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カティア回想録
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私は物心がついた頃から、後宮の片隅で静かに暮らしていました。
鉱石宮の部屋付き王女――名ばかりの立場。
母はおらず、身寄りもなく、日々は下働きの方々の善意に支えられていました。
それでも、私は後宮の中で暮らせているだけで幸運だったのです。
そんな私が幼い心で、初めて強く胸をときめかせたお方がいます。
――第六王子 ユーリ殿下。
高貴なサファイア宮のご出身。
遠くからお姿をお見かけするたび、私はただ息を呑み、見惚れてしまっていました。
艶やかな金色の髪は光を受けて柔らかく輝き、まるで陽だまりのよう。
透き通るような碧い瞳は宝石のサファイアそのもの――。
けれど、その美しさに決して驕りはなく、むしろ甘く優しい微笑みを浮かべられておられた。
(……なんて、素敵なお方)
殿下が歩かれるたびに、周囲の空気すら柔らかくなるように感じました。
凛としていながらも冷たさなど微塵もなく――
まるで優しく包み込む春風のような、甘く穏やかな雰囲気を纏われているのです。
後宮に入ることのできる男性は、王様と、そしてこのユーリ殿下だけ。
殿下は王に代わり、上位妃・中位妃の姫君たちの縁談を取りまとめる役目を担われていました。
縁談の決まった姫君たちが殿下の前で最後の挨拶を受けるたび――
(こんな風に優しく微笑まれて、お言葉をいただいて……)
姫君たちの頬が紅潮しているのも当然だと思いました。
あんなふうに見つめられ、声を掛けられたら――
きっと誰だって、心が浮き立ってしまうに違いありません。
(あの方に、いつか私も……)
身分など、到底釣り合わぬことは理解していました。
それでも、憧れる気持ちは消せませんでした。
せめて、ほんの少しでも目に留まっていただけるように。
私は仕草を磨き、話し方を学び、古びた書物で知識を蓄えました。
数字も歴史も、どんなに難しくても不思議と覚えられたのは――
すべて、あの方に気づいてもらいたかったから。
誰にも言えない小さな夢。
けれど私にとっては、とても大きな祈りのような夢でした。
(――いつか、あの優しいサファイアの瞳が、私を見つけてくれますように)
ただ、それだけを願って――
私は、後宮の隅で今日も静かに背筋を伸ばし続けていました。
鉱石宮の部屋付き王女――名ばかりの立場。
母はおらず、身寄りもなく、日々は下働きの方々の善意に支えられていました。
それでも、私は後宮の中で暮らせているだけで幸運だったのです。
そんな私が幼い心で、初めて強く胸をときめかせたお方がいます。
――第六王子 ユーリ殿下。
高貴なサファイア宮のご出身。
遠くからお姿をお見かけするたび、私はただ息を呑み、見惚れてしまっていました。
艶やかな金色の髪は光を受けて柔らかく輝き、まるで陽だまりのよう。
透き通るような碧い瞳は宝石のサファイアそのもの――。
けれど、その美しさに決して驕りはなく、むしろ甘く優しい微笑みを浮かべられておられた。
(……なんて、素敵なお方)
殿下が歩かれるたびに、周囲の空気すら柔らかくなるように感じました。
凛としていながらも冷たさなど微塵もなく――
まるで優しく包み込む春風のような、甘く穏やかな雰囲気を纏われているのです。
後宮に入ることのできる男性は、王様と、そしてこのユーリ殿下だけ。
殿下は王に代わり、上位妃・中位妃の姫君たちの縁談を取りまとめる役目を担われていました。
縁談の決まった姫君たちが殿下の前で最後の挨拶を受けるたび――
(こんな風に優しく微笑まれて、お言葉をいただいて……)
姫君たちの頬が紅潮しているのも当然だと思いました。
あんなふうに見つめられ、声を掛けられたら――
きっと誰だって、心が浮き立ってしまうに違いありません。
(あの方に、いつか私も……)
身分など、到底釣り合わぬことは理解していました。
それでも、憧れる気持ちは消せませんでした。
せめて、ほんの少しでも目に留まっていただけるように。
私は仕草を磨き、話し方を学び、古びた書物で知識を蓄えました。
数字も歴史も、どんなに難しくても不思議と覚えられたのは――
すべて、あの方に気づいてもらいたかったから。
誰にも言えない小さな夢。
けれど私にとっては、とても大きな祈りのような夢でした。
(――いつか、あの優しいサファイアの瞳が、私を見つけてくれますように)
ただ、それだけを願って――
私は、後宮の隅で今日も静かに背筋を伸ばし続けていました。
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