣が消え去り、辺りに静寂が戻る。

「よし……成功だね。」

アリアが息をつき、剣を収める。イアンも杖を下ろしながら、軽く頷いた。

「見事だ。これで先へ進める。」

「ふう……まだ第一層だろ? 先が思いやられるな。」

ルイスが肩をすくめて言うと、アリアが苦笑しながら答えた。

「でも、私たちならきっと大丈夫だよ。」

その言葉に、イアンも静かに微笑みを浮かべた。

「そうだな。ここまで来られたんだ。次も乗り越えられる。」

三人は第一層を突破し、次の階層へと進んでいった。暗い通路を進む彼らの背中に、どこか不穏な気配がまとわりついていた。
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